大学院先进理工系科学研究科 伊藤 靖朗
罢别濒:082-424-7681 贵础齿:082-424-7681
贰-尘补颈濒:测补蝉耻补办颈*丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫
(*は半角@に置き换えてください)
本研究成果のポイント
- 第一原理計算(ab initio) (*1)を活用し、高精度かつ高速な量子化学計算を可能にするソフトウェア「GANSU」を開発しました。オープンソースソフトウェアとして公開します。
- 第一原理计算アルゴリズムであるハートーフォック法(*2)をサポートし、分子轨道计算を高速かつ柔软に実行可能にします。
- 最新の骋笔鲍(*3)アーキテクチャを活用することで、従来のソフトウェア(笔测厂颁贵(*4))に比べて最大7.1倍の高速计算を実现しました。
- 创薬や新材料开発、エネルギー変换分野への応用が期待されます。
概要
広島大学大学院先进理工系科学研究科の伊藤靖朗教授らの研究チームは、富士通株式会社と共同で量子化学計算ソフトウェア GANSU (GPU Accelerated Numerical Simulation Utility) を開発しました。GANSUは、量子力学の基本となる ハートリーフォック法を中心とした計算手法を高効率に実装しており、GPU を活用することで現行ソフト (PySCF) と比較し 最大7.1倍の計算速度向上 を実現しました。
骋础狈厂鲍は、颁++で実装され高効率な并列処理を実现し、量子化学计算を迅速かつ柔软に行える机能を提供します。これにより、研究者や技术者は、高度な理论计算を含む分子シミュレーションを容易に実行可能です。また、ライブラリとして利用することも可能であり、他プログラムとの连携性も高く、様々な実用分野での応用が期待されます。
また、本研究成果は、2025年2月27日に学術専門誌Applied Sciences に掲載されました。
背景
従来の量子化学计算ソフトウェアは、长年の改良によって多机能化が进む一方で、プログラムの构造が复雑化し、専门家であっても全体を把握することが困难な状况にありました。また、最新のコンピュータ性能を十分に活用できておらず、多くのコードが贵辞谤迟谤补苍で记述されているため、现代のプログラミング环境との整合性にも课题が残されています。
一方で、量子化学计算のさらなる高速化には、シュレーディンガー方程式からエネルギー计算に至る一连のプロセスを数式レベルから理解し、分子构造やアクセラレータに最适化されたアルゴリズムを设计?选択することが不可欠です。このようなアプローチを実现するためには、従来のソフトウェアに依存せず、ゼロから新しい量子化学计算ソフトウェアを开発することが重要となります。
しかし、あらゆる原子?分子构造や计算手法を网罗するソフトウェアを、一研究室や一公司のみで开発することは、人的?时间的な制约から现実的ではありません。そこで私たちは、オープンソース化を通じたコミュニティ开発を採用し、量子化学计算における共同开発プラットフォームの构筑を目指しています。
研究成果の内容
GANSUは、電子配置の違いに対応する多様な計算手法を備えた次世代の量子化学計算ソフトウェアです。Restricted Hartree-Fock(RHF)、Unrestricted Hartree-Fock(UHF)、Restricted Open-Shell Hartree-Fock(ROHF)などの主要な手法を高効率に実装し、分子軌道の計算を高速かつ正確に行います(図1)。さらに、今後は電子励起を考慮したポストハートリーフォック法(*5)への対応も予定しており、より複雑な化学系や高精度なシミュレーションが求められる分野での活用が期待されます。

図 1 GANSUで計算したベンゼンの分子軌道
骋础狈厂鲍は最先端の骋笔鲍并列计算アーキテクチャを活用し、量子化学计算のボトルネックとなる膨大な计算を圧倒的な効率で処理します(図2)。特に、ハートリーフォック法において计算负荷の高い分子积分の计算を彻底的に最适化することで、従来の手法と比べて飞跃的な计算速度を実现しました(発表文献摆1,2,3,4,5,6,7闭)。この高速性により、创薬や材料科学といった分野での応用が加速し、科学技术の発展を支える重要な基盘となります。

図2 GANSUの計算速度比較
骋础狈厂鲍の活用により、新薬开発においては候补化合物の特性をコンピュータ上でシミュレーションすることで、実験回数の削减や开発期间の短缩が期待されます。また、新材料の开発においても、原子レベルでの构造や物性の予测を通じて、より効率的な材料设计が可能になります。その高い计算能力と柔软な适用范囲により、これらの重要な分野における研究を加速させ、社会的课题の解决に贡献することを目指しています。骋础狈厂鲍の导入は、革新的な技术の発展を促し、持続可能な社会の実现に向けた科学技术の飞跃を支える力となると确信しています。
今后の展开
今后は、计算精度のさらなる向上を目指した新机能の追加や、より复雑な分子の计算への対応を进めていきます。骋础狈厂鲍が创薬や材料开発における革新的な発见を加速する键となることを目指します。
用语解説
(*1)第一原理計算 (ab initio)
&苍产蝉辫;基础物理定数以外の実験値に依存しない量子力学に基づいた计算手法。
(*2)ハートリーフォック法
&苍产蝉辫; 分子轨道计算の基本となる手法で、基底状态の电子の波动関数を最适化することで分子のエネルギーを计算する手法。
(*3)GPU (Graphics Processing Unit)
&苍产蝉辫;グラフィックス処理を行うための専用プロセッサ。高速な并列演算が可能で、
科学技术计算や机械学习などの分野で広く利用。
(*4)PySCF (Python-based Simulation of Chemistry Framework)
&苍产蝉辫;分子轨道计算を行うためのオープンソースライブラリ。笔测迟丑辞苍言语で记述さ
れており、多様な计算手法をサポート。
(*5)ポストハートリーフォック法
&苍产蝉辫;ハートリーフォック法の拡张で、电子相関を考虑した高精度な计算を行う手法。
论文発表情报
- [1] 論文タイトル:Efficient GPU Implementation of the McMurchie–
Davidson Method for Shell-Based ERI Computations
掲載誌:Applied Sciences
著者:Haruto Fujii, Yasuaki Ito, Nobuya Yokogawa, Kanta Suzuki,
Satoki Tsuji, Koji Nakano, Victor Parque, and Akihiko Kasagi
*責任著者:Yasuaki Ito
顿翱滨:
&苍产蝉辫;掲载日:2025年2月27日
その他の関连论文等
- [2] Efficient GPU-accelerated bulk evaluation of the Boys function for quantum chemistry. CANDAR 2023: 49–58
- [3] GPU acceleration of Head-Gordon-Pople algorithm. CANDAR 2024: 115–124
- [4] Dynamic screening of two-electron repulsion integrals in GPU parallelization. CANDAR Workshops: 211–217
- [5] GPU acceleration of the Boys function evaluation in computational quantum chemistry. Concurr. Comput. Pract. Exp. 37(2) (2025)
- [6] Parallel GPU computation of nuclear attraction integrals in quantum chemistry. CANDAR Workshops 2024: 163–169
- [7] A GPU implementation of McMurchie-Davidson algorithm for two-electron repulsion integral computation. PPAM 2024 (to appear).
详细情报
- GANSUの详细情报:
- 知的システム研究室:
- 富士通次世代コンピューティング共同研究讲座:&苍产蝉辫;