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プロジェクト候补地を视察する内田さん(右)
有用植物栽培を通じてスリランカで平和ネットワークを広げたい
2020年6月、大学院国際協力研究科(現: 人間社会科学研究科) 博士課程の内田涼さんと梶下佳成さんが現地スタッフと協力し、スリランカ民主社会主義共和国でNPO法人マザーランドランカ(Mother Land Lanka: MLL)を設立しました。このNPOは、四半世紀におよぶ同国の内戦の主戦場であった北部州において、スリランカの伝統医療であるアーユルべーダで用いられているハーブなどの有用植物の栽培を通じ、持続可能な開発を促進し、平和構築につなげていくことを目的としています。この活動理念に賛同した大手化粧品メーカー株式会社アルビオンの支援を受け、2020年9月から現地での活動を本格的にスタートさせたお2人に、NPO設立の経緯や今後の活動についてお話を伺いました。
マザーランドランカ(惭尝尝)を立ち上げた経纬について教えてください。
内田さん>それにはまず、スリランカの歴史についてお话をしておく必要があります。スリランカでは、1983年から2009年まで内戦が続き、これにより民族や宗教を基盘としたアイデンティティ集団间の境界线が明确となり、国を大きく分断してしまいました。また、内戦の主戦场であった北部州地域、とりわけ政府と反政府势力の支配境界线があったワウニヤ県は开発から取り残されてしまいました。
私は、2017年から2018年まで、平和と纷争研究を行うため、スリランカのコロンボ大学に留学をしていました。その际、现地调査で访れたのが、このワウニヤ県です。そこで、仕事がなくて出稼ぎに行く若者や、教育を受ける机会を得られず定职に就けないでいる元兵士の若者たちを数多く目にしました。
闻けば、内戦终了直后は、纷争后の国の再建や復兴を支援する国际プロジェクトで仕事を持っていた人达も、内戦终了から10年経った现在、そのプロジェクトは终了してしまい、生活するのに十分な仕事に就けない状况が続いているとのことでした。
この调査をきっかけに、私の中で、内戦后のスリランカにとって重要なのは、持続性を见据えた平和と开発であり、そのためには5年、10年よりも更に长く持続的な活动を行っていくことが必要だという思いが强くなっていきました。
そこで着目したのが、スリランカの伝统医疗であるアーユルべーダで用いられている有用植物の栽培や使用方法、その効果についてです。伝统医疗であるにも関わらず、国内ではこれらの植物について包括的な研究と开発が进んでおらず、近年、植物の大半を海外からの输入に頼っている状况でした。これらの植物を现地の人たち自身が栽培し、有用植物栽培をこの地域の产业とすることで、有用植物を适切に保全すると同时に、安定した雇用机会を创出することができると考えたのです。
この留学以前、私は広岛大学で国际社会と地域社会の协働の视点から、国际平和构筑の理论やそのケースを研究してきました。自分の研究で得た知识を元に、スリランカの平和に少しでも贡献したいという思いが强くなり、マレーシアで日系食品製造业新规工场を立ち上げた経験のある、同じ研究科の梶下さんに声をかけ、狈笔翱法人を设立を决意しました。
梶下さん>
国际协力研究科に入る前、社会人として日系食品製造业に勤めておりました。2013年から2015年までの间、マレーシアの工场立ち上げ(初出荷まで)を行い、工场建设时の工程管理、机械?原料等の输送计画、贩売计画と生产计画を担当しました。生产が始まってからは、スタッフはマレー系、インド系、中国系と多种多様で、それぞれの文化?言语が违うため色々と苦労しましたが、お互いの文化の违いを考虑しながら作业していきました。また、海外での政府関係者、バイヤー、サプライヤーとの折衝もあり、东南アジアでプロジェクトを进めていくうえで必要となる対応を学びました。これらの経験が、他民族と协力していく惭尝尝の活动で役に立つのではないかと考え、参加する决意となりました。
纷争解决学専攻の内田さん(左)と开発経済学専攻の梶下さん(右)
アルビオンからのサポートを受けるきっかけは何だったのでしょうか?
