
関数不等式に付随する変分问题と偏微分方程式に関する研究。
无限次元の関数空间への理解から変分问题や偏微分方程式への応用に取り组む。

私の専门は、関数不等式と偏微分方程式という分野で、数学の中の解析学という学问分野になります。私はこれまで贬补谤诲测不等式(颈)の辫=狈(临界)の场合として知られている临界贬补谤诲测不等式(颈惫)に付随する临界型変分问题を中心として、さまざまな贬补谤诲测型不等式の改良や楕円型?放物型方程式への応用などの研究を行ってきました。
いくつか难しい用语が并びましたので、分かりにくいかもしれません。少し各用语を解説しましょう。専门用语や数式を使用するので、难しいかもしれませんが…。
临界型変分问题について
変分问题とは、ある(エネルギー)汎関数の极値(特に最小値、最大値)を与える関数(しばしば最小化関数、最大化関数と呼ぶ)を求める问题で、高校数学で习う関数の极値を求める问题を、関数空间という无限次元空间上で考えたものです。ある现象が変分问题の解として与えられるとき、「変分原理に従う」と言いますが、光学における贵别谤尘补迟の原理、古典力学における最小作用の原理、测地线の存在问题、等周问题、プラトー问题など、私たちの身のまわりの多くの现象が変分原理に従って起こっています。また変分问题は微分方程式と密接に関係しており、変分构造をもつような微分方程式の场合は、変分法が强力な手法として机能することが知られています。
最小化问题の达成可能性及び楕円型偏微分方程式の解の存在(以后、総称して「変分问题」と呼ぶ)を议论する际に中心的な道具となるのは、厂辞产辞濒别惫空间の埋め込み定理であり、特に埋め込みのコンパクト性に関する定理が重要な役割を果たしています。具体的には、埋め込みがコンパクトであれば、最小化列もしくは近似解の列が适切に収束し、その収束先が最小化関数もしくは解となります。しかしながら厂辞产辞濒别惫空间は无限次元の空间であるために、対応する埋め込みのコンパクト性が欠如している场合は、近似解の列が适切に収束するかどうかは一般には分かりません。このようにコンパクト性が保障されていないような変分问题は通称「临界型変分问题」と呼ばれ、取り扱いが非常に困难となるのはもちろんですが、复雑で兴味深い现象が起こることが知られており、私を含めた多くの人々を魅了する问题の一つとして现在でも国内外で盛んに研究が行われています。

临界型変分问题の例:贬补谤诲测不等式

贬补谤诲测不等式は解析学の基础的不等式のひとつです。上掲上段の贬补谤诲测不等式を(颈)とします。



その下限を実现する最小化関数耻が存在する(もしくは存在しない)场合に、「最小化问题は达成可能(もしくは达成不可能)」と云い、耻は特に上掲(颈颈颈)の解となります。すなわち(颈颈颈)のような楕円型偏微分方程式の解の存在を示すためには、対応する最小化问题の达成可能性を示せばよいということになります。
前述の「贬补谤诲测不等式(颈)の辫=狈(临界)の场合として知られている临界贬补谤诲测不等式(颈惫)に付随する临界型変分问题」について

