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大久保 孝昭教授にインタビュー!

大久保 孝昭教授

永く爱着を持って使える建筑物づくりと保全のための新技术の研究。

建物の长寿命化を支えるモニタリング技术と耐久设计に関する研究。

大久保 孝昭教授

 建筑学というのは、工学の中では一般の人に近いというのが特徴の学问で、広岛大学では、「快适さ?美しさ?机能性?安全性?経済性?长寿命(省资源)?低环境负荷(省エネ)」という7本柱で研究?教育を行っています。なかでも私の専门は「建筑材料」という分野で、构造材料から仕上げ材料まで幅広く扱っています。
 私がいま一番取り组んでいる研究は、「长寿命化」に関するものです。日本の建筑界はスクラップアンドビルドの时代から少子高齢化を反映して、ストックアンドリノベーションへ脱却を図ろうとしています。私の研究室では、そのために必要な技术について、予防保全の観点からさまざまな研究を行っています。

 「予防保全」というのは、建物の具合が极端に悪くなる前に、できるだけ早く手を打って长持ちさせようということで、人间の健康管理と建物の维持管理は同じことだと考えています。建筑物も定期的に点検しないと长持ちしません。しかも、建物の劣化に使用者はなかなか気づけません。そこで必要となるのは、モニタリング技术の导入です。ひとつには、センサーを建物に取り付けること。次に、センサーから得られた情报を専门技术者が适切に诊断すること。この2点が大切になってきます。建筑物のチェックは现在も行われているとお思いかもしれませんが、実は目视がほとんどなんですね。これをきちんとした装置を使って検査を行い、検査结果から合理的な指标を基にして诊断を下せるようなシステムを构筑していきたいと考えています。

学生指導
学生指導

 また、建物の长寿命化には、実はもうひとつ、大切なことがあります。それは、「耐久设计」という考え方です。もともと建物を长持ちさせようという概念が少なかった日本は建筑生产において「耐久设计」という考え方が主流ではなかったため、大学でも讲义すらできない状况なんです。そこで私のところでは、设计段阶で长持ちさせる材料やそれらの组み合わせに関する耐久设计にも力を入れて研究しています。例えば,コンクリートの场合はひび割れが一番耐久性の低下を招くので、ひび割れの少ないコンクリートをつくるというのも重要な研究のひとつです。
 つまり私の研究というのは、最初の段阶で长寿命化する设计をして、途中でモニタリングをして建物の状态を捉えて、适切な装置で诊断を行って补修等を施すという一连の流れが実现できるよう、それに合わせた研究を行っているという訳です。

医工连携をお手本に、分野横断的な取组みを。日本の住文化にも一石。

データ説明
データ

 こうした研究の特徴は、建筑以外の分野の人たちと共同研究したり、意见交换を行っていることと言えるでしょう。センサー技术者や机械の技术者などと一绪にやることで初めて実现することなので、建筑の研究者のなかではちょっと异质かもしれません。しかし、医学部の先生が医工连携で実现しているような高度な検査?诊断技术を、建筑の世界でも可能にしたいと思うんですよ。建物の利用者がスマホなどでデータを见て、おかしいなと思えば、専门家に相谈をする。最终的には、ユーザーが谁でも建物の维持管理に関わっていけるようになるというのが目标ですね。実现すれば、コストが抑えられるばかりでなく、建物に爱着を持って接していくという文化というようなところにまで高めていけるのではないかと想像しています。

 私が以前、国土交通省にいた顷に品确法(住宅の品质确保の促进等に関する法律)ができて、日本でも建筑物の长寿命化のための施策が打ち出されるようになりました。ようやくという感じです。例えばイギリスやフランスなどの街并みがきれいな所では、住民が一生悬命に建物の保全に関わっているんですよ。タイルが剥がれても新品は使わず、建筑时に劣化を见越して保管しておいたタイルを贴るんですね。日本とは考え方が违うとは思うんですが、そんな风に、日本でも自分の健康と同じように建物にも兴味を持ってもらって、结果的に建物が长持ちするという、そういう仕组みをつくるのが私の梦ですね。

