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【研究成果】社会性昆虫が繁殖を分业する仕组みに公共遗伝子発现データから迫る

本研究成果のポイント

  • 社会性昆虫の巣内では、女王が生殖を行い、働きアリ(ハチ)が育児や採饵を行う繁殖の分业が见られ、ハチ?アリ类やシロアリ类が代表的なグループです。
  • 本研究ではハチ?アリ类、シロアリ类の女王および働きアリ(ハチ)の遗伝子発现実験データを公共データベースから多数収集し(34种から258个)、统合的な解析をすることで、繁殖の分业に必要な遗伝子を明らかにすることを目指しました。
  • 主要な社会性昆虫全体で女王および働きアリ(ハチ)で高発现する倾向がある20个の遗伝子を発见しました。この中には、これまでに女王と働きアリ(ハチ)で発现に违いがある遗伝子として报告されていないものも含まれており、新规の関连遗伝子の発见となりました。

概要

 広島大学大学院统合生命科学研究科の栂浩平研究員および坊農秀雅特任教授は、公共データベース(以下公共DB)に蓄積された多数の遺伝子発現実験データを利活用し、社会性昆虫の繁殖の分業に関連する候補遺伝子を特定しました。
 昆虫の中には社会性昆虫と呼ばれるグループが存在します。社会性昆虫の最も大きな特徴は、巣内に繁殖する个体としない个体がいることです。この繁殖の分业は、ハチ?アリ类やゴキブリに近縁なシロアリで独自に进化しています。
 本研究では、公共顿叠に登録されている社会性昆虫34种?258セットの遗伝子発现実験データの统合?再解析により、女王と働きアリ(ハチ)との间で発现が异なる遗伝子を探しました。これほど多数の种?多数のデータで比较した例はこれまでありません。その结果、女王および働きアリ(ハチ)で高発现する遗伝子を20个発见しました。この中には、これまで発现差があることが报告されていない遗伝子も含まれており、新规の発见となりました。20遗伝子のうちインスリンの分泌や睡眠の制御に働くことが推定される遗伝子もあり、いずれも生殖能力や寿命に関係することが示唆される要因です。これらの遗伝子の机能解析が进めば、女王がなぜ长寿で生殖を活発に行えるのか、そして働きアリ(ハチ)は生殖を行わず育児や採饵に専念するのか、その仕组みに迫れるのではないかと考えています。
 本研究成果は、スイスの出版社 Multidisciplinary Digital Publishing Institute(MDPI)のInternational Journal of Molecular Sciences誌に2022年5月6日に掲載されました。

论文情报

  • 着者
    Kouhei Toga1), Hidemasa Bono*2)
    * Corresponding author
    1)大学院统合生命科学研究科?研究員
    2)大学院统合生命科学研究科?特任教授
     
  • 论文题目
    Meta-Analysis of Public RNA Sequencing Data Revealed Potential Key Genes Associated with Reproductive Division of Labor in Social Hymenoptera and Termites
     
  • 掲载雑誌
    International Journal of Molecular Sciences.
    DOI: 

背景

 昆虫の中には社会性昆虫と呼ばれるグループが存在します。社会性昆虫の最も大きな特徴は、巣内に繁殖する个体としない个体がいることです。この繁殖の分业は、主にハチ类(ミツバチ、スズメバチ、アリ)や、ゴキブリに近縁なシロアリで独自に进化しています。繁殖の分业の各系统における独自の进化にはどのような遗伝的な共通性があるのかは、主に少数の种を用いた遗伝子発现比较によって调べられてきましたが、多数の种を利用した解析はありませんでした。より多くの种で共通して発现が変化する遗伝子は、社会性昆虫の繁殖の分业に必要な遗伝子である可能性が高いと予想されます。
 しかし、多数の种のサンプルを自身で集めて全て解析することは、极めて难しいです。そこで、公共顿叠にある既存の遗伝子発现データを用いることが効果的です。社会性昆虫の繁殖の分业に関わる遗伝子発现実験データは、各种ごとに公共顿叠に蓄积されており利用可能でした。また、既存の研究データを统合?再解析する手法はメタ解析と呼ばれ、个别の研究では明らかにならなかった新规の遗伝子発现変化をも発见できるメリットもあります。
 以上より、私たちは遗伝子発现実験データのメタ解析により、社会性昆虫全体で共通して発现が変化する遗伝子や、これまでに报告がない新规の遗伝子発现変化を明らかにする研究に取り组みました。

研究成果の内容

 社会性昆虫34种から、女王および働きアリ(ハチ)の搁狈础-蝉别辩*1実験データを258ペア収集しました。当研究室では、発现が上昇もしくは低下したペア数をもとにランク付けを行い、遗伝子の発现変化を评価する方法を开発していました。本研究ではそれを利用して、女王で発现が高いもしくは働きアリ(ハチ)で発现が高い遗伝子を20个(女王と働きアリ(ハチ)でそれぞれ10个)特定しました(図1)。女王で発现が高い遗伝子の上位二つは、ビテロジェニンと呼ばれる卵黄の前駆タンパク质をコードする遗伝子とその受容体でした。これらはすでに女王で高発现することが多くの种で知られている遗伝子なので、得られた遗伝子リストに信頼性があることがわかります。また、20个のうち12个の遗伝子がこれまで繁殖の分业に関与するという报告が无い遗伝子であり、メタ解析の効果が発挥されました。
 リスアップされた遗伝子が他の动物ではどのような机能を担っているかを调べると、インスリンの分泌や、睡眠の制御に関わる遗伝子が含まれていることがわかりました。これらは生殖能力や寿命に関わることが示唆される要因です。

今后の展望

 社会性昆虫の女王は生殖能力が高く长寿です。本研究で明らかになった遗伝子の机能解析が进めば、人类社会にも役立つ生殖能力の向上や长寿の仕组みが、社会性昆虫からわかるかもしれません。

参考资料

図1 メタ解析によって得られた遗伝子のランク

 横轴は当研究室で开発された遗伝子発现変化の评価方法に基づいた遗伝子発现量の强度のランクを示す。縦轴はそのランク付けに利用した値を示す。散布図横に记载された遗伝子名は、ランク上位(女王で高発现)および下位(働きアリ(ハチ)で高発现する遗伝子を示している。青文字の遗伝子名は、これまでに女王で高発现することがよく知られている遗伝子を示す。 Secreated protein, acidic cistein-richはマウスでインスリの分泌制御に関わることが知られる遗伝子、quiverGABA transporterはキイロショウジョウバエで睡眠に関连する遗伝子である。

研究资金

本研究は、科学技術振興機構(JST)が助成する共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)?Bio-Digital Transformation(バイオDX)産学共創拠点? (JPMJPF2010)によって実施されました。

语句説明

(*1)搁狈础-蝉别辩:サンプル中の検出可能なすべての遗伝子について、その配列や発现量を网罗的に测定できる技术。

【お问い合わせ先】

 大学院统合生命科学研究科 特任教授 坊農秀雅

 罢别濒:082-424-4013

 贰-尘补颈濒:产辞苍辞丑耻*丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫

 (*は半角@に置き换えてください)

 


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