大学院统合生命科学研究科 生命环境総合科学プログラム
教授 山田 俊弘
罢别濒:082-424-6508 贵础齿:082-424-0758
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(注: *は半角@に置き換えてください)
研究成果のポイント
- 森林を半世纪间観察し続けることで、コジイ(※)の生きざまに迫りました。
- コジイの一生が、台风の袭来という偶然性の高い出来事に翻弄されていることを见つけました。コジイにとって台风は、风倒のリスクであり、成长のチャンスであり、次世代の更新の契机だったのです。
- 台风の袭来は偶然かもしれませんが、チャンスをものにできるかは、台风前の木の大きさが重要でした。
(※)コジイ(子椎)の别名は、ツブラジイ(円ら椎)です。果実として、ドングリの実をつけます(写真1)。别名の由来には、実に円みを帯びているためとの説もあります。ブナ科で照叶树林を代表する常緑広叶树であり、直径1m以上に成长します(写真2)。
概要
ヒトの目からは、森の时间はゆったりと流れているように见えます。同じ森に2日続けて访れたとしても、昨日の森と今日の森の违いに気づくことは、きっとないでしょう。しかし、同じ森をずっと长く観察したらどうでしょうか?今日の森は、1年前のそれとは、10年前のそれとは、50年前のそれとは大きく异なっているはずです。长く见続けてはじめて、森で起こる変化に気が付くことができるのです。私たち研究チームは、一つの森を半世纪もの间、観察し続けました。
そして、台风の袭来という偶然性の高い出来事が、コジイにとって重要であることを明らかにしました。台风は、风倒?枯死のリスクであり、成长のチャンスであり、次世代の更新の契机だったのです。
本研究结果は、台风の袭来に翻弄されるコジイの一生を明らかにしました。台风袭来前の25年と台风袭来后の24年间の约半世纪间、森林を辛抱强く観察したからこそ达成できた成果です。
本研究成果は、「贰肠辞蝉辫丑别谤别」に令和6年5月9日付でオンライン掲载されました。
论文情报
论文タイトル
Grow or die: A 49-year growth history of a Japanese warm-temperate tree species.
掲载雑誌
Ecosphere
顿翱滨番号
着者
山田俊弘※ 広岛大学
相场慎一郎 北海道大学
大洼久美子 信州大学
铃木英治 鹿児岛大学
前中久行 緑の地球ネットワーク
永野正弘
中岛佳徳 中岛树木クリニック
永野 彻 神村学园高等部
石原正恵 京都大学
安松弘毅 京都大学
泽田佳美 森林総合研究所
川岛和义 緑の地球ネットワーク
高见邦雄 緑の地球ネットワーク
※筆頭着者
背景
生物学では伝统的に、観察することが重要视されてきました。しかし、あたりまえですが、50年の森の挙动を観察するには、50年の歳月を要します。私たちは、直接観察を辛抱强く约50年间続け、寿命の长い树木の生きざまを明らかにすることに成功しました。これだけ长く森林を観察した研究は、本研究以外世界でもほとんどありません。
本研究では、熊本県水俣市の照叶树林を1966年から2015年までの49年间観察し、この森の最优占种であるコジイ194本の、49年间の成长と生残を调べました。1991年第19号台风(通称リンゴ台风)#1の强风にあおられ、多くの个体が枯死しました#2。一方、台风を生き延びた个体は、台风でなぎ倒された个体が占有していた空间を夺うことができたので、台风后に急速な成长をみせました。また、台风后に、多くの个体が芽生えました。これは、台风前には観察されなかったことです。つまり、台风はコジイにとって、成长のチャンスであり、次世代の更新の契机だったのです。
#1 リンゴ台风以外で、この森に大きなインパクトを与えた台风はありませんでした。
#2 风倒による枯死が多数観察されましたが、土砂くずなどは発生しませんでした。
研究成果の内容
台风の袭来は偶然かもしれませんが、チャンスをものにできるかは、台风前の木の大きさが重要でした。台風前にすでに林冠(森林最上部の葉群層)に達しているか、もう少しで達するくらいまで育っていた個体だけが、台風後の急速な成長を実現できていたのです。大きく育った林冠木(林冠を形成する木)を成長のトップランナーだとすると、それに食らいつき、台風前に成長のトップ集団を形成できていた個体だけに、台風後のチャンスが回ったと理解できます。
地球温暖化に伴い、日本では、台风の再来间隔が短くなり、台风の大きさが大きくなることが予想されています。私たちの研究は、地球温暖化が、コジイや、ひいては森林生态系に大きな影响をもたらすだろうことを示唆しています。台风と関连した気候変动を考えるうえでも、私たちの研究成果は重要です。
今后の展开
もちろん、次の50年に向けて、観察の歩みを続けていきます。长期観察は、一人の研究者だけで完结できません。研究のバトンを、世代を超えて繋げることで、やっと达成することができます。研究のバトンを切らさぬよう注意しながら、世代を超えて研究を続けます。
この森には、コジイ以外にも数十种の树木种が生育しています。コジイで得られた知见が、他の种にも当てはまるのかについても気になるところです。私たちは、この点についても研究を进めています。
参考资料
この研究に関する动画

写真1 ツブラジイ(=コジイ)の坚果と殻斗(広岛県产)「広岛大学デジタルミュージアムより
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写真2 调査地に生えるコジイ コジイはドングリを生らす木の仲间です。大きく育ち、京都府の迎接寺跡に生えるシイは、干直径が255cmに达しています。日本の西南部の照叶树林で普通に见られます。

写真3 リンゴ台風に倒されたコジイ。前中久行 提供。

図 コジイ194本の成长の轨跡。一本の线が一个体の成长を示す。コジイは3つの大きさに分类した。高木层は、高さ约20尘の林冠に达した木からなる。この层の个体を、直径25肠尘以上の木と定义した。亜高木层は、高木层のすぐ下に位置する。この层の个体を、直径10肠尘から25肠尘の木と定义した。低木层は、直径10肠尘以下の木と定义した。
调査は1966年に开始した。この森は、1991年に台风のかく乱を受けた。すべての低木层のコジイは、台风袭来前に枯死した。同じ时期、高木层の个体は、ほとんど枯れなかった。
台风が事态を一変させた。台风の强风をもろに受けた高木层では、ほとんどのコジイが枯死した。一方、亜高木层のコジイも安全ではなかった。风で倒れた高木层の下敷きになり、多くの亜高木层のコジイも枯死した。
台风を生き延びた亜高木层のコジイは、急速な成长を开始した。
2015年の高木层のコジイ全18本に注目すると、そのうち16本が1966年时点では亜高木だった。一方で、1966年から2015年まで生きながらえた高木层のコジイは、32本中わずか2本だった。
台风のかく乱后、10年くらいたつと、新しいコジイ个体が现れ始めた、これは、台风かく乱前には観察できなかったことだ。台风が、更新(世代交代)の契机とであることも分かる。