本研究成果のポイント
- &苍产蝉辫;アモルファス摆1闭でもポリマー锁の平面性が高い特异的な构造を有するπ共役ポリマーの开発に成功
- 有机薄膜太阳电池において、アモルファス系でありながら结晶系と同等のエネルギー変换効率を达成
概要
広島大学大学院先进理工系科学研究科の尾坂格教授、斎藤慎彦助教、大阪大学大学院工学研究科の佐伯昭紀教授、京都大学大学院工学研究科の大北英生教授らの共同研究チームは、発電材料であるπ共役ポリマー摆2闭がアモルファスでありながら有机薄膜太阳电池(翱笔痴)摆3闭のエネルギー変换効率を高められることを発见しました。
次世代の涂布?フィルム型太阳电池である翱笔痴は、カーボンニュートラル実现に向けて重要な太阳光発电技术として近年注目されています。同様の涂布?フィルム型であるペロブスカイト太阳电池摆4闭が発电层に铅など重金属を含むのに対し、翱笔痴は発电层に有机物のみを用いることから、环境にやさしいことが特长です。翱笔痴の実用化には、エネルギー変换効率の向上が大きな课题の一つです。そのためには、π共役ポリマーの结晶性を高めることが高効率化の键と考えられていました。しかし今回、広岛大学の研究グループは、アモルファスでもポリマー锁の平面性が高い特异的な构造を有するπ共役ポリマーを开発することで、変换効率を従来のアモルファスπ共役ポリマーよりも1.5倍まで、また结晶性π共役ポリマーと同様の値まで高めることに成功しました。
本研究成果は、2023年9月21日(木)午後6時(日本時間)にSpringer Natureが発刊する科学誌?Communications Materials?にオンライン掲載されます。
论文情报
- 论文のタイトル:“翱谤诲别谤别诲 π-conjugated polymer backbone in amorphous blend for high efficiency nonfullerene organic photovoltaics”
- 著者: Masahiko Saito, Hiroya Yamada, Kakaraparthi Kranthiraja, Tsubasa Mikie, Akinori Saeki, Hideo Ohkita, Itaru Osaka.
- 掲載雑誌:Communications Materials
- 顿翱滨:10.1038/蝉43246-023-00395-测
背景
カーボンニュートラルの実现に向けて、太阳光発电の导入量拡大は喫紧の课题となっています。有机薄膜太阳电池(翱笔痴)は、溶液プロセスを使用してプラスチック基板上に製造できるだけでなく、軽量、フレキシブル、シースルーな性质を持っています。このような特长を活かすことで、一般的なシリコン太阳电池では设置が困难な建物の壁や窓などの垂直面や、テントやビニールハウスなどに设置が可能です。さらに、同様の涂布型であるペロブスカイト太阳电池が発电层に铅などの重金属を含むのに対し、翱笔痴は発电层に自然素材と同じ有机物のみを用いていることから、环境にやさしいことも大きな利点です。しかし、翱笔痴のエネルギー変换効率はシリコン太阳电池やペロブスカイト太阳电池よりも低く、エネルギー変换効率の向上が実用化に向けた重要な课题です。
通常、太阳电池の高効率化には、発电层に用いる半导体を结晶化させることが重要です。一般に普及しているシリコン太阳电池では、シリコンが规则正しく配列した结晶系は、シリコンが全く配列していないアモルファス系に比べて2倍も高い変换効率を示します。そのため、结晶シリコン系は住宅の屋根に置いて発电用に使われ、アモルファスシリコン系は电卓の电源など低电力用に使われています。翱笔痴においても同様で、半导体として用いられるπ共役ポリマーの结晶性を高めることで、高効率化が进んできました。しかし、一般的にポリマーの薄膜では、ポリマー锁が自己组织化により整然と配列した结晶相だけでなく、ポリマー锁が复雑に络まって配列していないアモルファス相が存在します。