麻豆AV

柴田 彻太郎教授にインタビュー!

柴田 彻太郎教授にインタビュー!

非线形楕円型方程式の固有値问题に関する研究。

非线形楕円型方程式の固有値问题、さらに逆分岐问题の解析にも挑む。

柴田 彻太郎 教授

 私の研究领域は、数学における微分方程式です。歴史的には、微分方程式は大きく分けて、「楕円型」、「放物型」、「双曲型」の3种类に分类されます。また、「线形」、「非线形」の2つに分类されるので、古典的には、3×2で、6通りの微分方程式が研究されてきました。もちろん现在では、これ以外にも、流体の方程式や分散型方程式、また逆问题と呼ばれる分野など、微分方程式の研究分野は多岐にわたります。そうした中で、私の研究分野は「非线形楕円型方程式」に分类され、特に『非线形固有値问题』というものを研究しています。固有値という言叶は、「行列の固有値」というように、数学ではポピュラーな用语です。时には「スペクトル」とも表现されるので、どこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか。この固有値は、「物体の振动」とも関係があります。
 より専门的な话をしていきますと、私の研究分野は、(1)分岐曲线の大域的解析(2)逆分岐问题の2つが中心と言えると思います。これらについては、数学の専门用语を使わずに説明することは困难なので、难しい説明になりますが、しばらくおつきあいください。

 

(1)分岐曲线の大域的解析

 非线形楕円方程式の固有値问题は、生物の个体の増减を记述するロジスティック方程式など、いろいろな自然现象から导かれます。物理における単振り子の方程式も非线形固有値问题のひとつですし、工学における非线形振动论にも非线形固有値问题が出现します。线形の方程式と异なり、出现する固有値は曲线であることが多いので、しばしば分岐曲线とも呼ばれます。ちなみに、线形固有値问题の分岐曲线は単なる直线です。

(原点から分岐する分岐曲线λ(α)の例)

(あ)分岐问题に関しては、1970年代に笔.搁补产颈苍辞飞颈迟锄らによって得られた分岐理论がとてもよく知られています。しかし、非线形项を大きく変えただけでも、たとえ常微分方程式であっても、分岐曲线の大域的挙动は非常に大きく変化するので、上记の古典的理论のみでは详しく解析することは非常に困难でした。

(い)また、分岐曲线の解析は、主としてL-空间の枠组みで考察されてきました。L-空间は、関数の集合を考え、各関数をいわば“点”とみなす、関数空间(ノルム空间)のひとつです。2つの関数の“距离”の测り方はいろいろあるので、その测り方の违いをLL1などと表します。たとえば、ロジスティック方程式などでは、解のL1-ノルムは生物等の个体数を表现する重要な量です。そこで、常微分方程式における迟颈尘别-尘补辫のアイデアを援用し、Lq-空间における分岐曲线の大域解析に成功しました。

(う)2つのパラメータを含む方程式の研究にも精力的に取り组んできました。RNの有界领域Ωにおいて、2つのパラメータλ, μ>0を含む非线形シュレーディンガー方程式に関连した方程式を考えます。この方程式が解を持つパラメータの集合S={(μ, λ)皑の构造を明らかにすることを目标としました。方程式の特徴から、2种类の异なる変分法を用いてμλでパラメトライズしました。すなわち、新しいパラメータα, β>0を导入し、μ=μ1λ, α), μ=μ2λ, β)と表现しました。このことは、Sに2种类の「切れ目」を入れていることに相当します。そしてλ→∞での漸近挙動を調べることは、線形の問題の場合、「asymptotic direction」を求める問題と呼ばれています。

 

(2)逆分岐问题
 逆分岐问题とは、分岐曲线の特徴から未知の非线形项を决定する问题です。线形の场合と异なり、非线形楕円型方程式の逆分岐问题の研究は非常に少なく、ほとんど未知の研究领域と言えるでしょう。何故ならば、与えられた非线形项を持つ方程式の分岐曲线の构造を明らかにする、いわゆる顺问题の解析ですら、时として非常に困难であるからです。私は最近、(1)の研究成果に基づき、分岐曲线の大域的挙动から未知の非线形项を决定するというまったく新しい研究テーマを考案し、いくつかの基本的结果を得ました。例えば、次の非线形方程式の逆固有値问题を考えます。

u''(迟)+f(u(迟))=λ耻(t),  u(迟)>0t ε I=:(0,1),  u(0)=u(1)=0

この方程式は、生物の个体数の増减を表すモデル方程式(ロジスティック方程式)と密接に関连しています。λ>0は増殖率を表すパラメータです。非线形项f(耻)が未知の関数のとき、λと解の増大度の関係から未知関数f(耻)を决定する问题を提唱しました。そして、(1)で导入したLq分岐曲线λ(辩, α)の渐近挙动から、未知の非线形项f(u)とベキの非线形项耻qの近さを定量的に决定できることを示しました。

