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中岛 卓司助教にインタビュー!

中岛 卓司助教にインタビュー!

シミュレーション&実験による自动车?船舶に関する流体工学的研究。

风や水の动きを解明し、工业製品づくりに活かしていく研究。

中島先生1

 広岛大学が夸る研究施设のなかに、「风洞装置」と「试験水槽」というものがあるのをご存知でしょうか。风洞装置は风の流れを再现するもので、2014年にリニューアルされ、ゲッチンゲン型风洞が设置されました。また、试験水槽は曳航(えいこう)水槽と呼ばれるもので、船などの模型を曳航电车で曳航(引っ张って航行すること)して、各种试験等をおこなうことができます。

 私の研究ではまさにこの両施设を活用しています。私の研究は、一般的には「流体工学」と呼ばれる分野で、流れるものがどのように动いて、その动きによってどのような物理现象が起こるのかを考えていくものです。流体にもいろいろありますが、代表的なものは「空気」と「水」です。例えば、自动车は空気の中を走るので、スピードが上がってくると、空気抵抗の影响を大きく受けます。飞行机も空気の力で空を飞びますし、船は水の上に浮かんでいます。私が所属する「输送?环境システム流体研究室」では、こうした空気や水の流れをうまく使って、性能のいい乗り物を作りましょうといった研究に取り组んでおり、なかでも私は主に自动车や船舶をとりまく流体を対象とした研究をしています。

 ところで、空気と水は、肌で感じることはできても见えませんから、どんな动きをしているかをつかむのは、実は大変难しいのです。そこで私は、「コンピュータシミュレーション」と「実験」を研究の道具として使っています。
 シミュレーションは、とりわけ自动车开発に大変重要な役割を果たしています。例えば、スーパーコンピューター「京(けい)」を使った自动车空力シミュレーションには、多くの自动车メーカーや大学等の研究机関が参加して、次世代空力シミュレーションを実现しました。私もそのメンバーの一员として大変有意义な経験を积むことができ、自动车や船の周りにできる空気や水の动きをコンピュータで描き出すシミュレーション技术を、研究の第一の强みとしています。
 一方で、シミュレーションはどこまでいっても仮想现実なので、「その结果は本当なの?」と问われると、返す言叶が见つからないことがあります。そのため、実际に测ってこうだったんですよと言えるように、実験をおこなうことにしています。つまり、现実世界では测るのは难しいけれども、こんなことが起こってるはずですということをより信頼できる形で出せる「シミュレーション」と、「実験」でこういう结果が出たから、シミュレーションで言っている、あの新しい现象はやっぱり正しかったと言えるという、そういう2つの方法で理论をがっちり固めていく。その両轮で进む方式を取っているのが、私の研究の个性と言えるかと思います。

空気を水に置き换え、広大の大型水槽で、自动车の空気抵抗を测定する。

 私は自动车関连の研究に数多く取り组んでいます。ここで、そうした研究の一端をご绍介しようと思います。
 まず、走行中の自动车を考えてみましょう。走っている自动车には、空気の抵抗と、タイヤによる転がり抵抗がかかってきます。このとき、タイヤの抵抗は速度が変わってもほとんど変わりませんが、空気の抵抗は速度の二乗でどんどん増えていきます。二次関数で増えていくので、100办尘/丑ぐらいになるとそれはかなり大きなものになります。

中島先生5

 例えば、120办尘/丑で高速道路を走っているときに、1割空気抵抗を减らしてあげると、5%ぐらい燃费が良くなるという风に言われています。地球温暖化を背景として、自动车の省エネ化は、自动车メーカーさんの果たすべき大きな课题となっていますから、各社さんとも、燃费を1%でも向上したいということで、こうした研究に热心に取り组まれている訳ですね。
 私のところの共同研究では、そうした空気抵抗を减らすために、空気から受ける力をどうコントロールしたらいいかという课题に、流体工学の観点から挑んでいます。特に、自动车メーカーさんの社内でおこなわれる研究と大きく异なるのは、自动车を実际に使用する状态に近い形で、空気の抵抗を考えていくという点です。
 自动车メーカーさんでは、実际の车をトンネルの中に入れて、风を当て、どれだけ空気抵抗が働くのかという実験をされます。「风洞」というのはまさにそうした装置なのですが、自动车が动いていくことによって、前からやってくる风を再现しようとしているので、大変きれいな风を当てることになります。しかし、実际の道路では、风は前方から吹いてくるだけではなく、横からも吹いてくるし、ハンドルを切って进めば斜めにも风を受けます。さらに风も、台风のときもあれば、そよ风のときもある。ここでは、そうした现実に起こり得るさまざまな风の影响を考えていこうとしています。
 その际のユニークな実験のひとつに、「水槽试験」があります。これは、空気では测定が难しいものを、水を使って再现しようとするもので、例えば前述の、ハンドルを切って进むときの斜めからの风というのは、风を曲げることはできないので、どう当たっているかを知ることは大変难しいんですね。曲がった风洞を作っても、风は外侧に寄っていってしまいます。ところが、広岛大学には特に船舶系の研究施设が大変充実していますので、そのうちのひとつ、曳航水槽を使えば、ハンドルを切って走っているときの状态がそのまま再现できるのです。上部から吊った自动车模型の中にセンサーを仕込んで、水の中を进ませる。そうした実験ができるのは、世界でも数件程度です。なかなか他ではできない、独自性のある手法を取ることができるのは、実験施设の充実した広岛大学ならではのことと感谢しています。

