本研究成果のポイント
〇希土类元素の一种であるイッテルビウム(驰产)を含んだ化合物を、絶対零度に近い1ケルビン以下の极低温まで磁场を使って冷やせる材料(磁気冷冻材料)として応用した。
〇驰产系化合物を大型化して冷却テストを行い、実际に磁気冷冻材料として実用化に耐えうることを実証した。
〇驰产系磁気冷冻材料の性能には、驰产のもつ蹿电子に対する物性物理学の基础研究の知见が密接にかかわっており、本研究は、材料开発という応用研究と基础研究の桥渡しとなる学际的研究である。
概 要
絶対零度 (-273.15 ℃ = 0 K) に近い温度域に、巨大な熱容量を持つ磁性体に磁場を印加すると、原子のもつ小さな磁石である磁気モーメントが磁場の方向に揃う。その磁性体に対して、外部との熱的接触を断った状態で磁場を下げると、絶対零度に近い温度まで下がる。これを磁気冷凍とよび、適切な磁性体(磁気冷凍材料)と磁場を掃引するマグネットさえあれば簡単に冷やすことができる。30年以上前から、不安定で熱を伝えにくいため、扱いにくい常磁性塩が、極低温用の磁気冷凍材料として用いられてきた。
我々は上記の問題のない、希土類元素イッテルビウム(Yb)を含む化合物に着目し、新しい磁気冷凍材料の開発を行ってきた。その結果、冷却性能には、Ybの磁気モーメント間の相互作用の競合効果や、Ybのもつf電子と伝導電子の強相関効果という物性物理学の基礎研究の知見が重要であることが分かった。さらに我々は、10グラムを超える大型試料を合成し、それを市販の冷凍機に搭載して磁気冷凍の試験を行い、1 Kよりも十分低温まで冷える冷却材として実用可能であることを実証した。
现在、极低温の生成は容易でないが、极低温は物性研究だけでなく、宇宙物理学や量子情报分野にも必要とされており、物性物理学の基础研究と応用研究の桥渡しとなる数少ない学际的研究として今后発展することが期待される。

【文献情报】
志村 恭通, 常盤 欣文 日本物理学会誌 78 461 (2023).