東京大学大学院新領域創成科学研究科、同連携研究機構マテリアルイノベーション研究センター、科学技術振興機構(JST)さきがけ、産業技術総合研究所 産総研?東大 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ(※1)、広島大学大学院先進理工系科学研究科、物質?材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)の共同研究グループは、世界で初めてポリマー半導体の立体障害と分子ドーピングの相関を明らかにし、ポリマー半導体の「隙間」のサイズを制御することでドーピング量を100倍向上させることに成功しました。
本研究成果は、国際科学雑誌「Communications Materials」に掲載されました。本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(さきがけ)研究領域「超空間制御と革新的機能創成」(研究総括: 黒田 一幸)研究課題「分子インプランテーションによる超分子エレクトロニクスの創成」(研究者: 渡邉 峻一郎 東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 准教授)の一環として行われました。
摆背景闭
半导体の结晶中に不纯物(ドーパント)を添加することで、半导体中の电子の数やエネルギーを精密に制御することができます。不纯物ドーピングは、シリコンエレクトロニクスを支える最も重要な半导体技术です。プラスチックやゴムなどに代表されるポリマーにおいても、半导体的な特性が発见されて以来、不纯物ドーピングが适用されており、さまざまな电子机能性材料として产业応用も拡大されつつあります。シリコンにおける不纯物ドーピングは、格子を形成するシリコン原子を别の原子に置き换えることで达成されていました。一方で、ポリマー半导体をドーピングする际には、ユニークな形やサイズを有するポリマー分子とドーパント分子を复合化する必要があり、复雑な立体障害を制御することが必要不可欠でした。
本研究グループはポリマー半導体の中でも特に高い結晶性を有する結晶性ポリマー半導体に着目し、不純物ドーピングの研究を行ってきました(S. Watanabe, et al., Nature 2019, http://www.k.u-tokyo.ac.jp/info/entry/22_entry760/)。本質的に一次元的な鎖であるポリマーは、茹でたスパゲッティの様に鎖どうしが複雑に絡み合った構造をとりますが、結晶性ポリマー半導体は、比較的剛直な骨格をデザインすることで茹でる前のスパゲッティの様に鎖が規則正しく配列することが特徴的です。本研究グループは、結晶性ポリマー半導体の1ユニットあたり、1ドーパント分子を高密度に複合化する技術を世界に先駆けて報告しています。このような高密度な分子複合状態において、不純物ドーピングの効果を最大化する分子設計指針は明らかになっていませんでした。
摆手法と成果闭
このような课题を解决するため、本研究グループは结晶性ポリマー半导体のナノメートルサイズの「隙间」に着目し、立体障害と分子ドーピングの相関を系统的に调査しました。その结果、电気を流す骨格に周期的に付与された侧锁の密度を精密に制御し、适切に隙间を拡张することで(図)、分子ドーピング量を100倍程度向上させることに成功しました。また、この隙间が拡张された结晶性ポリマー半导体では、従来のドーパント分子よりも3倍程度体积の大きなドーパント分子を复合化することが可能となり、ほぼ最密充填された分子复合体を作製することにも成功しています。
摆今后の展望闭
结晶性ポリマー半导体の隙间とドーパント分子の大きさの関係が明らかとなったことで、これまでに実现できなかったさまざまな分子复合体材料を设计する指针が明确になりました。また、最密充填された分子复合体は、金属のように电気が流れやすくなり、热耐久性や环境耐久性も向上することがわかってきています。今后、异なる分子の复合化という极めて単纯な化学操作によって、革新的な电子?イオン材料を创製できると期待されます。
(図)
隙间のサイズを制御した结晶性ポリマー半导体笔狈顿罢叠罢-4颁16と笔狈顿罢叠罢-颁20の化学构造と分子集合体の模式図。隙间を拡张することで、ドーパント分子が格纳されるスペースが确保されている。