中島2

 その他にも、ある自动车メーカーさんとの共同研究では、风洞の中に可动式の羽根を取り付けて、时间とともに风向きが変わるときの空気抵抗と车の形の関係を调べてみたところ、これまで知られていた测定结果とは异なる结果が得られる车の形がありました。そのとき発见した现象を解説した论文は、2019年に自动车技术会赏の论文赏をいただくことができました。
 このように、现実に近い状态で何が起こるのかを考えることは、近年の流体工学の研究に求められていることだと思います。

 そのため、シミュレーションの场合にも、単に空気の力と车の动きだけを考えるのではなく、例えば、风にあおられて斜めに进んだ车を、ドライバーがハンドルを切って元のレーンに戻そうとするといった、ドライバーの反応まで含めたシミュレーションを作成するなど、现実を想定した工夫を盛り込んでいます。

学びに无駄なし。何事にも挑戦。人间の感覚と流体工学的な数値が近づく日を。

 この研究のおもしろいところは、やはり、実际に世の中にある身近なものを扱っているというところでしょうか。空気や水は见えないので、输送机器のまわりで何が起こっているかというのは、想像するほかはありませんが、そこをイメージするおもしろさがあります。加えて、自动车のあそこのあの形の部品は、空気抵抗を减らすためにつけてるんだななどと、街なかで眺めては想像する楽しさもありますね。そのうち、自身の研究成果も形になって、ふいに目にするようになるかもしれません。
 さて、この研究を始めたきっかけを遡ってみますと、まず、高校生の顷の私は、「レーシングカーのデザイナーになりたい」と思っていました。それを叶えるべく、进学先を选んだはずでしたが、学部生时代の研究室は、宇宙に近く空気が薄い世界の流れについて研究するところでした。そこで、大学院では梦の実现を図るべく、どこに进もうかと考えていたときのこと、大学の図书馆で、レーシングカーの开発エンジニアさんと一绪に东大の先生が记事を书かれている学会誌をたまたま目にしたのです。よし、この先生のところに行こう!と决めて院试を受け、晴れて入学したのですが、なぜかここでも、「いま、车のまわりの空気の流れの研究はやっていないよ」と言われることに。それでも、ドクターの3年生のとき、研究室の先辈にあたる先生が、レーシングカーの空力、车体まわりの空気の流れの研究をやるという话をされていたので、それに混ぜてもらったのが、いまの研究のスタート地点になりました。
 なかなか远回りをした感がありますが、いま研究で活用しているシミュレーション技术は、学部生の顷に学んだものです。また、ロボコンのサークルに入っていたので、电気电子的な知识やマイコンのプログラミングなどはサークルのメンバーがやっているのを见てかじったところがありますし、私自身はもっぱら肉体労働担当でしたが、いまなにかしら工夫した装置を作って実験をしましょうとなったときには、このあたりの経験が大いに役立っていると思うのです。つまり、何を勉强しても、“无駄になることはあまりない”というのが私の信条で、研究というのは、「あきらめない?なんでもやってみる」というのが大事だと思っています。
 さらに、うちの研究室や専攻は、「チャンスは与えつつ、自主性を重んじる」という気风です。この自主性というところ、皆さんはどんな风に考えるでしょうか。私は次のように捉えています。
 世の中には答えのない问题がいっぱいあって、むしろ、自分で问题を设定して、それを、答えがないけれども解いていかなければいけない。その姿势こそがおそらく、言叶を変えれば「自主性」であったり「创造性」であったりするのでしょう。私がその必要性や、それに対してどのようにやればいいのかをなんとなく分かったのは、もうドクターを卒业する顷でした。こうした経験を踏まえて、私の指导学生さんには、ぜひとも、もっと早い时期にこうしたことを理解してもらって、大学院やその后の研究、あるいは社会人としての生き方に、生かしてもらいたいと思っています。なんだかおもしろそうな研究室だな!とか、こんな研究をやってみたい!などと思った方がいれば、ぜひうちの研究室をめざしてもらいたいと思います。
 そして、これから先、难しくてまだどうすればいいのか见当もつかない研究目标のひとつに、「人间の感覚的なところと、いま取り组んでいるような力学的なところとを、できるだけ近づけていきたい」というのがあります。というのも、自动车メーカーさんの话では、自动车の最终的な评価をするときに、なにがしかの数値のクリアではなく、あくまでもプロドライバーさんが乗ってみて骋翱を出す、つまり、“人间が决める”世界がまだまだたくさんあるのだそうです。しかも、いくら空気抵抗を减らせる形状になっていても、カッコよくないと自动车は売れません。やはり、そこの评価も“人间が决める”ものなので、人间の感覚と力学的な研究成果とを近づけていくことが、これからのものづくりにとって重要なことなのではないか。そんなあたりをめざしていきたいと思っています。


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输送?环境システム流体研究室

2000年3月 京都大学 工学部 物理工学科 卒業
2002年3月 東京大学大学院 工学系研究科 修士課程 修了
2005年9月 東京大学大学院 工学系研究科 博士課程 単位取得済み退学
2005年10月~2006年3月 北海道大学大学院  工学研究科 学術研究院
2006年4月~2006年9月 北海道大学大学院  工学研究科 博士研究院
2006年5月 東京大学大学院 工学系研究科 博士課程学位取得(博士(工学))
2006年10月~2007年3月 広島大学大学院 工学研究科 助手
2007年4月~広島大学大学院 工学研究科 助教
2010年10月~2011年3月 バルセロナコンピュータセンター (Spain) 客員研究員
2020年4月1日~ 広島大学学術院(先進理工系科学研究科) 助教

 


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