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【研究成果】らせん磁気构造中にソリトンを形成するパターンを无限个用意することに成功~无限容量磁気メモリの作製原理を発见~

九州工業大学、広島大学、大阪府立大学、福岡大学、岡山大学、放送大学の研究グループ(研究代表者: 九州工業大学大学院工学研究院 教授 美藤正樹)は、電子の自転(スピン)が、らせん軌道を描く磁気構造の中に、ソリトン(※1)を生成するパターンを无限个用意することに成功しました。これにより、笔颁や鲍厂叠メモリ等に多く用いられる磁気メモリの飞跃的発展が期待されます。

本研究成果のポイント

  • らせん磁性体を用いて有限磁场中に无限个の磁気状态をつくり込む原理を発见
  • 磁场変化の方向を切り替える磁场値の决め方によって磁気的固有状态を无限个用意できる
  • この现象は无限容量磁気メモリの作製に利用可能で、高性能小型メモリへの応用が期待される

このたび、颁谤狈产3S6の単结晶试料を薄くし、厚みの相対的な分布を従来の试料より大きくすることで、スピンが360°回転する构造(キラルソリトン(※2)と呼ぶ)の数をある磁场域で一定化させるだけでなく、ソリトン构造を生成するパターン数を无限个用意することに成功しました。この成果は、らせん磁気构造(※3)の中に、无限个の磁気定常状态をつくり出すことができることを示すものであり、无限容量磁気メモリの作製原理を明らかにしました。このように、本来、生成?消灭が离散的になる特徴を有する「キラルソリトン」の个数を无限パターン用意することができることを実験的に明らかにしたことにより、无限容量の磁気メモリの応用研究への道筋がつきました。

らせん磁気构造中に生成されるキラルソリトン

ゼロ磁场のらせん磁性状态と强磁场の强制强磁性状态に出现する状态で、キラルソリトン数によってキラルソリトン格子の状态変化を记述できる。

本研究は、最新の高度集积技术を用いてメモリのビット数を増やす方法とは异なり、结晶のキラリティ(※4)を利用したアプローチであり、磁场方向を切り替える磁场を微调整させビット数を増やすものです。今后は、极薄试料の作製に加え、意図的に厚みにランダムネスを导入する工程を确立できれば、高度情报社会を支える次世代磁気メモリの容量を无限にすることも可能になります。
本研究成果は、米国応用物理学会の学術誌「Applied Physics Letters」にEditor's Pickとして掲載されました。

概要

高度情报社会を迎える中で磁気メモリを小型化し、それと并行してその容量を増やしていくことは非常に重要な课题です。近年、磁性体中に、独自の几何学的対称性を有する构造(トポロジカルオブジェクト(※5))をつくり込んで磁気デバイスに発展させようという研究が盛んに行われています。台风のような涡构造が格子を组んだものはスキルミオン格子と呼ばれ、非常に活発な研究分野となっています。本研究で対象とするトポロジカルオブジェクトは、らせん磁性体の中でも巻き方が右か左のどちらか一方であるキラル磁性体(※6)中に生成される360°回転のねじれであり、ソリトン方程式を満足することから「キラルソリトン」と呼ばれています。スキルミオンも、このキラルソリトンも、ゼロ磁场でらせん磁性状态を有するキラル磁性体中で出现するという共通点があります。今や、次世代磁気デバイスの基础研究において、らせん磁性体は非常にホットな研究分野です。

キラルソリトンについては、等间隔に并んだ格子状态(キラルソトン格子)がエネルギー的に安定です。また、ゼロ磁场のらせん磁性状态と强磁场の强制强磁性状态の间に出现するキラルソリトン格子はキラルソリトン数で特徴づけられます。例えば、强制强磁性状态ではソリトン数はゼロで、らせん磁性状态のソリトン数は许容値の最大を取ります。现実物质では、ソリトンの最大个数は、らせん轴方向の试料サイズを1つのソリトンの长さで割ったものになります。らせん轴方向の试料サイズが大きいと、ソリトンの出入りは强制强磁性状态付近の狭い磁场域で起こり、磁场の上げ下げによる磁化の违いはわずかです。また、ソリトンを导入する过程である减磁过程では、表面バリア※7の影响で、各らせん轴に対して复数个のソリトンが雪崩式に流れ込む现象が起こり、磁化过程に离散的変化を生じます。これは、キラルソリトンを形成するパターンの数が少なくなることを意味し、大容量メモリには使えません。今、このキラルソリトン格子を磁気メモリに利用しようとすると、幅広い磁场领域でできるだけ多くの固有状态を用意しなければなりません。ソリトン数を多くするにはらせん轴长を长くしなければならず、また、ソリトン数がロックされる状态を広い磁场域で安定化するには、逆にらせん轴长を短くしなければなりませんでした。

本研究グループは、これまで、典型的ならせん磁性体の1つである颁谤狈产3S6において、単结晶试料のらせん轴长が数10μ尘の结晶から出発し、らせん轴长を小さくする试料加工を施しては精密な磁気测定を行いながら、キラルソリトン格子の物性のサイズ効果を详しく研究してきました。今回、本研究グループは、らせん轴长をもともと数10μ尘であったものを3μ尘サイズにまで小さくし、昇磁过程と减磁过程の磁化过程の违いを剧的に拡大させました。また、加工时に自然に発生する厚み分布を利用することで、雪崩式ソリトン导入が起こらないようにし、キラルソリトン格子のパターン数を无限个つくり出し、しかもそれをある磁场领域で安定化させることに成功しました。これは、理论から予测された现象というより、実験の中で発见した现象です。

