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【研究成果】ジェームズ?ウェッブ宇宙望远镜により合体银河の巨大エネルギーを担う?エンジン?を特定

本研究成果のポイント

  • 世界最高の解像度と感度をもつジェームズ?ウェッブ宇宙望远镜(*1)を用いることで、合体途中の银河のエネルギー源の正确な位置を世界で初めて突き止めました(図1)。
  • このエネルギー源はハッブル宇宙望远镜でさえも発见できず、2022年7月に観测开始されたばかりのジェームズ?ウェッブ宇宙望远镜を用いて、今回はじめて特定することができました。
  • このエネルギー源は非常に小さな领域に集中して存在し、しかも银河中心から外れた场所に位置するのにも関わらず、合体银河(*2)全体からのエネルギーの少なくとも70%はこの领域から放射されていることが分かりました。

 

概要

 本学宇宙科学センター助教?稲见华恵、研究员?トーマス?ボーン、大学院生?星冈骏志を含む国际研究チームは、7月に観测开始されたばかりのジェームズ?ウェッブ宇宙望远镜を用い、近傍宇宙にある合体银河滨滨窜飞096を调査し、この银河の「エンジン」とも言えるエネルギー源の正确な位置を世界で初めて突き止めました。12年前に稲见助教は既にこの银河には私たちの目には见えない巨大な「エンジン」を持つことをスピッツアー宇宙望远镜の赤外线観测により発见していましたが(図1右上)、最先端の赤外线望远镜ジェームズ?ウェッブでの観测により、この「エンジン」が位置する场所を初めて正确に捉えることができたのです(図1右下)。12年越しにようやく、ハッブル宇宙望远镜やスピッツアー宇宙望远镜でさえも叶えなかった成果を得ることが出来ました。
この「エンジン」は银河全体のエネルギーを支配するほどの巨大なものでありながらも、そのサイズは非常にコンパクトで小さな领域に集中しています。その大きさは570光年以下と见积もられ、银河全体の大きさ65,000光年の1/100以下の小さな领域に、银河全体の最大70%に当たるエネルギーが詰まっています。更に面白いことに、このエネルギー源は银河中心から外れた场所に存在しています。银河同士が正面衝突している境界面でこういった赤外线でしか见えないエネルギー源が発生することは以前から知られていたのですが、滨滨窜飞096のように外れた场所に位置するものは珍しく、今后の调査でその成因の解明が期待されます。

発表论文

  • 论文タイトル
    GOALS-JWST: Unveiling Dusty Compact Sources in the Merging Galaxy IIZw096
  • 着者
    Hanae Inami*, Jason Surace, Lee Armus, Aaron S. Evans, Kirsten L. Larson, Loreto Barcos-Munoz, Sabrina Stierwalt, Joseph M. Mazzarella, George C. Privon, Yiqing Song, Sean T. Linden, Christopher C. Hayward, Torsten B?ker, Vivian U, Thomas Bohn, Vassilis Charmandaris, Tanio Diaz-Santos, Justin H. Howell, Thomas Lai, Anne M. Medling, Jeffrey A. Rich, Susanne Aalto, Philip Appleton, Michael J. I. Brown, Shunshi Hoshioka, Kazushi Iwasawa, Francisca Kemper, David Law, Matthew A. Malkan, Jason Marshall, Eric J. Murphy, David Sanders, and Paul van der Werf
    *責任着者:広島大学宇宙科学センター助教?稲見華恵
  • 掲载雑誌
    The Astrophysical Journal Letters(2022年11月15日発刊)
    论文リンク先

背景

 宇宙は一见すると不変不动のように见えますが、実际には银河同士が衝突して相互作用を起こしダイナミックに変化し続けてきています。宇宙にある银河の大半は衝突を経験しながら进化しているのです。银河衝突が起きた际には、激しい星形成や巨大ブラックホールが形成されたり、より大きく成长したりと、银河の性质に大きな変化をもたらします。宇宙を理解するためにはこの変化を知る必要がありますが、衝突の际に圧缩された银河がもつガスやダスト(宇宙尘)により紫外线や可视光线は遮断され観测できず、赤外线やより波长の长い光を用いなければ観测することが出来ません。
 本研究チームでは、近傍宇宙にある4つの衝突银河を2022年7月に観测が开始されたジェームズ?ウェッブ宇宙望远镜を用い、世界最高の解像度と感度の赤外线観测を行いました(図2)。そのうちの1つである滨滨窜飞096という衝突银河を撮像観测により得た成果を本リリースで绍介しています(図1)。

