麻豆AV

  • ホームHome
  • 大学院先进理工系科学研究科
  • 【研究成果】高反応性スタニルカリウムの新奇発生法の开発と世界初の反応利用?安定?取り扱い容易な试薬のみでの厂耻谤别蹿颈谤别(确実な)発生法?

【研究成果】高反応性スタニルカリウムの新奇発生法の开発と世界初の反応利用?安定?取り扱い容易な试薬のみでの厂耻谤别蹿颈谤别(确実な)発生法?

本研究成果のポイント

  • これまで自然発火性のある危険な原料や、水や空気に极端に不安定な原料を用いて発生させる必要があったスタニルカリウム1を安全かつ安定な原料から简便に発生する手法を确立しました。
  • 有机合成反応へ利用されることがほぼなかったスタニルカリウムを、芳香族ハロゲン化物2のスタニル化反応3に利用しました。
  • スタニルカリウムの反応性が従来用いられてきたスタニルアニオン种4と比べ高く、反応性に乏しい立体的に嵩高い基质でも効率的に反応进行することを明らかにしました。この高い反応性を利用することで、活性化が难しい强い结合を利用するスタニル化反応の达成や様々な新分子合成へ展开することが今后期待できます。
     

概要

 広島大学大学院先进理工系科学研究科の吉田拡人教授を中心とした研究チームは、これまで高い反応性が期待されながら実用的な発生法が無かったスタニルカリウムを水や空気に安定なシリルスタナン5と一般的に使用される塩基である迟-叠耻翱碍のみで発生できることを明らかにしました。またこれを利用することで、芳香族ハロゲン化物の効率的なスタニル化反応を达成しました。本反応で得られる芳香族スズ化合物は、高価で希少な金属触媒や高反応性な有机金属反応剤6を用いて合成するのが一般的でした。近年ではスズとアルカリ金属などからなるスズアニオン种を用いたスタニル化反応も研究されています。しかし用いられるスズアニオン种はスタニルリチウムあるいはナトリウムが主であり、より高い反応性が期待されるスタニルカリウムの実用的発生法と反応利用例はありませんでした。本研究はスタニルカリウムを安全な方法で発生させるとともに、有用な合成反応へ展开した世界初の例であり、今后さまざまな分子合成に利用されることが期待されます。

 本研究成果は、英国王立化学会?Chemical Science?オンライン版に8月22日に掲載されました。
 

発表论文

  • 掲載雑誌:Chemical Science
  • 論文題目:Surefire generation of stannylpotassium: highly reactive stannyl anions and applications
  • 著者:Yuta Hiraoka, Taiki Imagawa, Kazuki Nakanishi, Hinata Kawabe, Masaaki Nakamoto, Takumi Tsushima and Hiroto Yoshida*
    *Corresponding author(責任著者)
  • 顿翱滨:

背景

 有机スズ化合物は、空気?湿気などの周囲环境に対する安定性と、他の元素では実现できない特有の反応性を示すため、右田?小杉?スティレカップリング(惭碍厂颁)7を代表とする様々な変换反応に利用される重要な合成中间体であり、薬理活性分子や液晶分子などの有用分子へと変换されます。すなわち、これらを直截的かつ高効率的に合成可能にする新反応の开発は、有机化学にとどまらず薬化学?材料化学分野にも大きな波及効果をもたらします。従来芳香族スズ化合物は、グリニャール反応剤など反応性が高い有机金属反応剤とハロゲン化スズ(颁濒–厂苍搁3)を用いる反応、あるいはパラジウムなどの迁移金属触媒を用いたジスタナン(搁3Sn-SnR3)と芳香族ハロゲン化物のカップリング反応により合成されてきました。その合成上の短所は、有机金属反応剤の高反応性や空気?湿気への鋭敏性ゆえに基质适用范囲が狭く、反応遂行に细心の注意を必要とする点(前者)、高価で希少な迁移金属が欠かせない点(后者)です(図1)。このような背景のもと、比较的调製が容易なスタニルリチウムをスズアニオン种として用いたスタニル化反応に関する研究も行われており、スズ上置换基として最も一般的なブチル(叠耻)基のものに限っても252报の论文が报告されるほど活発です。一方、同じアルカリ金属のカリウムを対カチオンに持つスタニルカリウムが、スズアニオン种として有机合成研究に用いられた例はほとんどありませんでした。