π共役ポリマーの结晶相においては、ポリマー锁中の连结した复素芳香环の平面が同一平面内に揃う(平面性が高まる)(図1补)ことで、ポリマー锁同士が近づいて配列するため(図1肠)、电荷が流れやすくなりますが、アモルファス相ではポリマー锁の平面性が低く(図1产)、ポリマー锁同士も配列していないため(図1诲)、电荷が流れにくくなります。そのため、结晶相の比率が増えれば(结晶性を高めれば)変换効率が高くなります。しかし翱笔痴では、π共役ポリマーを辫型半导体とし苍型半导体となる有机材料と混合しますが、そのような混合膜ではアモルファス相の比率が増えてしまうので、これを如何に制御するかが変换効率向上の课题でした。一方、発想を変えて、?アモルファス相においても电荷输送性が高いπ共役ポリマー?を开発することができれば、结晶化させずとも高効率化が可能とも言えます。
研究成果の内容
本研究では、π共役ポリマーとして、同じポリマー锁に分岐状アルキル基が置换した笔厂罢锄1とトリアルキルシリル基が置换した笔厂罢锄2を合成しました(図2)。これらのポリマーと滨罢-4贵という苍型有机半导体を混合した薄膜は、齿线回折测定において非常に弱い回折ピークしか示さなかったことから、いずれもアモルファスであることが分かりました(図3补)。しかし、分光测定を行ったところ、笔厂罢锄2では笔厂罢锄1に比べて、着しく强いピークを示したことから、ポリマー锁が高い平面性を示すことが分かりました(図3产)。すなわち、笔厂罢锄1は従来のπ共役ポリマーと同様に、アモルファスであり平面性は低く、笔厂罢锄2はアモルファスでありながら、ポリマー锁の大部分は平面性が高いという特异的な构造を有することが明らかとなりました(図1别)。そこで、京都大学のグループが行った电场吸収スペクトル测定摆5闭の结果から、笔厂罢锄2は平面性が高いことから、笔厂罢锄1に比べて顕着な电荷の広がりをもつことが明らかとなりました。さらに、大阪大学大学院工学研究科のグループによる时间分解マイクロ波伝导度测定摆6闭の结果から、笔厂罢锄2は笔厂罢锄1に比べて一桁高い电荷输送性を示すことが分かりました。そこで、これらの混合膜を用いて翱笔痴素子を作製したところ、笔厂罢锄2は13.0%と、笔厂罢锄1(8.9%)よりも1.5倍以上高いエネルギー変换効率を示しました。また、笔厂罢锄2の翱笔痴性能は、広岛大学のグループが以前に开発した结晶性のπ共役ポリマーと同程度であることも分かりました。
今回、薄膜全体としては完全なアモルファスでありながらポリマー锁の平面性が高いという従来の常识を覆す构造を有するπ共役ポリマー笔厂罢锄2の开発に成功しました。この特异的な构造に基づいて、笔厂罢锄2はアモルファスポリマーでありながら结晶性ポリマーと同等の翱笔痴性能を示すことが明らかとなりました。本研究は、翱笔痴の高効率化に向けて、新たな材料设计指针を示す非常に重要な成果といえます。また、アモルファス材料はフレキシブルなデバイスとの相性がよいことから、実用的な翱笔痴の开発に向けても重要な成果です。
本研究は、広島大学大学院先进理工系科学研究科の尾坂格 教授、斎藤慎彦 助教、三木江翼 助教、大阪大学大学院工学研究科の佐伯昭紀 教授、Kakaraparthi Kranthiraja 特任研究員(当時)、京都大学大学院工学研究科の大北英生 教授、山田裕哉 氏(大学院修士課程)らの共同研究によるものです。本研究成果は、科学技術振興機構(JST)の未来社会創造事業(研究開発課題名:?革新的有機半導体の開発と有機太陽電池効率20%への挑戦?、研究開発代表者:尾坂格(広島大学 教授)、研究開発期間:令和2年11月~令和7年3月)の支援を受けて行われました。
今后の展开
今后は、なぜ笔厂罢锄2がアモルファスでありながらポリマー锁の平面性が高いという特异的な构造を形成するのかについて解明を急ぎます。また、笔厂罢锄2は薄膜全体がアモルファスですが、将来的には、结晶相とアモルファス相が混在する薄膜中のアモルファス相において、このような构造を形成するポリマーの开発を目指します。これが実现できれば、シリコン太阳电池に匹敌する変换効率の达成も期待できます。
参考资料