研究成果の内容

 本学宇宙科学センター助教?稲见华恵、研究员?トーマス?ボーン、大学院生?星冈骏志を含む国际研究チームは、7月に観测开始されたばかりのジェームズ?ウェッブ宇宙望远镜の早期科学観测プログラム(*3)により、世界に先駆けて近傍宇宙にある衝突银河の観测を行いました(図2)。このプログラムでは4つの衝突银河を対象にしていますが、そのどれもが、人间の目に见える可视光线ではそれほど明るく辉いていませんが、赤外线では非常に明るく见える高光度赤外线银河です。赤外线の放射源やその成因や性质は未だに分かっていないことも多く、この観测プログラムではその解明を目指しています。
 観测ターゲット4つのうちの1つの银河である滨滨窜飞096という衝突银河は、稲见助教が12年前にスピッツアー宇宙望远镜を用い、ハッブル宇宙望远镜でも见えなかった巨大な赤外线エネルギー源の存在を特定していました(*4)。しかし、ハッブル宇宙望远镜は中间赤外线よりも长い波长での観测ができず、一方で、赤外线が観测できるスピッツアー宇宙望远镜では空间分解能が足りず、放射源の正确な场所やその大きさまで特定することは出来ませんでした(図1右上)。
 今回、ハッブルよりも镜の直径が2.5倍大きく、スピッツアーよりも感度が100倍高い、世界最高の解像度と感度の赤外线観测ができるジェームズ?ウェッブ宇宙望远镜を用いることで、滨滨窜飞096のエネルギー源である「エンジン」の正确な位置を世界で初めて突き止めました(図1右下)。直径6.5尘もの大きな镜をもつ世界一大きな赤外线宇宙望远镜であるジェームズ?ウェッブだからこそ今回の発见が可能だったのです。ジェームズ?ウェッブは太阳と地球の重力で钓り合いが取れる第2ラグランジュ点にて観测を行っています。
 兴味深いことに、银河のエンジンとも言えるこのエネルギー源は、非常にコンパクトで小さな领域に集中していることも本研究で分かりました。そのサイズは大きくても约570光年と见积もられていますが、银河全体の大きさ65,000光年と比较すると1/100以下でしかありません。これだけ小さな领域で、最大で银河全体がもつ70%もの赤外线エネルギーを占めるのです。
 しかも、この领域は银河中心から外れた场所に存在しています。これまで见つかった衝突银河では、银河中心や衝突している境界面でこういった赤外线による巨大エネルギーが発生しているケースがほとんどでした。今回の衝突银河滨滨窜飞096のように、外れた场所に位置するのにも関わらず、银河全体からのエネルギーの大半がこの领域から放射されていることは非常に珍しいケースです。ジェームズ?ウェッブ宇宙望远镜による分光観测のデータ解析を进め、このエネルギー源の成因や性质の解明を目指しているところです。

 

今后の展开

 小さくとも莫大なエネルギーをもつ「エンジン」が银河の中心から外れたところに存在するのは珍しく、その起源が何なのか、どのような性质のガスやダストをもつのか等、ジェームズ?ウェッブ宇宙望远镜による今后の観测结果により、その解明が期待されています。

参考资料

本研究は、近傍宇宙の高光度赤外线银河サーベイ観测を行う骋翱础尝厂プロジェクト(*5)のジェームズ?ウェッブ宇宙望远镜の早期科学観测プログラムの一贯として行われました。このプログラムでは、4つの衝突银河をターゲットにジェームズ?ウェッブによる観测を行っており、本研究での対象である滨滨窜飞096はそのうちの1つです(図2)。

図1. 衝突银河滨滨窜飞096のエネルギーを担う「エンジン」の位置をジェームズ?ウェッブ宇宙望远镜を用いて本研究で発见しました。左図は紫外线と可视光线で见た银河で、このエネルギー源はダスト(宇宙尘)隠されて见えませんが、右図の赤外线観测によって初めてその存在が确认できました。右上図は12年前にスピッツアー宇宙望远镜により得られた赤外线画像で、右下図が今回ジェームズ?ウェッブ宇宙望远镜で得られた赤外线画像です。

図2. 本研究は、この図で示す4つの衝突银河を観测するジェームズ?ウェッブ宇宙望远镜の早期科学観测プログラムの一贯として実施されました。银河衝突によって星形成やブラックホールがどのように形成され进化するのか、また、银河の性质がどのように変化するのかを调査します。滨滨窜飞096の分光観测も実施され、巨大なエネルギーの成因や性质の解明を目指しています。

语句説明

(*1) ジェームズ?ウェッブ宇宙望遠鏡
2021年12月に打ち上げられた世界最大の宇宙望远镜。ハッブル宇宙望远镜の约2.5倍である直径约6.5尘の主镜を持ち、近赤外线からハッブルでは観测できなかった中间赤外线まで観测することが出来る。2022年7月より科学観测が开始された。

(*2) 合体銀河
重力作用により衝突し合体して1つとなった银河。小さな银河が合体を繰り返して大きな银河になり、现在の宇宙を构成すると考えられている。私たちが住む银河系と隣にあるアンドロメダ银河も约40亿年后に衝突すると予想されている。

(*3) 早期科学観測プログラム Early Release Science:

(*4) Inami et al. 2010, The Astronomical Journal, 140, 63

(*5) GOALSプロジェクト Great Observatories All-sky LIRG Survey:

 

【お问い合わせ先】

広岛大学 宇宙科学センター

助教 稲見華恵(いなみ はなえ)

Tel: 082-424-3468 (代表)    FAX: 082-424-0717

E-mail: hanae*hiroshima-u.ac.jp

(注: *は半角@に置き換えてください)


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