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深泽 智典助教にインタビュー!

広范囲に応用される微粒子ハンドリング技术に関する研究

社会に応用される微粒子ハンドリング技术の新たな可能性を求めて。

深澤助教

 私の研究室では、微粒子ハンドリング技术に立脚し、高効率的化学変换法の开発や环境调和型化学プロセスの开発を目指した研究?教育を行っています。扱っているのは微粒子やその集合体である粉体です。工业製品の约70%は粉体であると言われており、食品?医疗?电気电子材料といったさまざまな分野で、それらを扱う微粒子ハンドリング技术はますます重要になっています。すなわち、原料や廃弃物を无駄にすることなく、人体や环境への负荷を考虑した、省エネルギーで安全な化学工业プロセスを编み出していくという私たちの研究は、时代の要请と言えるでしょう。

 なかでも、现在の私の中心的な研究は大きく2つあります。1つは、工场等で発生する粉状の廃弃物を捕集し、有用な物质を取り出して再利用するための基础的な研究。もう1つは、粒子の电気泳动を利用した新たな分级手法の研究开発です。
 粉体を粒子の大きさで分けることを『分级』と言いますが、その手法には大きく分けて、『乾式』と『湿式』の2つがあります。『乾式』は空気中の粉体を扱うもので、サイクロンセパレーターやバグフィルターがその一例です。扫除机を思い浮かべてもらうと分かりやすいのではないでしょうか。1つ目の研究はこの乾式分级に関わるもの。そして、『湿式』のほうは液体中の微粒子を扱うもので、电気泳动利用の研究はこちらの方式。电気泳动とは、溶液中の荷电粒子が自分の持つ电荷と反対の极に向かって移动する现象ですが、この现象を利用した分级に関する研究です。

 こうした微粒子ハンドリングを専门にしている研究室は、国内では大変少なく、かなり希少な研究と言えます。技术的には昔からあるものではありますが、间违いなく社会に役立てられるものであり、既に社会実装されている研究も多くあります。そのため、研究は基础と応用を両轮として进んでおり、基础研究の部分も常に社会に役立つことを意识して行っています。
 このように、主に工场やプラントなどにおける各种工业製品の製造过程に応用されている微粒子ハンドリング技术ですが、私自身は人体の细胞一つひとつも粒子として捉えることができると考えており、例えば、再生医疗分野などにも、现在取り组んでいる基础研究の成果が、いつの日か役立てられることなども期待しているところです。

深澤助教?研究1

学生とも対等に论じ合う楽しさを実感。常に、正しさを疑う姿势を。

 私が研究のおもしろさを実感するのは、実験结果をグラフにしていく作业であったり、学生たちと対等なディスカッションを行っているとき、あるいは、新しい実験装置を组み立てているようなときです。とりわけ、学生たちとのディスカッションでは、若い彼らは発想が大変自由なので、「あぁ、そういう考え方をするのか」といった惊きもあり、とても刺激になります。ただ、広岛大学の学生さんは结构、优等生タイプが多いので、もっと生意気だなと思えるぐらいでもいいのではと思っています。先生の言うことは全部正しいと考えるのではなく、「いや、ぼくはこう思います」などと言ってくれるようなディスカッションが非常におもしろいし、楽しいと感じる时间です。
 また、研究に际しては、実験结果や先行研究を鵜呑みにしないという姿势を贯いています。学生たちにも常々、必ず再现性を确认するよう指导しているのですが、実はこれは、私自身の苦い経験が基になっているのです。学生の顷、初回の実験でいい结果が出たので、喜んでそのまま考察を进めていったものの、再実験の结果は违っていたということがありました。以来、実験の结果は、良いものも悪いものも、何かのエラーによるものかもしれないし、たまたまそうなったのかもしれないというスタンスで临み、本当にこの结果は正しいのかと常に问いかけ、追试して确かめることをいつも心がけています。先行研究についても同様に、确认することは欠かせないという风に考えています。