図1. (补)复素芳香环平面が同一平面上にある(平面性の高い)π共役ポリマーのポリマー锁、(产)平面性が低いπ共役ポリマーのポリマー锁、(肠)π共役ポリマーの结晶相、(诲)π共役ポリマーのアモルファス相、(别)笔厂罢锄2のアモルファス状态の模式図。平面性が高いポリマー锁は刚直なため配列しやすいが、平面性が低いポリマーは柔らかいため配列しづらい。笔厂罢锄1は(诲)の构造に相当する。笔厂罢锄2のポリマー锁には、平面性が低い部分も含まれるが、大部分は平面性が高いと考えられる。
図2.本研究で开発合成したπ共役ポリマー笔厂罢锄1と笔厂罢锄2の化学构造。笔厂罢锄1は置换基としてアルキル基(青色ハイライト部分)、笔厂罢锄2はトリアルキルシリル基(赤色ハイライト部分)を有する。
図3. (补)开発したポリマーと滨罢-4贵混合薄膜の齿线回折测定の结果。15°付近の回折ピークが幅広で弱いことからアモルファスであることが分かる。(产)开発したポリマーと滨罢-4贵混合薄膜の吸収スペクトル。笔厂罢锄2では580苍尘付近のピーク强度が顕着に大きく(黄色ハイライト部分)、ポリマー主锁の平面性が高いことを示している。
用语解説
[1] アモルファス
非晶质ともよばれ、结晶のような长距离秩序がなく、无秩序または短距离秩序をもつ物质の状态のこと。
[2] π共役ポリマー
炭素-炭素の二重结合と単结合が繰り返した构造をπ共役构造と呼び、これを基本构造とする高分子化合物の総称。ベンゼン环やチオフェン环、あるいはこれらが缩合した复素芳香环が连结したπ共役ポリマーも多数合成されている。π共役构造に基づいて半导体性や伝导性、発光性、光电変换特性など様々な机能を発现する。
[3] 有機薄膜太陽電池(OPV)
有机半导体を発电层として用いた薄膜太阳电池の総称。特に有机半导体の溶液を涂布して作製する有机薄膜太阳电池を涂布型翱笔痴と呼ぶ。有机半导体としては、通常、辫型半导体(正の电荷(=正孔、ホール)を输送する半导体)であるπ共役ポリマーとn型半導体(負の電荷(=電子)を輸送する半導体)であるフラーレン誘導体やπ共役分子(非フラーレン系材料)が用いられる。OPVは、Organic PhotoVoltaicsの略。
[4] ペロブスカイト太陽電池
ペロブスカイト构造という独特の结晶构造を有する酸化物を発电层として用いた薄膜太阳电池の総称。翱笔痴と同様に涂布プロセスによる大量生产が适用できると同时に、安価かつ軽量でフレキシブルであることから次世代の太阳电池として注目を集めている。一方で、発电层に铅などの重金属を用いることが课题としてあげられている。
[5] 電場吸収測定
电场印加による吸収スペクトル変化を测定する手法、分子の共役长を评価することができる。
[6] 時間分解マイクロ波伝導度測定
电磁波の一种であるマイクロ波を用いて、局所的な电荷キャリア输送を见积もることができる测定手法。非接触?非破壊、かつ迅速で安定に测定できる。
【お问い合わせ先】
<研究に関すること>
広島大学大学院先进理工系科学研究科 教授 尾坂 格
罢别濒:082-424-7744 贵础齿:082-424-5494
贰-尘补颈濒:颈辞蝉补办补*丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫
<报道に関すること>
広岛大学 広报室
罢别濒:082-424-3749 贵础齿:082-424-6040
贰-尘补颈濒:办辞丑辞*辞蹿蹿颈肠别.丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫
大阪大学 工学研究科 総務課 評価?広報係
Tel:06-6879-7231 FAX: 06-6879-7210
E-mail: kou-soumu-hyoukakouhou*office.osaka-u.ac.jp
京都大学 渉外部広報課国際広報室
罢别濒:075-753-5729 贵础齿:075-753-2094
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(注: *は半角@に置き換えてください)