広島大学 大学院先进理工系科学研究科
教授 畠中 憲之
TEL: 082-424-6547
E-mail: noriyuki*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)
本研究成果のポイント
- 量子の世界※1での酔っ払い(量子ランダムウォーク)のウォーキング?メカニズムを不可思议な量子力学※2原理(波动?粒子二重性)を基に世界で初めて解明することに成功しました。
- 解明したウォーキング?メカニズムを用いて、量子の世界での酔っ払いの歩行(酔歩)を自由自在に操る方法を発明しました。
- これは、量子コンピュータ※3や量子ニューラルネットワーク※4などの次世代の革新的量子情报処理技术の核心的基盘要素技术を提供します。
概要
広岛大学の片山春菜大学院生?畠中宪之教授と旭川医科大学の藤井敏之助教の共同研究チームは、革新的量子情报処理技术の基盘要素技术を担う量子ランダムウォークのウォーキング?メカニズムを世界で初めて解明することに成功しました。また、それを用いて量子ランダムウォークを自由自在に操る方法を発见しました。
ランダムウォークは、ランダム系の确率过程※5のモデルの一つで、例えば、コイントスを行い表が出たら右に里が出たら左に1歩移动させ、酔っ払いの歩行(酔歩)を模倣できます。量子力学が支配するミクロな世界では、酔っ払い(ウォーカー)は波のように振舞い、波の特徴である干渉効果※6(波の强めあい)により、これまでとは全く异なる様相を示すようになります。しかし、波となったウォーカーのウォーキング?メカニズムは不明でした。
今回、コインの表と裏がでる確率が時間的に変化する場合を考察することにより、波の速度がコインの周期的変化に依存することを見出しました。これにより、コインと干渉の関係(ウォーキング?メカニズム)を世界で初めて明らかにしました。さらに、コインを制御することによって、量子ランダムウォークがランダムな性質を保持しつつ自由自在に制御可能であることを明らかにしました。これは、量子コンピュータや量子ニューラルネットワークなどの次世代の革新的量子情报処理技术の核心的基盘要素技术を提供します。
本研究の成果は、英国科学誌Scientific Reports(Nature Publishing)に掲載されました。

図: 本研究では、量子性の両側面である波動性と粒子性を使って、時間依存コインを持つ量子ランダムウォークのウォーキング?メカニズムを解明しました。波動性からは、波動方程式を立てることによって、コインが量子波の速度を制御していることを発見しました。粒子性からは、粒子の力学特性に着目することで、コインが粒子の速度を制御していることを発見しました。結果として、波動性?粒子性の両側面から、コインが量子ランダムウォークの軌道を制御しているというウォーキング?メカニズムを解明しました。
用语解説
(※1) 量子の世界
量子力学が支配する世界。量子とは、原子や电子などとても小さな物质やエネルギーの粒のようなもののことです。量子の世界は、ナノサイズのとても小さな世界です。
(※2) 量子力学
量子力学は、量子の世界のミクロな物理现象を记述する力学です。量子の世界では、私たちの身の回りの物理现象が従う物理法则(古典力学)は适応することができず、量子力学の法则に従います。そこでは、波の性质と粒子の性质を併せ持つという「波动?粒子二重性」や、同时に复数の状态を取る「状态の重ね合わせ」(忍者の分身の术)という不思议な现象が可能になります。
(※3) 量子コンピュータ
量子力学を利用した计算机を量子コンピュータと言います。従来のコンピュータでは、回路の电圧を制御して、电圧が低い时は「0」、高い时は「1」のように、0と1を作り出し、それらを使って计算を行なっています。それに対して、量子コンピュータは、量子の特徴である「状态の重ね合わせ」を利用して、「0」「1」の重ね合わせ状态を作ります。これにより、同时に何通りもの计算(超并列计算)を実现し、宇宙の年齢ほどかかる计算をあっという间に计算することが可能になります。
(※4) 量子ニューラルネットワーク
近年、さまざまなネットワークが复雑化?大规模化し、これらの最适化?効率化が重要な课题となっています。そこで、生物の神経系を模倣した人工ニューラルネットワークが诞生しました。それに量子力学を取り入れ、さらなる跃进が期待される量子ニューラルネットワークが最近注目されています。
(※5) 確率過程
确率过程は、ランダム性を含むシステムが时间変动する様子を分析するために使用される数理モデルです。
(※6) 干渉効果
复数の波が重なり合うことによって、新しい波の形ができることです。波の重なり方によって、强めあったり、打ち消しあったりします。