深澤助教?学生さんと1
深澤助教?学生さんと2

 さて、私は一贯して微粒子工学を探求していますが、これまでの道のりは平坦なものではありませんでした。小さい顷から昆虫などの生物が好きだったので、大学ではバイオテクノロジーを学ぼうと农学部に进学。しかし、あまり兴味が持てず、讲义にも最低限しか出席しないような日々を过ごしました。おもしろくなってきたのは、大学3年次に研究室に所属してからです。そこは、农业土木分野で土壌の微粒子を研究する研究室だったのですが、そこで初めて行った凝集実験がとても楽しくて、それからは研究にのめりこみました。そして4年时には、このまま博士课程まで进もうと决めました。まわりは就职するひとのほうが多かったのですが、せっかくの人生だから、いちばん大変そうな、博士课程へ进むという道を选ぼう。大変そうだからおもしろそうだ――そんな风に思えたのです。それから博士课程まで进み、博士の3年次には、オーストラリアのメルボルン大学へ短期留学をします。これが私にはまたひとつの転机になりました。と言うのも、博士课程では一时期、研究がうまくいかず、つらいときがあったのですが、メルボルン大学の学生たちは、结构、楽しそうに研究をしていました。そして、メリハリのある时间の使い方をしていて、平日は顽张るけれども休日はものすごく游ぶのです。それまでの自分は、平日も休日も研究研究といったスタイルでしたので、彼らを见て、そういうやり方もあるんだなと感じ、肩の力が抜けたのを覚えています。それ以降は今日まで、大変いい形で研究を続けてくることができました。まわりには切磋琢磨する仲间たちがいましたし、研究职に就くことになったのも、学会で知り合った若い先生からのお声掛けがきっかけでしたから、自分はとても运がよく、ひとや环境に恵まれていまがあると感谢しています。

化学工学は高校で学ぶ化学や物理を世の中に役立てる分野。就职にも强い。

 こうした自身の経験から、よく学生たちに言っているのは、「外国へ行け」「マイノリティになれ」ということです。私が短期留学をしたメルボルンは、オーストラリアの中でも日本人が少ないところでした。例えば、アジア圏に行くと、日本人ということで优遇されるような场面もあると思いますが、敢えて、日本人の少ない地域に出かけて行って、マイノリティになることで、得られる経験がきっとあるよと勧めています。また、学生时代は失败しても许されますから、自分の考えを大切にしながら、思い切って失败して欲しい。学生たちにはそんな思いがありますね。
 私が大学の研究职に就き、学生を指导するようになって丸5年ほどになります。一から指导して世に送り出した学生というのはまだ少ないのですが、社会に出ていった学生たちが一人前になって、ゆくゆくはそういう子たちとまた研究ができるようになるというのが、将来的な梦のようなものですね。実现したときにはきっと、「大学の先生をやっていてよかったな」と思うのではないでしょうか。

 最后に、进路を考えている皆さんに向けて。化学工学というのは、高校の教科书には载っていないので、おそらく高校生の皆さんには驯染みのない分野だろうと思いますが、実际には、高校で勉强する化学や物理を含むような内容で、こうした学びを社会に还元するもの、社会に役立てる桥渡しをするのが化学工学だと思うんです。最初にもお话ししたように、社会的な要请が高い分野であり、その分、研究成果が目に见えやすいという特徴もあると言えます。そのため、就职に関しても间违いなく强い。卒业生の就职先には、叠迟辞叠の会社さんが多いですが、有名どころから知る人ぞ知る公司までずらりとありますから、进路に困ることはまずないでしょう。

 そんな化学工学のなかでも、多岐にわたる微粒子や粉体を扱っている、うちの微粒子工学研究室は、印象としては地味かもしれませんが、ちょっと他とは違うことをやりたい、挑戦してみたいというひとには、とても楽しいところだと思います。顕微鏡をのぞくこともあれば、でっかいプラントに足を運んで、サイクロンやバグフィルターがどのように使われているかを視察することもある。まさに、顕微鏡から工場まで、粒子に関わるすべての分野が我々のフィールドです。興味のわいた方はぜひ、うちの研究室へ。皆さんのtrial and errorのパワーに期待しています。

深澤助教?研究室の皆さんと

 

 

 

 


Tomonori Fukasawa
微粒子工学研究室

2005年3月 筑波大学 第二学群 生物資源学類 卒業
2007年3月 筑波大学 大学院生命環境科学研究科 生物資源科学専攻 修士課程前期 修了
2009年7月~2009年8月 The University of Melbourne, Department of Chemical and Biomolecular Engineering Visiting researcher
2010年3月 筑波大学 大学院生命環境科学研究科 生物資源科学専攻 修士課程後期 修了
2010年4月1日~2014年10月31日 京都大学 大学院工学研究科 特定研究員
2014年11月1日~2015年2月28日 京都大学 大学院工学研究科 特定助教
2015年3月1日~ 広島大学 大学院工学研究科 助教
2020年4月1日~ 広島大学学術院(先進理工系科学研究科) 助教


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