今回、最终的に用意した试料はらせん轴长の平均が3μ尘であり、らせん轴长に垂直な平面のサイズが500μ尘×300μ尘です。その结晶には1012本のらせん锁が存在する计算になります。また、3μ尘のらせん轴には最大63个のソリトンが许容されます。また、昇磁过程のソリトンを抜き出す过程と、减磁过程のソリトンを注入する过程で、同じソリトン数であってもそれらを実现する磁场に大きな隔たりをつくり出しました。実际にはらせん轴に垂直にわずかに磁场を印加することで、らせん轴の両端のスピンは磁场方向にそろってしまい、磁気メモリに使用できるソリトン数は约30个余りです。しかし、±0.3μ尘程度の分布によって表面バリアの効果が軽减され雪崩式のソリトン注入が起こらなくなり、各らせん锁ごとに独立にソリトン注入が起こることになりました。1012本のらせん锁が独立に、30个パターンのキラルソリトン格子を実现する訳で、パターン数として30×1012を计算すると无限大になります。本実験では、このシナリオを支持する実験结果が得られており、トポロジカルオブジェクトを用いた无限容量メモリの作製原理の発见として大いに注目されます。

用语解説

(※1) ソリトン
空间的に局在する孤立した波のことで、通常の波とは异なり形を変えずに伝播し、安定で変形しない。神経系や磁性体など、自然界のいろいろなところで见つかっている。

(※2) キラルソリトン
ある轴上に配置されたスピンが、らせん轴上をらせん轴に垂直に回転したとき、0°から出発して360°回転して元に戻った状态までが1つのキラルソリトンである。ソリトンの一种。

(※3) らせん磁気構造
反転対称性や镜面対称性のない结晶构造を有するキラル结晶で安定化される磁気构造であり、あるらせん轴に垂直に向いたスピンがらせん轴上を回転する磁気构造を指す。

(※4) キラリティ
右巻きと左巻きのように镜を利用しないとお互いを生成できない対称性のこと。

(※5) トポロジカルオブジェクト
磁性体中で考えたとき、涡やねじれといった构造を有する要素を指す。

(※6) キラル磁性体
スピンの巻き方が右か左のどちらか一方のみが実现されるらせん磁性体。

(※7) 表面バリア
キラルソリトンが试料表面から侵入する际に、超えなければならないエネルギー。

论文情报

  • 掲載誌: Applied Physics Letters
  • 論文タイトル: Soliton locking phenomenon over finite magnetic field region in the monoaxial chiral
            magnet CrNb3S6
  • 著者名: M. Ohkuma1, M. Mito1,2, Y. Kousaka2,3, T. Tajiri4, J. Akimitsu5, J. Kishine2,6,7,
               and K. Inoue2,8,9

  1 Graduate School of Engineering, Kyushu Institute of Technology, Kitakyushu 804-8550, Japan
    2 Chirality Research Center, 麻豆AV, Higashihiroshima 739-8526, Japan
    3 Department of Physics and Electronics, Osaka Prefecture University,
  1-1 Gakuencho, Sakai, Osaka 599-8531, Japan
    4 Faculty of Science, Fukuoka University, Fukuoka 814-0180, Japan
    5 Research Institute for Interdisciplinary Science, Okayama University, Okayama 700-8530, Japan
    6 Division of Natural and Environmental Sciences, The Open University of Japan,
  Chiba 261-8586, Japan
    7 Institute for Molecular Science, 38 Nishigo-Naka, Myodaiji, Okazaki, 444-8585, Japan
    8 Graduate School of Science, 麻豆AV, Higashihiroshima 739-8526, Japan and
    9 Institute for Advanced Materials Research, 麻豆AV, Higashihiroshima 739-8526, Japan

本研究は、日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(S)、広島大学自立型研究拠点 広島大学 「キラル国際研究拠点」、日本学術振興会 研究拠点形成事業(A. 先端拠点形成型)の支援を受けて行われました。

【お问い合わせ先】

&濒迟;研究内容について&驳迟;

九州工業大学 大学院工学研究院 基礎科学研究系

教授 美藤 正樹

TEL: 093-884-3286 

E-mail: mitoh*mns.kyutech.ac.jp (注:*は半角@に置き換えてください)

広島大学 キラル国際研究拠点?大学院先进理工系科学研究科

教授 井上克也

TEL: 082-424-7416 

E-mail: kxi*hiroshima-u.ac.jp (注:*は半角@に置き換えてください)

キラル国际研究拠点(颁搁别蝉颁别苍迟)

&濒迟;报道に関すること&驳迟;

九州工業大学 総務課 広報企画係(用正)

TEL: 093-884-3007 

E-mail: sou-kouhou*jimu.kyutech.ac.jp (注:*は半角@に置き換えてください)

広島大学 財務?総務室 広報部 広報グループ

TEL: 082-424-3749

E-mail: koho*office.hiroshima-u.ac.jp (注:*は半角@に置き換えてください)


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