広島大学大学院统合生命科学研究科 数理生命科学プログラム
准教授 斉藤 稔
罢别濒:082-424-7335
贰-尘补颈濒:苍别苍蝉补颈迟辞*丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫
(注: *は半角@に置き換えてください)
図:(础)细胞轮郭のフーリエ基底による表现。(叠)相互作用计算を高速化する、细胞の粒子场表现。(颁)1万细胞シミュレーション。(顿)発见された流体-流体相転移。
细胞の変形能力は、生体组织の柔らかさ?硬さ?流动性を决定する重要な要素であり、组织の恒常性※や安定した発生※过程に不可欠です。また癌浸润や创伤治癒などに见られる细胞移动にも重要な役割を果たします。しかし、変形する细胞の大规模シミュレーションは、これまで细胞同士が隙间なく接着している上皮细胞※の数理モデルに限られており、それ以外の细胞集団ではどのような现象が生じうるかの理解は不十分でした。
広島大学、自然科学研究機構 生命創成探究センター、東京大学の共同研究チームは、細胞変形を高速度で記述する数理モデル?数値計算手法を開発し、多様に変形する細胞集団の大規模シミュレーションを可能としました。この手法を用い、密集した細胞集団の解析を行ったところ、ゆるく結合した上皮や间叶系様の形状を持つ细胞※の集団では、強く密着した上皮细胞集団とは質的に異なる流動状態が出現しうることを明らかにしました。
さらに、提案手法は、组织规模の细胞集団に対する柔软なアプローチを提供し、様々な研究へと発展?波及することが期待されます。
本研究成果は、「Science Advances」(オンライン版)に令和6年5月8日付で掲載されました。
组织中の细胞は、力学的相互作用※を通じて周りの細胞と押し合いへし合いしています。このような混雑環境であっても、個々の細胞の変形の度合いによって細胞同士の配置換えが起こり、細胞の流れが生じることがあります。このようなプロセスは胚形成や癌浸潤などの重要な生物学的イベントと密接に関わっています。特に近年、生物物理学や発生生物学の分野で、そういった細胞の流れを物質科学の言葉で捉えなおすという試みが注目されています。細胞の移動や配置換えが可能な組織の状態を“流体”状態、どちらもできない状態を“固体”状態として捉え、組織が “固体”から“流体”へと変わる条件や生物学的意義について大きな議論と関心を呼んでいます。
これまでシミュレーションに基づく理論研究が、組織の固体化/流動化現象の研究を先導してきました。しかし変形細胞の数が多くなると数値計算が困難になるという問題点があり、計算が容易である4?8角形程度の多角形形状を持つ細胞の研究が主でした。これらの多角形形状は隙間なく接着している上皮细胞の表現としては適していますが、他の条件の細胞には適用できません。しかし多角形から逸脱した形状を持つ細胞は、発生、再生、病態を含む様々な生物学的プロセスにおいて遍在しており、組織の硬さ?柔らかさなどの物性的な性質に寄与すると考えられています。そのため、任意の変形を示す細胞の大規模シミュレーションを容易に行える理論的?計算的枠組みが求められていました。
広島大学大学院统合生命科学研究科の斉藤稔准教授(兼任:生命創成探究センター)と東京大学総合文化研究科の石原秀至准教授の共同研究チームは、二次元的な細胞形状をフーリエ基底で表現することで、多数の変形細胞の力学的相互作用を高速で計算できる枠組みを開発しました。この手法を用いると、1万個程度の自由変形可能な細胞を数値計算することが可能となります。提案手法を用いて、高密度細胞集団のシミュレーションを行った結果、高密度の細胞集団は質的に異なる二つの流動化状態を取りうることが理論的に予測されました。
1つ目の流动化状态(「流体相」)では、个々の细胞は円形を保ちつつ细胞の游走性に駆动されて组织全体が流动化します。もう一つの流动化状态(「ソフト流体相」)では、个々の细胞は大きく変形し、変形と游走性により组织が流动化を起こします。またこの二つの流动化状态间の迁移は、トポロジカル欠陥と呼ばれる细胞配置上の特异点のパーコレーション転移として理解できることが理论的に示されました。さらに物质科学で知られる「ヘキサティック相※」という流动化状态の存在も示唆されました。この研究から、细胞集団は従来考えられていたより多様で复雑な流动化状态を生じうることが明らかとなりました。
本研究は、発生、再生、病态形成を含むさまざまな生物学的プロセスで広く観察される非多角形形状を持つ细胞に光を当て、これらの细胞がどのようにして流动性や移动性を获得するのか、そしてそれがどのようにして生物学的な相転移に寄与するのかを理解する新たな视点を提供しました。この视点から発生や创伤治癒の数理的な理解につながる可能性があります。またこの新たな计算手法を骋笔鲍计算?并列计算へと拡张し、さらに発展させることで、がん転移の机序の解明等へ贡献することが期待できます。
※トポロジカル欠陥…局所的に组织の向きを定义できないような空间上の特异点
※パーコレーション…空间中に点在する领域が连结して巨大な繋がりになる现象。例えば多孔质材料において、穴の数?大きさが一定のレベルに达すると、穴の领域が全体を贯通して液体や気体を通すことができるようになる现象。
※恒常性…生体の内部や外部环境の変化に関わらず、体内の状态を一定に保つこと
※発生…受精卵から成体に至るまで、多様な组织や器官をもつ体を作る过程のこと
※上皮细胞…皮膚、内臓や血管などの表面を覆っている細胞
※間葉系様細胞…上皮细胞と比べ接着性が弱く、遊走性を持つ細胞で、間葉系細胞(非上皮系の間葉を構成する細胞)に似た形状?振る舞いを持つ細胞
※力学的相互作用…押したり、引いたり、といった力を介した相互作用
※ヘキサティック相…结晶の性质を保持した液体状态。二次元结晶が融解する际に现れる。
広島大学大学院统合生命科学研究科 数理生命科学プログラム
准教授 斉藤 稔
罢别濒:082-424-7335
贰-尘补颈濒:苍别苍蝉补颈迟辞*丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫
(注: *は半角@に置き換えてください)
掲載日 : 2024年05月29日
Copyright © 2003- 広島大学