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第106回 「サメの研究者」 岩坂 正和 (2014/11/19)

&苍产蝉辫;境界研究领域にいると、自分の本来のバックグラウンドとは縁远い研究材料を扱うことが多い。私の场合、なぜか水圏生物、特に鱼に縁が深い。自分から鱼の研究をしたいと思って生きてきたわけでなく、たまたま鱼のウロコが人体の骨と同じ细胞をもっていたり、そのヌメヌメした皮肤に美しいフォトニック结晶があったりするのが研究対象とする理由だ。
 20年近く前になるが、前々职场の大学にて数日だけサメの研究者になった。共同研究なので生物学的なことを露知らずとも(サメが鱼でないぐらいのことしか知らず)、生体电磁気学的な立场から协力した。
 私が助手として仕事をしていた研究施设の上野照刚教授のところへ、ある県の水族馆関係者から连络があり、「ダイバーがサメに袭われる事例が多発している。磁気を使って何とか対処できないか?」との相谈があったのだ。さっそく研究室にてプロジェクトが结成され、私は旗振り役に任命された。おそらく大学にサメが来るのは初めてだと思い、学部事务室にサメ搬入届けを提出した。メンバーの院生が「どのくらい大きなサメが来るのでしょう?」と心配そうに言うが、详しい情报はまだない。柔软に対処できるよう、研究施设の玄関、1阶ロビーおよび実験室全てのスペースを贷しきった。
 はたして5月の晴れた休日に、大型水槽つきのトラックが到着した。水槽には窓が取り付けられており中に泳ぐ物体が数体いた。実験用に直径2メートルくらいの円形水槽を用意し、いよいよサメが登场したが、想像したよりも小さく体长1メートルほどだ。水族馆の方いわく“ドチザメ”という。
 そもそも、なぜ「サメと磁気」?と不思議に思われる方が多いだろう。そこには地球生物の歴史がある。サメも地磁気を感じて生きているのだ。多くの生物が地磁気を進化の過程で有効利用するようになったことが知られている。渡り鳥が代表的だ。これら生物が地磁気をセンシングするメカニズムについては近年big journal等での研究報告がめざましい。サメの磁気センサーはやや古典的であり、ロレンチーニ器官という組織がサメの鼻の近く存在して海水中のイオンの流れに対する地磁気の効果(ローレンツ力)を電気的に検出していると理解している(カルミンの報告による)。
 サメの磁気退治のミッションを请け负った研究室では、超伝导强磁场、コイルに大电流を流して瞬间的に磁场を発生する磁気刺激装置、脳から発生する电気や磁気を计测する装置等々、最先端の生体电磁気研究システムがそろっており、数日间の间に研究室総动员にてサメの电磁気的特性に関するさまざまな情报を得た。确か、サメの脳波を测った院生もいたようだ。特に磁気刺激装置は水中に置かれたコイルで発生した磁场がサメの体内に直接电流を诱导するなり、サメのロレンチーニ器官での磁気センシングを狂わせることを期待して実験を进めた。実験の最终段阶では、磁気刺激よりも电流による直接刺激が有効ではないかとの议论になったが、ダイバーに电流が流れたのでは大変だ。研究报告では、长い棒の先に电流刺激用の电极を取り付けた器具が提案された。サメからダイバーの身を守るための紧急装备である。
 常日ごろ、われわれの研究の目标设定は自身で定めていることが多いが、それまで全く縁のなかった分野からの要请に精一杯対応したという点で、大変爽快な思い出だ。
(ちなみに、电流刺激を用いたサメ撃退器具は商品化されているそうだ。上记のサメ実験の成果によるのかどうかは不明。)&苍产蝉辫;

(2014/11/18)


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