広島大学 大学院 統合生命科学研究科?健康長寿研究拠点
特任教授 登田 隆
TEL: 082-424-7868
E-mail: takashi-toda*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)
本研究成果のポイント
- 细胞核(※1)はそれぞれの细胞で决まった空间的配置を占め、それが遗伝情报(染色体?顿狈础)の伝达に重要です。しかし、その位置がなぜ?どのように决定されているかというメカニズムは分かっていません。
- 分裂期进行に异常を示す分裂酵母(※2)変異体において、本来、細胞中央に位置する细胞核が赤道面から大きく移動するという現象を発見しました。
- このような细胞核の移動は、細胞質分裂に必須な収縮環(※3)の形成に依存して起こることを明らかにしました。
- 细胞核が細胞赤道面から大きく移動した細胞は、細胞質分裂による细胞核の物理的破断を免れ、ゲノム情報が倍化した細胞として生存できることが分かりました。
概要
広島大学 大学院统合生命科学研究科?広島大学健康長寿研究拠点の登田 隆 特任教授、湯川 格史 助教のグループは、遺伝情報(染色体?DNA)が収納されている细胞核の細胞内配置決定に関わる新たな経路を発見しました。
これまで分裂期に異常をもつ分裂酵母変異体では、未分裂の细胞核が細胞赤道面に配置したまま細胞質分裂を引き起こすために细胞核が破断され、細胞は生存できないと考えられていました。しかし、実際には细胞核を細胞赤道面から一方向に大きく移動させることにより、二倍体として生き残ることを発見しました(図)。
登田教授らは、さらに细胞核の移動が細胞質分裂の際に細胞赤道面に形成される収縮環に依存しており、収縮環形成に働くアクチン繊維(※4)やミオシンモーター(※5)が细胞核の移動に必要であることを明らかにしました。
本研究成果は、「颈厂肠颈别苍肠别」オンライン版に掲载されました。

用语解説
(※1) 细胞核
真核生物の细胞を构成する细胞小器官のひとつ。细胞の遗伝情报(染色体?顿狈础)の保存と伝达を行い、ほぼ全ての细胞に存在する。
(※2) 分裂酵母
細胞中央(赤道面)で分裂して増殖する酵母で、直径3?4 μm、長さ7?15 μmの円筒形をした細胞。細胞分裂研究のモデル系として、広く用いられている。
(※3) 収縮環
动物细胞や酵母が细胞质分裂する际には、细胞赤道面の表层がくびれて分裂するが、このくびれ部分(分裂沟)に一过的に形成されるアクチン繊维を主成分とした构造。収缩环がアクチンとミオシンの相互作用によって収缩することにより、细胞を二分する。
(※4) アクチン繊維
細胞内部で骨組みとして働くタンパク質で、球形の単量体が数珠のようにつながって重合し、さらにらせん状に絡まってできた直径 5?9 nmの繊維構造。細胞の形態変化や運動に深く関わっている。
(※5) ミオシンモーター
础罢笔の加水分解によって得られたエネルギーを利用して、アクチン繊维上を移动するモータータンパク质。
论文情报
- 掲載誌: iScience
- 論文タイトル: Escape from mitotic catastrophe by actin-dependent nuclear displacement in fission yeast
- 著者名: Masashi Yukawa*, Yasuhiro Teratani and Takashi Toda* (*共同責任著者)
- DOI: 10.1016/j.isci.2020.102031