本研究のポイント
- 日本におけるてんかんの疫学に関する全国规模の调査研究报告はこれまでほとんどありません。国の患者调査により推计患者数が把握されていますが、调査方法の性质上、过小评価となっている可能性があります。またてんかんの発症率(※1)に関する日本からの报告は未だありません。
- 今回、広島大学の研究グループでは、全国の健康保険組合加入者9,864,278 人のレセプトデータを解析し、年齢?性別?暦年ごとのてんかんの有病率(※2)ならびに発症率を明らかにしました。
概要
- 広島大学大学院医系科学研究科 栗栖あけみ特任学術研究員、杉山文講師、田中純子特任教授、広岛大学病院てんかんセンター長 飯田幸治教授らの研究グループは、全国の健康保険組合加入者9,864,278人のレセプトデータ8年分を解析し、日本におけるてんかんの有病率、発症率を明らかにしました。
- その结果、てんかん有病率は人口1,000人あたり6.0人(男性6.1人、女性5.8人、2019年)であり、これまでに报告されている、先进国での有病率(4~8人/人口1,000人)1,2と同水準でした。
- てんかん発症率は、10万人年あたり72.1人(95%信頼区間: 71.2-73.0/10万人年)でした。これまで報告されている先進国におけるてんかん発症率(45-49/10万人年)3,4と比べ、約1.5倍高値でした。年代別にみると、0歳と70-74歳がその他の年代よりも著しく高い、U字曲線となっていました。本邦のてんかん発症率について算出した報告はこれまでになく、初めての報告です。
- 患者の规模(有病率と発症率)を把握することは保健医疗戦略を考える上で重要であり、本研究では、全国地域を网罗する大规模一般集団を対象とした解析结果に基づくてんかんの疫学的実态を提示しました。
- 本研究は、令和2年度厚生労働科学研究费补助金障害者政策総合研究事业「てんかんの地域诊疗连携体制の推进のためのてんかん诊疗拠点病院运用ガイドラインに関する研究」(代表研究者 山本仁、分担研究者 田中纯子)の一环として行われました。
- 本研究成果は、2023年2月23日に国際科学誌「Journal of Epidemiology」に掲載されました(Online ahead of print)。
论文情报
- 掲載誌:Journal of Epidemiology
- 論文タイトル:Incidence and prevalence of epilepsy in Japan: a retrospective analysis of insurance claims data of 9,864,278 insured persons
- 著者名:Akemi Kurisu1,2, Aya Sugiyama1,2, Tomoyuki Akita1,2, Ichiro Takumi3, Hitoshi Yamamoto4, Koji Iida5,6, Junko Tanaka1,2*
1.広島大学大学院医系科学研究科 疫学?疾病制御学
2.広島大学 疫学&データ解析新領域プロジェクト研究センター
3.聖マリアンナ医科大学 脳神経外科学
4.聖マリアンナ医科大学 小児科学
5.広島大学大学院医系科学研究科 脳神経外科学
6.広岛大学病院 てんかんセンター
*Corresponding author(責任著者)
- DOI: 10.2188/jea.JE20220316. Online ahead of print.
