
「バイオのつぶやき」を読まれる方には、生物系の勉强をしている学生さんが大势いらっしゃると思います。工学?农学?理学?医学、分野は违っても生物学の教育カリキュラムには、顕微镜観察の実习が必ずや含まれていると思います。顕微镜観察というのは好き嫌いが分かれる実习の代表で、好きな人は何时间でも顕微镜を覗いているだろうし、苦手な人はできれば避けて通りたいと思ったかも知れません。ほとんどの生物系のカリキュラムに组み込まれているという事は、顕微镜観察が基础的でありかつ重要な知识?技术である事を意味します。最新の科学雑誌には多数の顕微镜写真が掲载されている事からも、顕微镜技术の重要性は感じ取れます。しかしながら、顕微镜観察の重要性を头では理解していても、顕微镜を使ったイメージング技术を自分の研究に取り入れるのに抵抗を感じる人も多いと思います。
顕微镜技术の敷居を高くする最大の理由は、顕微镜の操作にはマニュアル通りにやっても上手く行くとは限らない职人芸的な要素が含まれる事ことでしょうか? 不得意な人は、ピントを合わせてとりあえずの像を出す事すら困难かもしれません。画质を向上するには、光轴やコンデンサーの微妙な调整も必要ですが、「良い像とは何か?」の基準を曖昧に感じるかもしれません。蛍光顕微镜の场合は、适切なフィルターを选択する必要もあります。苦手意识のもう一つの原因は、実习で行う画像のスケッチでしょうか? 研究室における実际の研究の场でスケッチした画像をデータとして使う事はまず考えられないですが、実习では沢山のスケッチを求められる场合が多いと思います。颁颁顿カメラで撮影すれば简単に済みますが、スケッチに适した像を抽出し手を动かして记録する作业が记忆に役立つ面もあります。とはいえ、私自身も自分が学生だった顷はスケッチをずいぶんと烦雑に感じました。电子机器はずいぶん安価になり実习でのスケッチは过去の遗物になるかもしれませんし、残るかもしれません。実习の目的をどう设定するか、という事でしょうか。
幸いなことに、メカトロニクスの进歩により顕微镜の自动制御が进み、各社からは洗练された顕微镜システムが供给され、职人芸の必要性は大幅に低下しました。デジタルで容易に画像を记録可能なのはいうまでもなく、レーザー顕微镜等を用いて细胞の叁次元イメージをリアルタイムで取得可能になり、光の波长で规定される解像度の光学限界すら高度な计算処理等で超越しつつあります。この日进月歩の状况下で、イメージングが関係する研究はどのように変化していくのでしょう。重要なキーワードは、础滨だと思います。
ご存知の方も多いと思いますが、deep learningという自己学習型のアルゴリズムの出現によりAIの能力は飛躍的な進歩を遂げつつあります。多数の画像を取得し、そこから共通性を規定する特徴量を抽出する、といった作業はdeep learning と相性の良い分野です。例えば、病理検査で熟練の観察者が腫瘍を判定する作業などは、AIの導入によりどんどん自動化されるでしょう。AIにより自動制御された顕微鏡を用いて高速に病理組織の画像を取得し、ビッグデータ解析から構築したデータベースを利用して自動診断する。そんな時代は間近にせまっています。人間の仕事が機械に奪われるようにも感じられますが、見方を変えれば、機械で出来る仕事は機械にまかせて、人間にしかできない創造的?生産的な仕事にシフトするという事です。アカデミックな研究の範疇においても、アウトプットが想定できるプロジェクトでは、AIによる観察条件の最適化、無人処理でのデータの大量取得、ビッグデータ解析といった流れからの研究推進が期待できます。例えば、特定の生理条件に対応するタンパク質を二次元電気泳動で探すように、ある特定の条件で出現する細胞内微細構造を探索するといった作業は、近い将来に半自動的に遂行可能になるはずです。脳細胞の全ての接続を解明しようというコネクトーム研究も動き出しています。発酵工学の分野を考えると、培養条件によってミトコンドリアや液泡の形態異常示す酵母の変異株を自動的にスクリーニングする、そんな実験計画も可能になるでしょう。
次世代シーケンスの普及はわかりやすい例ですが、人海戦术を小人数で代替するパラダイムシフトが起きた时には、「何を観察するか?」の研究立案能力が一番重要です。现存する仕事の半分は础滨に置き换わるという予测も出ていますが、技术者?研究者として生き残るには生物学全体の动向を俯瞰できる幅広い知识と、セレンディピティとの出会いを见逃さない感性を磨くことが重要です。学生?ポスドクの期间に生物学における教养を积む必要があると言い换えられるかもしれません。