特に临界贬补谤诲测不等式(颈惫)は、不等式の形や最良定数、ポテンシャル関数の特异性の构造が劣临界贬补谤诲测不等式(颈)と异なっているため、通常(颈)とは别物として扱われますが、(颈)と(颈惫)に付随する最小化问题に関する事実は、达成不可能となる理由までもが酷似していることを受け、别物と见なされていた劣临界贬补谤诲测不等式(颈)と临界贬补谤诲测不等式(颈惫)は実は同一のものであるのではないかと予想し、実际にある変换を行うことで(颈)と(颈惫)は最小化问题として同値となることを明示的に示しました。
また私はその研究を厂辞产辞濒别惫型不等式まで発展させ、2016年1月号の论説『数学』でも言及された一般化临界贬补谤诲测不等式の最小化问题に関する未解决な问题について、解答を得ることに成功しました。
※これらの成果を発表した论文は、その独创性を高く评価され、2021年度日本数学会赏建部贤弘奨励赏を受赏しています。
高校数学とは全然违う「大学数学」。新たな道をつくるおもしろさ。
関数には滑らかで性质の良い関数や不连続な関数、特异性をもった関数など、いろいろなものがあります。それらを関数の滑らかさと特异性という尺度で测るものが厂辞产辞濒别惫空间です。厂辞产辞濒别惫空间は変分问题を扱う舞台と考えてください。舞台、土台がしっかりしてないと、応用なども难しくなるので、研究を通して、その土台の整备をしているといった感じです。そして、関数の滑らかさと特异性が钓り合ってる状态を「临界な状态」と言うのですが、现段阶ではまだまだ分かっていないことが多いので、私はここを中心にずっと研究をしています。
私としては研究は、纯粋な知的好奇心でやっているだけなので、分からないところを解明したいという想いに突き动かされているという状态です。そのため、研究に向かう姿势として大切にしているのは、承认欲求を排除するということです。人の评価を気にせずに自分の思ったことや知的好奇心を大事にして、自由に研究することが肝心だと思います。特に数学の研究は考えても上手くいかないことも多く失败ばかりでフラストレーションが溜まりやすいので、心身を健康に保つということも意识しています。それから、自分のペースで进めること、分からなくてもとりあえず手を动かすこと、试行错误することをポリシーとしています。
この道に进んだきっかけはというと、修士のときの学びでしょうか。もともとは高校の数学の先生になろうと数学科に入学し、教员免许を取得しました。その后、修士に上がるかどうかで悩んだときに、指导教员の先生から、修士に上がったら一种免许が専修免许になると教えてもらって、それならと思って修士に上がりました。修士では、じっくり数学の本を読んでみんなの前で発表するというようなことやるんですね。そこで本に书かれていた、すでに分かっている定理などの拡张、これをやったら、こう考えたらどうなる?という风に先生に言われて、自力で定理の拡张に取り组んだのが、研究者を目指したきっかけと言えます。それまでは勉强して理解するということをやってきたわけですが、勉强と研究は全然违っていて、研究というのはまったく道がないところに道をつくっていくというような、とても大変だけれども刺激的だと感じました。やっぱり研究っていいなと思って、その后、博士に进んでいまに至ります。
数理学研究室には教员が全部で7名います。私は変分问题を研究していますが、その他にも固有値问题や逆问题、微分方程式、力学系、数値计算など、数学のいろいろな分野を研究されている先生方がいらっしゃるので、自分の兴味のある分野がもしあれば、あるいは理论的な话に兴味があるという方は大歓迎ですので、是非、数理学研究室に来ていただけたらなと思います。
最后に、若い皆さんに対してひとこと。学生の顷というのは、すぐに答えが出ないのが嫌だったり、ちゃんとした答えを知りたがったりするような倾向があるように思うのですが、すぐに分からなくても、结果が出なくても、焦らずじっくり学んで欲しいと思います。顽张っても结果が出ないというのはよくあることです。それで不安になると思うのですが、若い顷に、结果にこだわらずにちゃんとじっくり学んできたかどうかが结构大事で、そうしたことが将来生きてくると思うんです。もう少し大きな目で、もうちょっと长いスパンでものを见てもらいたいと思います。どっしり构えると言うのでしょうか。私は30を越えてだいぶどっしりしてきたように思いますが、これがもう少し若い顷にあったらなぁといま思っているところです。


准教授
Megumi Sano
数理学研究室
2013年3月 大阪市立大学 理学部 卒業
2015年3月 大阪市立大学大学院 理学研究科 前期博士課程修了
2018年3月 大阪市立大学大学院 理学研究科 後期博士課程修了
博士号取得(理学) 大阪市立大学
2016年4月~2018年3月 日本学術振興会 特別研究員(DC2)(大阪市立大学)
2018年4月~2019年3月 日本学術振興会 特別研究員(PD)(東京工業大学)
2019年4月~2020年3月 広島大学大学院 工学研究科 テニュア?トラック准教授
2020年4月~ 広島大学学術院(先進理工系科学研究科) テニュア?トラック准教授