大学院医系科学研究科 脳神経内科学
罢别濒:082-257-5201 贵础齿:082-505-0490
大学院生 江藤 太 (現 広島市立広島市民病院 脳神経内科)
講師 祢津 智久
贰-尘补颈濒:迟辞尘辞苍别锄耻*丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫
(*は半角@に置き换えてください)
本研究成果のポイント
- 急性期脳梗塞で広岛大学病院脳神経内科へ入院された患者さんの入院时における口腔内の状态が不良なほど、発症3ヶ月后の机能予后(※1)不良となることが分かりました。
- 口腔内环境が不良なほど院内肺炎を発症するリスクも増多することが分かりました。
- 広岛大学病院口腔総合诊疗科で开発された8项目からなる包括的な口腔内评価を行い状态确认することが入院后のケアにおいて重要と考えられます。
概要
- 口腔ケアは脳卒中患者さんの肺炎予防や摂食嚥下机能の改善において重要であることが知られています。しかし、多面的な口腔状态の评価を行うことと、脳卒中発症后の机能予后や院内肺炎との関连を调査した研究は少ない状况でした。
- 当院では、脳卒中患者さんが入院された際に口腔総合診療科へほぼ全例ご紹介し、概ね3日以内に8項目からなる「修正口腔アセスメント評価(modified Oral Assessment Grade (以下mOAG、図))」を用いて口腔内の状態を確認しています。
- 本研究では解析に必要なデータ収集ができた247人の急性期脳梗塞患者さんを対象としました。その结果、尘翱础骋スコアが高い(口腔状态が不良な)患者ほど、3ヶ月后の机能予后不良と関连し、院内肺炎の発症リスクが高いことが判明しました。
発表论文
- 掲載誌: Clinical Oral Investigations (2024 年 7 月)
- 論文タイトル: Oral condition at admission predicts functional outcomes and hospital-acquired pneumonia development among acute ischemic stroke patients
- 著者: Futoshi Eto1 (江藤 太), Tomohisa Nezu1* (祢津 智久), Hiromi Nishi2 (西 裕美), Shiro Aoki1 (青木 志郎), Saki Tasaka1 (田坂 沙季), Susumu Horikoshi2 (堀越 励), Kanako Yano3 (矢野 加奈子), Hiroyuki Kawaguchi2 (河口 浩之), Hirofumi Maruyama1 (丸山 博文)
1.広島大学大学院医系科学研究科 脳神経内科学
2.広岛大学病院 口腔総合诊疗科
3.広岛大学病院 诊疗支援部 歯科部门
*责任着者 - 顿翱滨:10.1007/蝉00784-024-05833-飞
- 鲍搁尝:
研究成果の内容
先述の通り、8つのカテゴリー(唇、舌、舌苔、唾液、粘膜、歯肉、口腔卫生、うがい)について各项目を0?3点で评価し、合计0?24点で急性期脳梗塞患者さんの入院时の口腔内环境を评価しました(点数が高いほど口腔内环境が不良であることを表しています)。分析の结果、以下の知见が得られました。
1. 高齢、入院前のmodified Rankin Scaleスコア(※2)が高いこと、慢性心不全の存在、入院時のNational Institute of Health Stroke Scaleスコア(※3)が高いことが、mOAGスコアの上昇(口腔状態の悪化)と関連していました。
2. mOAGスコアが1ポイント増加するごとに、3ヶ月後の機能予後不良(modified Rankin Scaleスコア3以上で何らかの介護が必要な割合)のリスクが1.31倍(95%信頼区間(※4): 1.17-1.48)、院内肺炎の発症リスクが1.21倍(95%信頼区間: 1.07-1.38)増加することが明らかになりました。
3. 機能予後不良を予測するmOAGのカットオフ値は7点(リスク 4.26倍(95%信頼区間: 2.14-8.66))、院内肺炎発症を予測するカットオフ値は8点(リスク 7.89倍(95%信頼区間: 1.96-52.8))であることが示されました。
4. 入院中に2回目のmOAG評価を受けた患者(全体の66.0%)では、初回評価時と比較して口腔状態の改善が見られました。
今后の展开
本研究成果により、急性期脳梗塞患者さんが入院された际に早期から包括的な口腔アセスメントを行う事の重要性が示されました。
尘翱础骋を用いた口腔评価は脳卒中以外の他疾患を有する患者さんでも使用しており、今后それぞれの疾患に応じたハイリスク患者さんを早期に指摘し、より効果的な口腔ケア介入プログラムにつなげることが期待されます。また、多职种连携による口腔ケアシステムの构筑や、长期的な予后との関连を调査する研究が今后求められると考えられます。
参考资料
図. mOAG(原著をもとに著者が和文に修正)

用语解説
(※1)机能予后:ある疾患や创伤を治疗した际の见通し(予后)のうち、后遗症に着目したもの
(※2) modified Rankin Scale
脳卒中患者の机能的転帰を评価するための尺度です。0(症状なし)から6(死亡)までの7段阶で、患者の日常生活における自立度を测定します。
(※3) National Institute of Health Stroke Scale
脳卒中の重症度を评価するための标準化された尺度です。意识レベル、言语机能、运动机能など复数の项目を0~40点の间で点数化し、脳卒中の程度を定量的に表します。
(※4) 95%信頼区間
母集団の真の値が95%の确率で含まれると推定される范囲のことです。データのばらつきや标本サイズを考虑して计算され、推定値の精度を示す指标として用いられます。
この研究成果は、日本学術振興会 科学研究費助成事業による支援を受けて得られたものです。