
学部4年次に研究室配属されて以来、指导教员および様々な先生方からの薫陶やアドバイスをいただきながら现在に至っています。その间、研究テーマはもちろんのこと、研究分野を含めて色んな転机もありました。今回のコラムでは、研究の転机となった「海外留学」と「ノーベル赏受赏者とのふれあい」について绍介させていただきます。
1.海外留学
博士课程后期に进学后、古细菌のもつ特异な大环状エーテル型脂质の全合成およびその膜机能に関する研究を引き続いて行っておりました。博士论文の目処が立ちつつあった博士课程后期2年次の夏顷、指导教员の先生から「海外で研究を行ってみてはどうか?」というアドバイスをいただきました。博士课程后期への进学を决めたときには、どっぷりと研究者人生につかりたいと思っていたので、渡りに船のご提案をいただけたと思っています。留学先は米国ワシントン大学理学部化学科で、微生物由来抗生物质の生合成研究を精力的に展开されている研究室でした。学生时代は上述の通り有机合成の研究テーマであり、大肠菌の培养はおろか、寒天培地を作ったことすらありませんでした。バイオらしいことといえば、膜脂质取得のために行った超好热性古细菌Methanocaldococcus jannaschiiの嫌気培养のみでした。
自分の研究スキルを生かせるのかどうか、はなはだ不透明な感じでしたが渡米しました。大肠菌でのクローニングはもちろんのこと、放线菌の培养も新鲜な気持ちで取り组みました。抗生物质の生合成研究に於いては、重水素标识化合物の合成および取込実験も重要であり、学生时代のスキルはここで大いに生きることになりました。学生时代の研究室もそうでしたが、「生命现象を化学の视点で研究する」ことをモットーとしているラボだったので、居心地がよかった印象があります。
博士课程后期学生の方には、是非海外留学をおすすめします。日本の方がいい器械が揃っていることも多いのですが、人的交流の観点において、何事にも替え难い経験が得られると思います。留学から15年以上経过した现在でも、当时のラボメンバーとは国际学会などでの交流を持てております。

写真1 ワシントン大学のキャンパス
2.ノーベル赏受赏者とのふれあい
ご縁があって2002年4月に本学大学院先端物质科学研究科の助手として着任し、はや14年が経过しました。放线菌の遗伝子破壊株构筑など、遗伝学的研究手法を学びながら、学生?ポスドク时代の研究スキルを融合させて研究展开しております。この间、お二人のノーベル赏受赏者との交流を持つことが出来たので、それについて绍介したいと思います。
まず2009年ノーベル化学賞受賞者?Ada Yonath先生です。Yonath先生は、私たちの研究材料である放線菌Streptomyces rocheiの抗生物质に注目され、2つのタンパク合成阻害剤のシナジー効果の解析を行いました。両化合物が共存する场合にリボソームの结晶构造が変化することを见出し、これがシナジー効果の正体であることを突き止められました。先生との共同研究の开始はご受赏前だったので、受赏の一报を闻いたときは大変感激しました。その后、本学で讲演をしていただき、研究ディスカッションを含め、有意义なひとときを过ごせました(写真2)。

写真2 Ada Yonath先生を囲んで
もうお一方は、昨年のノーベル生理学医学賞を受賞された北里大学?大村 智先生です。小生は放線菌学会や農芸化学会を通じて先生のご研究をよく存じ上げていたのですが、2015年10月5日に目に飛び込んできた「大村先生ノーベル生理学?医学賞ご受賞」のニューステロップは、未だに脳裏に焼き付いております。折しも当時は日本放線菌学会の学会誌編集委員長を拝命しており、先生のノーベル賞受賞記念特別号の編纂に携わることができ、大変光栄でした。写真は本年1月の放線菌学会理事会新年会の集合写真ですが、記念の一コマとなりました。

写真3 大村 智先生を囲んで
「谁もやっていないことに挑戦する」のが研究の醍醐味ですが、それを达成するのがいかに大変か、ということをお二人から学んだ気がします。研究の道のりは长く、様々な分岐点にぶつかりますが、「生命现象を化学の视点で探究する」ことを常日顷から心がけ、学生さんたちと日々新しい成果を発掘していこうと思います。