広岛大学 名誉教授 加藤范久
TEL: 082-426-0774
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(注:*は半角蔼に置き换えてください)
本研究成果のポイント
- 大肠がんモデルラットを使った実験で、少量アルコール摂取の抗肿疡効果を明らかにし、アルコールの闯-カーブ効果仮説を支持する结果となりました。
- 抗肿疡効果が最も顕着であったラットのエタノール摂取量をヒトに换算すると适量とされるアルコール量に近い値となりました。
- 少量アルコールの大肠肿疡抑制効果と肠内フローラとの関连性を示す証拠も见出されました。
概要
目的
これまで多くの疫学的調査により少量(適量)のアルコールを飲んでいる人はアルコールを全く飲まない人や多量のアルコールを摂取する人と比べて死亡率が低いことが報告され、アルコールのJ-カーブ効果として提唱されています(Marmot 1991年)。しかしながら、疫学的調査ではアルコールの効果が直接的な影響によるものかを判断することは困難です。そのため、動物実験でアルコールの効果を検証する必要があります。そこで、本研究では、大腸腫瘍の発症に対する少量エタノール摂取の効果について発がん剤投与ラットを使って実験を行いました。
方法と结果
本研究では、大肠の発がん剤(1,2-诲颈尘别迟丑测濒丑测诲谤补锄颈苍别)を注射した雄ラットにエタノールを含む饮料水(0%、0.5%、1%、あるいは2%[惫/惫])を28週间摂取させました。大肠の肿疡を病理学的に调べた结果、大肠がんの进展が1%エタノール摂取群で最も抑制されており、しかもアルコールの闯-カーブ効果を支持する结果となりました。
腫瘍の病理学的解析で特に大きな変化が見られたのが高度異型腺腫 (がん化しやすい良性腫瘍)で、その発症率は対照群(エタノール非投与群)で78%であったのに対して、1%エタノール群で13%となり、六分の一まで減少しました(図1)。また、悪性腫瘍(がん)の発症率は、対照群が89%であるのに対して、1%エタノール群の発症率は50%で最も低い値となりました。

1%エタノール摂取をヒト(男性)に换算すると一日约10驳となり、ヒトで适量とされている10-20驳/日(疫学的调査结果)に近い値となりました。
さらに腸内フローラも解析したところ、近年、免疫抑制作用が報告されているClostridium leptumの菌数が1%エタノール群で最も低い値を示しました。そのため、1%エタノール摂取がC. leptumの減少を介して免疫能を増大させ、大腸がんの進展を抑制している可能性が出てきました。
本研究のインパクト
本研究において、大腸腫瘍の発症に対するアルコールのJ-カーブ効果を動物実験ではじめて示しました(Yang他 2019年)。これまで、我々は高脂肪食摂取ラットの肝機能や老化促進マウスの老化の進展に対するアルコールのJ-カーブ効果も明らかにしてきました(Osaki他、2014年、Kimoto他、 2017年)。そのため、アルコールのJ-カーブ効果仮説を支持する複数の実験的証拠が揃ったことになり、様々な疾病に対するアルコールのJ-カーブ効果の可能性が高まったと云えます。さらに、アルコールのJ-カーブ効果が動物実験で実証されたことは、そのメカニズムの解明への道も開かれたことになります。そのメカニズムの一端として腸内フローラの関与も示唆され、少量アルコールが腸内フローラに影響する重要な環境因子であることも明らかとなりました。
论文情报
- 掲載雑誌: Journal of Nutritional Science and Vitaminology 65巻, pp. 443-450 (2019年)
- 論文題目: Consumption of low-dose of ethanol suppresses colon tumorigenesis in 1,2-dimethylhydrazine-treated rats
- 著者: Yang Y, Kan Takahara, Thanutchaporn Kumrungsee, Akiko Kimoto, Fumio Shimamoto, Norihisa Kato
- DOI: 10.3177/jnsv.65.443
报道発表
中国新聞 10日24日