背景
てんかんは、乳幼児から高齢者までどの年齢层でも発症する可能性があり、患者数の多い神経疾患のひとつです。先进国での有病率は、一般人口1,000人あたり4~8人1,2、発症率は一般人口10万人あたり1年间で约45-49人3,4と报告されています。
患者の规模(有病率と発症率)を把握することは保健医疗戦略を考える上で重要ですが、日本におけるてんかんの有病率、発症率に関する全国规模の疫学调査研究报告はこれまでほとんどありません。
本研究では、大规模レセプトデータ解析により、年齢?性别?暦年ごとのてんかんの有病率ならびに発症率を明らかにすることを、目的としました。
研究成果の内容
- データ提供元である株式会社闯惭顿颁が契约する全国の健康保険组合に、2012年1月~2019年12月の8年间に在籍记録を有するすべての加入者(被扶养者を含む)9,864,278人を解析対象母集団としました。健康保険组合加入者であることから、対象者の年齢は74歳以下であり、40-50代が全体の约3割を占めています。
- 本研究班において、レセプトの伤病名情报、医薬品情报、诊疗行為情报、てんかん指导料などの情报から、「てんかん患者」を判定するためのアルゴリズムを开発し、解析しました。
- その结果抽出されたてんかん患者数は、77,312人でした(8年间、重复を除く人数)。
- 抽出した「てんかん患者」情报にもとづき、有病率、発症率を算出しました。
- てんかん有病率は、人口1,000人あたり6.0人(男性6.1人、女性5.8人、2019年)でした。てんかん有病率の2012年~2019年の経年変化は、人口1,000人あたり5.4~6.0人(男性5.4~6.1人、女性5.4~5.8人)と微増倾向でした。性差についてはほとんどみられませんでした。年代别では、70-74歳のてんかん有病率は、他の年代と比较して最も高い値を示し(9.2人/1,000人、2019年)、次いで10歳代が高い値を示しました。(15-19歳:8.6人/1,000人、10-14歳:7.9人/1,000人、2019年)
図1:健康保険组合加入者集団における年齢阶级别?年度别てんかん有病率(人口千人対)
- 抽出した「てんかん患者」77,312人より、2012年1月以前にてんかんを発症していた患者47,387人(レセプトデータの「診療開始日」より判定)と健康保険組合加入後1年以内にてんかんを発症していた患者5,925人(保険変更に伴う診断の可能性が否定できないことから除外)の計54,312人を除外し、「新規てんかん患者」24,000人を分子に、てんかん症例と診断されていない健康保険組合加入者の2012年~2019年の総観察人年(33,299,234人年)を分母にして発症率を算出しました。その結果、てんかん発症率は、10万人年あたり72.1人(95%CI: 71.2-73.0/10万人年)、男性:70.7/10万人年(69.5-72.0/10万人年)女性:73.7/10万人年(72.3-75.1/10万人年)となり、女性の方がやや高率でした。年代別では0歳のてんかん発症率が最も高く199.8/10万人年(182.1-218.7/10万人年)、次いで70-74歳の発症率が179.4/10万人年(164.9-194.7/10万人年)がその他の年代よりも著しく高く、U字曲線となりました。本邦のてんかん発症率について算出した報告はこれまでになく、初めての報告です。
図2:健康保険组合加入者集団における年齢阶级别てんかん発症率(人口10万人年対)
- 患者の规模(有病率と発症率)を把握することは保健医疗戦略を考える上で重要であり、本研究では、全国地域を网罗する大规模一般集団を対象とした解析结果に基づくてんかんの疫学的実态を提示しました。
今后の展望
患者さんへの政策に生かされることを期待し、研究を続け発信をしたいと考えています。
【用语解説】
※1 発症率???一定期间内における疾病新规発生の程度を示す指标
※2 有病率???ある一时点において、疾病を有している人の割合
<脚注>
1. Fisher RS. Acevedo C, Arzimanoglou A. et al. ILAE official report: a practical clinical definition of epilepsy. Epilepsia. 2014: 55; 475-82.
2. Fisher RS. Van Emde Boas W, Bli,e W et al. Epileptic seizures and epilepsy: definition proposed by the International League Against Epilepsy (ILAE) and the International Bureau for Epilepsy (IBE). Epilepsia. 2005: 46; 470-2.
3. Ngugi AK. Kariuki SM, Bottomley C. et al. Incidence of epilepsy: a systematic review and meta-analysis. Neurology. 2011: 77; 1005-12.
4. Fiest KM, Sauro KM, Wiebe S, et al. Prevalence and incidence of epilepsy A systematic review and meta-analysis of international studies. Neurology. 2017: 88; 296-303.
【お问い合わせ先】
広岛大学病院てんかんセンター 教授 センター長 飯田 幸治
Tel:082-257-1719
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広岛大学 大学院医系科学研究科
疫学?疾病制御学 特任教授 田中 纯子
罢别濒:082-257-5160 贵础齿:082-257-5164
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(*は半角@に置き换えてください)