
机械を思い通りに动かす仕组み「制御技术」に関する研究。
世の中の大半のモノは制御されている。汎用的に応用できる制御法を考える。

私は、大学院生の顷から「制御系设计」という分野をずっと研究しています。「制御」というのは、何かを思い通りに操ることです。制御対象に何か目标が与えられると、コントローラというものが入力を决めて、自动的に制御対象の出力が、その目标値になるようにしてくれる、そうした仕组みを「制御系(システム)」と呼びます。
分かりやすい例として、エアコンを考えてみてください。リモコンの操作で23℃に设定すると、室温は胜手に23℃になりますね。そんな风に、何かアクションをして、なんらかの目标が达成されるところには、その対象となる机器类を制御するシステムが働いている訳ですが、私は、こうした制御の方法や考え方などを探求し、新たなものを开発していこうとしています。
この「制御工学」と呼ばれる分野は、1800年代の后半から研究が进んできており、その技术はいろいろなところで产业応用されています。エアコンはもとより、航空宇宙、自动车やロボット、电気製品、工业机械など、いまや制御なしで动かないモノは世の中にほとんどないと言えるような状况です。
そうしたなかでも、できるだけいろいろなものに、ひとつの手法でうまく适応できるようにならないか――そんな制御方法を我々はずっと探しています。
もう少し具体的に説明をしましょう。制御の一連の流れではまず、目標値と制御対象の出力の差(誤差)を算出し、この誤差に応じてコントローラがこの誤差を小さくするように制御対象への入力を決定います。例えば、自動車の自動運転の場合、車速を10km/hから30km/hにしたいときに、アクセルを5度傾けたとしましょう。これは、コントローラが「目標車速と現在の車速との誤差(30km/h-10km/h = 20km/h)に基づいてアクセルを何度傾けるべきか?」ということをコントローラが自動的に判断したことを意味します。このコントローラの判断のメカニズムは、制御則と呼ばれる一種のアルゴリズムによって実現されます。詳しいことは後述しますが、このアルゴリズムには制御パラメータと呼ばれる、コントローラの良否を左右する重要なパラメータがあります。このパラメータは制御対象ごとに個別に調整する必要があるのですが、その調整は簡単ではなく、産業現場では熟練の人が経験に基づいてパラメータを決定するというというケースも多くあります。
そして、こうしたパラメータが本当に正しいのかどうか、あるいは、状况が変わった场合でも同じでいいのか、といったところに、我々は注目します。
ものづくりのデジタル化に向けて开発が急がれる「データベース駆动型制御」。
同じく、自动车を例に话を続けますと、路面がツルツルの场合と、アスファルト舗装されている场合とでは、同じ制御パラメータ、すなわち、制御パラメータが固定されていては、适切な走行とはならないことが容易に想像できると思います。
他方、现在の产业界で使われている制御技术は、80%以上が「笔滨顿制御」と言われています。笔滨顿制御は、笔(比例)と滨(积分)と顿(微分)の3つの常数を决めてしまえば、自动制御が达成されるというものなのですが、これは、制御対象の入力と出力に比例関係が成り立つような、単纯な変化をする场合、いわゆる「线形」と呼ばれる状态のときには有効ですが、これらが比例関係にない场合、「非线形」と呼ばれる、入出力グラフが曲线を描くような状态のときには、あまり良好な制御结果を得ることができません。
こうした事情から、产业界での応用を考えるならば、この笔滨顿制御を器にしながら、そのパラメータの値をうまく调整していくような、高性能な制御方法が必要になります。そこで、我々の研究では、アダプティブ(适応的)にパラメータを変えていく、つまり、いまやってることが正しいかどうかをコンピュータが判断して、间违っていたらそれが正しくなる方向に自分でパラメータを変えていく、というようなやり方を考えています。そうした制御が可能になれば、いろいろなものへの応用もできるでしょう。
このように、适応的に、つまり、その场に応じてパラメータの値を调整していくという制御法は、「适応制御」や「セルフチューニング制御」と呼ばれます。


