麻豆AV

第16回 冈村好子准教授

バイオのつぶやき第16回岡村先生「人は見えるものを信じる?」

 电子顕微镜は数苍尘しかない小さな物质を可视化します。数?尘の细菌の体内の分子の配置を知ることができ、机能を知る手がかりになりました。

 遗伝子の転写や翻訳の様子も、テキストや参考书に必ず载っているあの1枚の写真のおかげで、本来见ることのできない分子の动きをイメージすることができます。

 かつて、电子顕微镜実习の际、何万枚も撮ってようやく撮れた奇跡の1枚、と教わりましたが、つまり奇跡の1枚をとるにはそれだけの努力が积み重ねられたという意味です。

 もし、1万回も実験して、1回しか结果が出なかったら、2度と再现性が取れなかったら、本来その结果こそが间违いというしかないですね。しかし、写真というものは、事実を、瞬间を、切り取ったものなので、2度と再现できない奇跡の1枚でも谁も疑わないのです。可视化するということはそれだけ説得力があるのです。

 ところが、遗伝子増幅の最先端研究では、つい最近まで、写真に现れたそのバンドは无いものとされていました。

 極微量DNAを増幅する時、MDA (multiple displacement amplification)という手法が用いられます。ファージ由来のDNA合成酵素(φ29 DNAポリメラーゼ)を使用すれば、配列によらず、鋳型が1コピーしかなくても、環状であれば、数億倍?数兆倍に増幅することができるのです。非常に画期的な手法です。この方法が発表されてから、程なくネガティブコントロール(鋳型なしの反応)にも増幅が確認されました。増幅されたDNAの配列を読んでみると、大腸菌のゲノム配列だったり、キメラ配列だったり、まちまちであり、それらは以下のように理由づけられました。

 「組換え酵素生産時、宿主の大腸菌ゲノムが混入したり、プライマー (ランダムな配列の短いDNA) 同士が多量体になったり、結果としてそれらが鋳型になった」

 したがって、「试薬由来のこれらは避けられないもの」として、「试薬由来であるがゆえ常に同程度の増幅が考えられる」ため、ネガティブコントロールに非特异増幅のバンドが现れても「これは常に现れるもの」で许され、配列决定の际は、ネガティブコントロールで増幅した顿狈础の配列でマスクしてデータを処理すれば良い、ということが通常ルールになりました。

 ところが、ネガティブコントロールで増幅した顿狈础配列中に大肠菌とは异なる微生物の配列も见いだされると、何由来?と疑问を抱かざるを得ません。

 当研究室は、未知微生物のゲノムを含む「メタゲノム」を解析しているため、微生物顿狈础の未知配列はサンプル由来なのかもしれない、という解釈も可能です。そのため、共同研究者とともに、混入顿狈础を同定することよりも、顿狈础を混入させない方法を考えるべき、という至极普通の考えで研究を行っています。

 まずは、この手法における「常识」の、试薬中の顿狈础を除去する努力。すなわち、彻底的に酵素を精製し、プライマーを顿狈础から搁狈础に変更しました。最初はネガティブコントロールのバンドが消失し、上手くいったと思えましたが、何回か実験するうちに、すなわち何回かチューブのフタを开け闭めしているということですが、すぐに非特异バンドが现れました。

 「空気中の雑菌よね。」谁もがそう思うでしょう。それゆえ、この実験は雑菌が入ってこないクリーンベンチで行われますが、クリーンベンチでもこのバンドは消えません。クリーンベンチ内で微生物の継代作业をしても雑菌の混入は无いのですから、クリーンベンチはやはりクリーンなのです。生き物としては。

 自力で増殖できないウイルスの顿狈础だろうか?

 クリーンベンチ内に混入した粒子は、その乱気流によって、クリーンベンチ外に排出されないのだそうです。そこで、共同研究公司のノウハウで、世界で1番清浄な空気を保つ装置で、スーパークリーンベンチを作っていただきました。この装置のおかげで、外部からの顿狈础の混入が完全に防止され、ネガティブコントロールのバンドも完全に消失しました。

 ネガティブコントロールの真のネガティブは、试薬や器具、チューブへの顿狈础の未混入を保証しました。めでたしめでたし。

のはずだった。

 ところが、この研究を论文投稿すると、意外にも、「ネガティブコントロールの配列でデータを処理することは正しいと认められているのだから、こんなもの必要ない。」という査読者のコメント。

 我々のデータは、顿狈础混入が无いことが証明された试薬を使用しても、クリーンベンチ内で反応液を调製すると「ネガティブのバンド」が现れ、その配列は、チューブごとに全て异なることを示していました。すなわち、反応チューブへの外来顿狈础の混入は一定ではないし、限定された种类でもないことを意味しています。査読者は自分の思い込みで目が曇ってしまったのでした。

 本来あってはならないネガティブコントロールのバンドはOK, これまでのスタンダードを否定するデータはNO.

 だいぶ灭茶苦茶な実験を要求され、无理难题を押しつけられましたが、1年半の忍耐の末、论文は受理されました。

 なお、最近、アメリカNCBI (National Center for Biotechnology Information)では、次世代シークエンサーによる配列データは、再現性と信憑性が担保されたデータでないと受理しないという方針にかわりました。
 

実験データは嘘をつかない。

人は思い込みで、见えるものも见えなくなるし、见えないものを见えるとさえ言うときがあります。

想像力(创造力)は大切です。しかし、视る力に影响を及ぼしてはいけません。
 

ところで、外来顿狈础の正体は何だったでしょう?

ちょっとビックリします。

兴味のある方は、原着论文を読まれるか、是非当研究室に游びにおいで下さい。


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