※これらの成果を発表した论文は、その独创性を高く评価され、第16回(2017年度)日本数学会解析学赏を受赏しています。

実は社会と密接な関係がある数学という学问。社会问题の解决にもつながる。

 こうした私の研究の特徴は、『现実の现象を反映するモデル方程式に対する数学的アプローチを与えていること』と言えるでしょう。数学の研究対象は日々広がっており、さまざまな分野における现象が、数学、特に微分方程式を用いて定式化され、モデル方程式として解析されています。特に、环境问题(地球环境の変化など)や社会问题(交通渋滞やその解消など)においては、早急に解决すべき课题が山积みであり、紧急に対処しなければならない喫紧の课题も多いことから、これらを数値解析的に考察していくことはとても大切なことです。数学的な考察は、その现象をコントロールしている方程式に関して、根本的な解、すなわち、问题の本质を求めていく学问ですから、私は今后も、そうした现象を表す方程式の解の定性的?定量的な研究を进めていきたいと考えています。

 また、実际にモデル方程式を数学的に解析していく际には、多くの场合、研究当初はモデル方程式が単纯化されているものです。しかし、研究が进むにつれて、モデル方程式は実际の现象を、より详细に特徴づけできるように一般化されていきます。その意味において、研究当初は比较的単纯だったモデル方程式が、解析手法が进歩し、さまざまなアプローチと组み合わせることによって、现象を特徴づける厳密な解を得ることができます。私は、モデル方程式が、数学?数値问题?データ解析等、さまざまな角度から横断的に研究されることによって、环境问题や社会问题に対する解决策を与えることができると期待しています。

柴田教授

自分のやりたい数学はどんな分野か。兴味とじっくり向き合って、ぜひ工学部へ。

 私の研究スタイルは、自分が兴味を持った方程式について、いままでにない新しい切り口から问题を提案し、その答えを见つけ、そしてその研究成果を公表することによって、现在の研究が意味のある研究対象かどうかを问いかけるというもの。研究はその繰り返しだと思っています。そのため、自分が兴味を持った研究対象に、根気よく取り组んでいくよう努めています。

ホワイトボード

 そして、研究の醍醐味を味わえるのは、时间をかけて取り组んできた问题に対して、纳得のいく解答が得られたときです。もともと数学の、计算すればきちんと答えが出るというようなところが好きでしたが、数学の研究者を目指すようになったのは、大学の数学科に入学したところから。しかしながら、大学での数学には大きな戸惑いがありました。入学したのは理学部数学科でしたが、ここでの数学は非常に特殊で、定理を証明していくことを重视した学びでした。それは、数学者になるための基础训练とも言うべきものですが、高校までの数学とまったく违いますから、非常に当惑したのを覚えています。高校の数学は、どちらかというと、工学部の数学の勉强に似ているように思います。

 数学を学ぶために、理学部に行くか、工学部に行くかで悩まれる高校生も多いかと思いますが、私は自身の経験から、まずは両者の违いをよく理解したうえで、正しい选択をして欲しいと思います。工学部での数学は、例えば、物理现象を记述するのに必要な数学といったものが中心になりますし、基础的な数学力は必要不可欠です。いずれにしても、数学の问题に取り组むには、根気が必要です。学生の皆さんには、根気よく研究を続けて欲しいですし、自分の研究において、困难な局面に遭遇したときでも、简単には投げ出さない姿势を身につけて欲しいと愿っています。
 私が所属している数理学研究室は现在、教授が3名、准教授や助教の先生方も併せると教员が7名いる大所帯です。そのため、私のような微分方程式のほか、数値计算を扱う先生など、それぞれの研究分野も多岐にわたりますので、兴味のある分野も见つけやすいのではないかと思います。ぜひ数理学研究室の扉を叩いてください。大歓迎いたします。

 

 

 


Tetsutaro Shibata
数理学研究室

1991年11月 博士号取得(理学) 東京都立大学
1995年10月1日~2004年3月31日 広島大学 総合科学部 助教授
2004年4月1日~ 広島大学 大学院工学研究科 教授
2020年4月1日~ 広島大学学術院(先進理工系科学研究科) 教授


up