ところで、制御パラメータのチューニングには、制御対象の数理モデルをまず作りこのモデルに基づいてパラメータを决定する「モデルベース型制御器设计」と、制御対象から得られる入出力データを用いて、直接、制御パラメータを决定する「データ駆动型制御器设计」に大别されます。制御対象のモデルを作ると一言で言いますが、この作业はかなり大変で、制御対象に対する高度な知识が必要とされます。そのため、データ駆动型制御器设计は、そのようなモデリング作业からユーザが解放されるため、近年、制御系设计の分野で盛んに研究されています。そして、そのデータ駆动型の中でも、过去の入出力をデータベースに格纳して、これらのデータを必要な时だけ利用して制御パラメータを调整し、さらに制御结果に基づいて制御パラメータを学习する「データベース駆动型制御」というものを、私が院生のときの指导教官であった本研究室の山本透先生が考案されました。ちょうど研究を始められた当时は、先生も私も本学の大学院教育研究科の所属だったのですが、先生が工学研究科に异动されるタイミングで、私も同研究科に移り、以来、この「データベース駆动型制御」を改良していく方向で、研究を进めています。
さて、この研究の位置づけはいったいどんなものでしょうか。それを知る手がかりになるのが、2019年2月にスタートした、「広岛大学デジタルものづくり教育研究センター」です。これは、広岛県のひろしま产学共同研究拠点という施设内に设置されたもので、内阁府の「地方大学?地域产业创生交付金」および「地方创生推进交付金」を活用した产学连携システムです。前述の山本透先生は、その柱のひとつである「データ駆动型スマートシステム部门」の部门长をされています。このことから分かるように、我々の制御に関する研究というのは、喫紧の课题である「ものづくりのデジタル化」にも大きく関わっており、まさに次代を切り拓いていくような最先端の研究と言えるでしょう。
オフライン化学习というありそうでなかった新方式を考案し、产业応用を目指す。
私が行っている研究が山本先生の研究と大きく违う点は、その学习の仕方にあります。先生の学习法は、その场でする「オンライン学习」ですが、それに対して、私の场合は、「オフライン学习」という方式を取ります。
やはり自动车の例で考えてみてください。运転中に学习をする「オンライン学习」では、前述のように、ツルツルの道からアスファルト舗装の道へと道路の状态が変わった场合、运転しながら道路の状态に合わせて、车に搭载されたコントローラが胜手に条件を変えていきます。

しかし、実は学習アルゴリズムというのは、常にうまくいくとは限らないこともあり,運転中に学習をするという行為は便利である反面、実用上、危険を伴うのではないかと考えた私は、学習はせずに、事前にそのツルツルの道とアスファルト舗装の道で安全に走行させたデータを取って、その実験データをデータベースに置いておくと、そのデータを使って、データベースが勝手にぐるぐると何回も学習をする、そんな方式を考えました。それが、「DD-FRIT(Data-Driven Fictitious Reference Iterative Tuning=一組の入出力データのみで高精度なデータベース駆動型制御器を設計できる制御手法)」というもので、山本先生の考案された「データベース駆動型制御」の拡張型として評価をいただいています。何も動かさずに、1回の実験データだけで学習ができるというところに、この方法の大きな特徴があり、ユニークで希少な研究のひとつに数えられています。


もちろん、オンライン、オフラインともにメリット?デメリットがあります。オンラインには、その危険性とともに、学习に长时间を要するというデメリットがあったところ、オフラインでは、そうした学习时间を削减することができる訳です。一方、オフライン学习は学习の际に取得したデータの情报を用いて学习するため、全くの未知の制御対象の変动(车の例ですと、砂利道が出现した场合など)には対応できませんので、このような场合はオンライン学习の方が有効です。そのため、现在では、オフライン学习とオンライン学习のハイブリット型のデータベース駆动型制御系の设计手法について研究を进めています。
この研究がめざしているのは、产业応用です。そのためには、アウトプットの际に、世の中のひとたちが「使ってみよう」と思えるような形になっている必要があるため、前述した笔滨顿の形は外せませんし、なるべくシンプルな形で、うまくいく方法を提案するということを意识しています。
产业応用の际には、さまざまなハードルが待ち受けています。数式やシミュレーションでうまくいったことも、いざ実装となると、その机器に载せられないとか、熟练オペレータが筑いてきた実绩を前にして、やり方を変えることへの抵抗のようなものがあったりと、多くの困难があるのですが、それもまた、この研究のおもしろさでもあると思っています。制御によって、「自分が狙ったようにモノが动く」というのはやはり、とてもワクワクすることです。
当初、教员になることを目指していた私が、もともと兴味のあった制御の研究と、その分野の优れた研究者である山本先生に出会ったことで、工学畑に舵を切って、この研究を続けているのですから、人生は人との巡りあわせだと感じています。これを読んでいる皆さんのなかに、こうした研究に兴味がわいたひとがいれば、どうぞ工学部の第二类(电気电子?システム情报系)に入ってきてください。第二类は、日本がずーっと强かった「ものづくり」の基础を、电気を中心に学べるところです。自分が手を动かして、ゼロから何かを作って、最后に「制御」を入れてあげる。そうした全部を网罗して勉强ができる场所ですので、ものづくりを楽しみながらやってみたいというひとはぜひどうぞ。我々はそのための环境をきちんと用意してます。皆さんにとって私たちとの研究が良い巡り合わせになれば良いなと愿っています。

厂丑颈苍 奥补办颈迟补苍颈
システム制御论研究室 讲师
2009年3月 広島大学 教育学部 第二類(科学文化教育系) 卒業
2011年3月 広島大学大学院 教育学研究科 科学文化教育学専攻 博士課程前期 修了
2013年11月 広島大学大学院 工学研究科 システムサイバネティクス専攻 博士課程後期 修了
2013年12月1日~2016年3月31日 東京農工大学大学院 工学研究院 助教
2016年4月1日~2018年9月30日 広島大学大学院 工学研究院 寄附講座 講師
2018年10月1日~ 広島大学大学院 工学研究科 講師
2020年4月1日~ 広島大学学術院(先進理工系科学研究科) 講師