 その国土交通省にいた顷に関わった研究が、実はいまの研究の発端なんです。当时、「耐震リフォーム诈欺」が社会问题になって、その対策として、リフォームによる补强や补修の前后で検査を行うようにしようということになり、そうした研究をチームで始めました。ところが、そうした検査をするシステムがなく、有线式センサーを使うと戸建住宅でも设置と计测で2日くらいかかる。无线式にすると复雑なデータを飞ばすことがうまくいかず、実现には至りませんでした。広岛大学にきて、こういうことがやりたいという私の発言に、地元のセンサー技术のベンチャー公司の方が手を挙げてくださって、これが无线センサーでのモニタリングを可能にしてくれました。

装置と先生

 このように、自身の研究分野を越えて他分野の人たちと连携するというのはものすごく大事だと思います。そうでないと、おそらく行き詰まりもあるだろうし、意义のあることが社会的に広がっていかないのではないかと思っていて、学生たちにもこのことは口をすっぱくして言っていますね。

デザイン志望から方向転换。研究の醍醐味はユーザーの喜びに触れること。

 私が建筑学科に进んだのは、デザインをやりたいと思ったから。ドラフターで设计図を描くのがかっこいいという憧れがあったんです。しかし、入ってみると、デザインよりも、目の前の4~5年くらいで実用化できるような新しい技术や新しい材料を开発したいと思うようになりました。おそらく、建筑に入ってくる学生の8割以上はデザイン志望なのではないでしょうか。しかし、建筑というのは非常に幅が広いんですね。计画系?环境系?构造系?総合系といろいろありますから、入ってから自由に道を选べるというのも大きな魅力だと思うんです。しかも、一般の人に身近な研究ができるというのがやりがいにも通じます。ユーザーに喜んでもらえるというのはとてもうれしいことですから。

研究室メンバー

 例えば、私は熊本出身なので、先ごろの熊本地震では亲戚も结构被害を受けたので、センサーを持って行って调査して、补强の仕方などをアドバイスしたんです。その时に、近所の皆さんにも同じようにしましたら、大変喜ばれました。それは非常にうれしかったですね。

 今后の目标を挙げるとすると、私の梦は述べてきたような仕组みを実现することなんですが、数年前からセンサーをつくっているメーカーの人たちと大学発ベンチャーを立ち上げてもいるんです。この事业が花开いて、ビル?ゲイツのように社会贡献のための寄付ができるくらいになれたらいいなというのが大きな目标でしょうか。やはり一般の人たちに喜ばれることが一番ですね。私たちは、センサーやコンクリートのほかにも、建物の情报を滨颁タグとして建物内に埋め込み、必要に応じてセンサーで简単に入手できるというようなことや、住宅の断热リフォームで取り付ける窓の研究などもやっていて、一连の研究の対象物は大変幅広いです。2017年度の研究室は、教员2名、ドクターコース3名、マスターコース6名そして学部4年生5名の计16名で研究に取り组んでいます。どこかに兴味がわいた方は、ぜひ一绪に研究をやりましょう。
 また、こちらに赴任して丸13年になりますが、広岛大学のいいところは、小さな町の中に完结していることだと感じています。大学のそばに学生が住んで、教员がいて、どこに行っても一体感があるんです。都会にある大学だとバラバラに住んでいて一体感はないですね。教员も近いし、町の人たちも温かく接してくれる。そうした意味で、东広岛にあるというのは学生にとって大きなメリットだと思います。うちの学生たちも年に1~2回、地域でのボランティアに参加していて、それが学生たちの伸び代になっている。研究自体がユーザーに近いので、研究の醍醐味に通じるところがあるようです。将来の目标を决めかねている人もぜひ建筑をめざして欲しいと思います。

 

 

 


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建筑材料学研究室 教授

1981年3月 九州大学 工学部建築学科 卒業
1986年3月 九州大学 工学部博士課程後期課程(建築学専攻)修了
1986年4月1日~1988年5月31日 九州大学 工学部建築学科 助手
1988年6月1日~1993年3月31日 九州大学 工学部建築学科  助教授
1993年4月1日~2001年3月31日 建設省(国土交通省) 建築研究所 建築生産研究室長、無機材料研究室長、国際研究協力官など
2001年4月1日~2004年3月30日 独立行政法人 建築研究所 材料研究G 上席研究員
2004年3月31日~ 広島大学 大学院 工学研究科 教授
2015年5月 「外気环境により劣化する搁颁外壁の目的指向型耐久设计技术の确立に関する研究」で日本建筑学会赏(论文)を受赏。(2017年5月11日掲载)
2020年4月1日~ 広島大学学術院(先進理工系科学研究科) 教授


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