留学中、スリランカで活动している日本公司をインターネットで探している时に、现地で有用植物の研究を行っているアルビオンの活动を知りました。现地の人が有用植物を栽培し、地域产业の创出に取り组むという私(内田さん)の构想について、担当の方が丁寧に话を闻いてくださった上で賛同して顶き、支援へとつながりました。
その後、ワウニヤ県で現地の村人の方と意見交換を行い、同エリアでの産業創出を決定しました。2020年2月頃から、内田?梶下と現地スタッフでMLLをNPOとする登録を始めるとともに、有用植物栽培に向けて現地の行政官や村人と意見交換を重ね、有用植物栽培プロジェクトをスタートさせる準備を進めてきました。その中で、スリランカ中央?地方政府、コロンボ大学附属伝統医学研究所(Institute of Indigenous Medicine: IIM)」の教授、アーユルベーダ医師らの協力を得て、産学官が連携した大きな平和構築ネットワークを構築してきました。
惭尝尝が活动を行っていくにあたりアルビオンからの支援を受け、惭尝尝プロジェクトで栽培?収穫した植物はアルビオンに提供されます。アルビオンは、プロジェクトで大切に育てた品质の良い有用植物をスリランカ产植物由来の化粧品原料の开発に活用する予定です。
2020年9月より、现地での活动をスタートさせたそうですね。
「スリランカ固有の有用植物栽培を通じた平和构筑活动」を北部州?ワウニヤ県で本格的に始动します。ワウニヤ県では、仏教徒中心のシンハラ人、ヒンズー教徒中心のタミル人、ムスリムという3つの民族から农家30轩を集めて有用植物の栽培を依頼する予定にしています。9月には、住民间の意见交换会を开き、协力农家のホームガーデンの视察が完了しました。10月上旬にアルビオンから惭尝尝のプロジェクトで使用する数种类の有用植物がワウニヤ県に届けられるので、现地スタッフと农家たちとで一绪に植え付けを行います。収穫时期は、生育の早いもので3か月后、遅いもので半年后と想定しています。异なる民族が、伝统的な植物を协力して育てることで相互理解が深まることが期待されます。
自分たちで栽培を行うことで、生活が安定し、得た利益によって、スリランカの他の人も救うことができます。目に见える成果は、现地の人の大きなモチベーションになります。私达は、そのようなソーシャル?ビジネスを目指しているのです。
スリランカでの活动とお2人の大学での研究はどのように结びついているのでしょうか?
现在ワウニヤ県には、再度纷争に引き戻すような目立った対立というものはありません。顕在的な武力や暴力を伴う対立やもめ事はありませんが、スリランカ全体で捉えると、选挙やテロリズムで民族や宗教问题が高まったときに、厂狈厂等で过激な思想やヘイトスピーチが生じることはあります。
民族や宗教を基盘とした「违い」から生まれる潜在的な対立やもめ事は、存在している可能性があります。たとえ内戦が终了していても、それは武力衝突がなくなったというだけで、民族や宗教からなるアイデンティティ间で和解?共生できていない、まだ高次の平和に达してはいない、と私たちは考えています。惭尝尝の活动では、民族や宗教集団间のわだかまりを取り除けたか、相互理解を少しでも进められたかなどについて研究し、研究结果に里付けられた政策决定を行うことで、平和构筑を一歩一歩着実に実现していけると考えています。

マルマドゥワ村にて コミュニティミーティングを開催 (2019年3月)

ワウニヤ南地区長ジャーナカ氏とプロジェクト候補地を視察 (2019年3月)
今后の目标について教えてください。
私たち自身はコロナの影响でスリランカに行くことができず、当面オンラインでの活动となりますが、入国制限が解除された后、自分たちも现地入りし、プロジェクトに参加している村びとから闻き取り调査をし、プロジェクトの进捗や问题点を调査したいと考えています。
また、今提携している公司はアルビオン1社のみですが、惭尝尝の活动理念に共感してくれる公司ともっとたくさんつながって、平和のネットワークを広げていきたいです。
(2020年9月取材/広报グループ厂)
広岛大学広报グループ