
研究のドライビング?フォース(駆动力)のひとつは游び心ではないかと思っている。それを里付ける科学的発见に最近遭遇した。
环境细菌の多くは鞭毛という运动器官を持っており、水溶液中を泳ぎ回る。彼らはただ闇云に泳ぎ回っているのではなく、常に细胞の周囲の特定の化学物质の浓度を计测し、好ましい物质には集积し、好ましくない物质からは逃避する、という合目的な行动的応答を示す。この行动的応答を走化性と呼ぶ。好ましい物质の多くは细菌の栄养源であるので、走化性は「饵」の探索行动と捉えることができよう。それに加え、自然界では共生する相手、感染する相手を探し出す(たとえば根粒菌が宿主のマメ科植物を探し出す、または植物病原菌が感染相手の宿主植物を探し出す)ことでも重要な役割を果たしていると考えられている。これらの行动は「当たり前」のものとして受け入れられていたが、具体的にどのような分子メカニズムでその行动がなされているかを理解するにはまだまだ研究が必要である。
走化性の分子メカニズムを解明するには当然ながら运动性细菌の走化性の测定が必要となる。走化性は、好ましい物质を含んだガラスキャピラリーに対する行动的応答の顕微画像を観察することで容易に测定することができる(図)。この时、测定のネガティブコントロールとなるのは検定物质を含まない缓衝液で、当然ネガティブコントロールには応答を示さない(はずである)。ところが、Ralstonia solanacearumという植物病原菌は时としてネガティブコントロールにも集积応答を示すことが见受けられた。これはネガティブコントロールの试料を调製するときに何か混ざり物が混入したため、と安易に片付けていた。しかしある时、ふとした游び心から、「ひょっとしたらガラスに由来する物质に走化性応答を示すのではないか」と思うようになった。ネガティブコントロールに対する応答なんて研究の本质からは外れることだけれども、ガラス成分に対する走化性を计ったらと、おもしろ半分に学生をけしかけたところ、なんとガラス成分のひとつホウ酸に强い走化性応答を示すことが分かった。つまり「ネガティブコントロール」ではガラスから漏れ出たホウ酸にR. solanacearumが応答していたことになる。
细菌の走化性の研究の歴史は100年を越えるが、细菌がホウ酸に対して走化性を示すという知见はこれが初めてである。ではなぜホウ酸走化性なのだろう?ホウ酸は植物の必须成分であることが知られている。また、R. solanacearumは根の伤口から植物体内に侵入し、青枯れ病を引き起こす。とするならば、伤害などで伤ついた植物组织から漏れ出したホウ酸を目安にR. solanacearumは伤口に集积し、植物体内に侵入する、というシナリオが考えられる。面白いことに、ゲノムデータベースを検索してみるとR. solanacearumのホウ酸走化性センサーと類似した走化性センサーは植物病原菌にのみ分布していることが分かった。すなわち、ホウ酸に対する走化性は植物感染で重要な役割を果たしていると容易に想像される。これらの研究成果は、Scientific ReportsというNature系の雑誌に公表することができた。
予想外の结果、なんてことはない结果から重要な知见を导き出す。この能力をセレンディピティと言う。自分たちのしたことを「セレンディピティ」だ、というのは面はゆいけれども、それでも游び心を常に持ってセレンディピティを発挥する、これは研究の醍醐味のひとつであり、やはり研究のドライビングフォースになっているとつくづく确信した。

図 细菌の走化性応答
好ましい物质が入っているガラスキャピラリーの开口部に运动性细菌が正の走化性応答を示し、集积している模様。