国立研究開発法人 産業技術総合研究所 活断層?火山研究部門地質変動研究グループ 大坪 誠 主任研究員、地質情報研究部門地球物理研究グループ 宮川 歩夢 主任研究員、国立大学法人 広岛大学大学院理学研究科 片山 郁夫 教授、国立研究開発法人 海洋研究開発機構 高知コア研究所 岡崎 啓史 研究員は、日本列島直下に沈み込むフィリピン海プレート(*1)内に作用する力を解析しました。
结果として、深さ约30~70办尘の位置にあるフィリピン海プレート内に作用する力の向きに场所によってばらつきがあることから、沉み込むプレート内部の水の流れやすさに空间的な违いがあることを见いだしました。
プレート内部の水の流れやすさは、沉み込むプレ-トから放出される水の量とプレート境界付近での水の溜まり方に大きく影响し、この付近での地震の起こりやすさにも影响すると考えられます。プレート境界付近に大量の水が存在すると、地下の岩石の破壊に达するまでの摩擦が大きく下がり、数多くの微小な亀裂の连锁的な破壊、いわゆる、ゆっくり地震(スロー地震)(*2)を発生させる可能性があります。
そこで、南海トラフ(*3)におけるスロー地震の分布と本研究で明らかにした水の流れやすさの分布の比较から、南海トラフでプレート境界に供给される水の量の违いがスロー地震発生に関係することが分かりました。今回の结果は、早急な解明が求められている日本列岛直下で発生するスロー地震の発生メカニズムの理解への道筋を示すものといえます。
この成果は、Scientific Reportsにオンライン版で公开されました。
(*1) プレート
地球の表面を覆う、十数枚の厚さ30~100办尘ほどの岩盘のことで、地殻とマントルの最上部を合わせたもの。
(*2) スロー地震
普通の地震による断层のすべり(スリップ)よりもはるかに遅い速度で発生するすべり现象のこと。サイレント地震や、ゆっくり地震とも呼ばれている。数日から数週间、长くは数か月かけてゆっくり起こる。スロー地震には、低周波地震(低周波微动)、超低周波地震、短期的スロースリップ、长期的スロースリップがある。
(*3) 南海トラフ
本州から四国の南の、远州滩の冲合から日向滩の冲合に延びる细长い深い沟(トラフ)のこと。水深が4000尘にもなる。ここでは日本列岛の下にフィリピン海プレートが沉み込んでいる。
スロー地震が発生する场所での沉み込むプレート内の水の流れやすい方向(青色矢印)と地震発生时に岩石にかかる力の向きと岩石中の水の流れやすさの関係を示す図
灰色矢印は、応力の叁つの主応力の向きを示し、矢印の大きい方から、最大、中间、最小となる。