研究成果の内容

 スタニルカリウムを取り扱った研究例はスタニルリチウムのそれと比较すると圧倒的に少なく、スズ上置换基がブチル基のものの论文数は过去わずか10报にとどまっています(図2)。スタニルカリウムを合成する既存の手法が、金属カリウムや水素化カリウムなど反応性が极めて高く自然発火性のある危険なカリウム源や、水や空気に対して着しく不安定なスタニルボラン8をスズ源として必要とすることが主因と考えられます。简便で実用的な调製法が确立されているゆえにスタニルリチウムが様々なスタニル化反応开発に多用されているのとは対照的に、上记の理由からスタニルカリウムの反応剤としての潜在性は未解明なままでした。本研究グループは、スタニルカリウムを安全かつ安定な原料から简便に発生する手法の开発に着手し、スズ源としては水や空気に安定で取り扱い容易性の高いシリルスタナンを、カリウム源としては有机合成で一般に使用される塩基であるt-叠耻翱碍を用いることでスタニルカリウムを简便に発生できることを明らかにしました。また発生したスタニルカリウムを芳香族ハロゲン化物と反応させると温和な条件下、速やかにハロゲン部位でのスタニル化反応が进行することも明らかにしました。スタニル化反応は様々な基质に适用することができ、电子供与基や电子求引基が置换したもの、反応性官能基であるシアノ(颁狈)基を持つものや有用分子の基干构造として频出のピリジンなどの复素芳香环でも効率的に対応する芳香族スズ化合物へと変换することができました。惊くべきことに、従来のスズアニオン种では効率的なスタニル化反応を起こすことが困难であった反応部位周囲が极めて嵩高い基质であっても、スタニルカリウムを用いることで良好な収率でスタニル化生成物を得ることができました(図3)。理论计算に基づいたスズ?カリウム间の结合状态の解析により、このスタニルカリウムの例外的な反応性の高さは、スズ?カリウム结合の高いイオン性にあることが示唆されました。

今后の展开

 これまで未活用であった高反応性のスタニルカリウムを简便?安全に発生させる手法を开発し、有机合成的に価値ある反応へと利用できることも示した本研究は、今后さらなる未踏反応达成への道を切り拓いた研究ともいえます。今后は従来のスズアニオン种では変换が困难であったより强固な结合のスタニル化反応への利用などが期待されます。

用语解説

1. スタニルカリウム:スズ(Sn)とカリウム(K)からなる高反応性の化学種。
2. 芳香族ハロゲン化物:芳香族化合物のうち、芳香環の水素の1つがハロゲン原子に置換した化合物。
3. スタニル化反応:炭素骨格に対してスズ部位を導入する反応。
4. スズアニオン種:一般的にスズとアルカリ金属やアルカリ土類金属で構成される化学種で、スズがアニオン性を帯びている。
5. シリルスタナン:ケイ素(Si)とスズからなる水や空気に安定な化合物。
6. 有機金属反応剤:炭素?金属結合をもつ有機化合物の総称であり、炭素がアニオン性を帯びている。様々な反応において炭素求核剤として用いられる。
7. 右田?小杉?スティレカップリング:パラジウム触媒存在下、炭素–スズ結合と炭素–ハロゲン結合を選択的に反応させ炭素–炭素結合を形成する反応。
8. スタニルボラン:スズとホウ素(B)からなる化合物で空気や水に対して不安定。

【お问い合わせ先】

 大学院先进理工系科学研究科 教授 吉田 拡人
 罢别濒:082-424-7724 
 贰-尘补颈濒:测丑颈谤辞迟辞*丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫
 (*は半角@に置き换えてください)
 


up