40亿年前地球上に生命の起源が诞生してから,様々な絶灭や进化の歴史を経て今の生命系が形作られました.その中で,前の世代の遗伝子を引き継ぎ后の世代に遗伝子を引き継ぐという生命の基本的な営みに长けていた种が长い时を生き延びてきました.すなわち,遗伝子をバトンタッチする能力は长い年月を生き延びるためにはもっとも大事な能力と考えられます.
一方で,学问でも生命のリレーと同じような状况を考えることができます.すなわち,学问は,前の世代から知识を引き継ぎ,状况に合わせて付加価値をつけ次の世代に引き継ぐことが求められる机能のひとつです.なぜ人は勉强するのでしょうか.この答えがすぐにわからない哲学的命题に対する答えのひとつは,生きるために必要な知恵を前の世代から引き継ぎ,自分と次の世代が生きるためではないかと思います.もし勉强が,自分あるいは今生きている世代のためであり,次の世代に引き継ぐことを主たる目的としなかったなら,人が生き延び,今の世の中がここまで発达することはなかったろうと思います.
工学では,喫紧の课题を解决するソリューション型の研究が期待されるようになってきました.しかし,研究スタイルは,前の世代から知恵を引き継ぎ,次の世代へと引き継いでいくリレー型でとらえることも重要です.歴史の中で自分の仕事が位置づけられるには,継承し自分が付け加えた知恵を受け取る人を意识しなければなりません.遗伝子の淘汰の过程と同様,研究分野も风雪に耐えられるかの歴史の审判にさらされています.つまり,心血を注いだ研究といえども受け取る人がいなければ淘汰されるという厳しい现実があります.ある分野が成熟する过程で研究スタイルが世の中のニーズに合わなくなり,そのままの形で知恵を受け取る必要がなくなることもしばしば起こります.しかし,研究成果を抽象化してその本质を普遍的に説明できれば,当初想定していなかった分野でその知恵が生き続ける可能性があります.つまり,研究成果が后の世代で生き残ることを愿うならば,当初想定していなかった専门外の技术の継承者を想定することも必要です.同业の専门家が技术を引き継ぐという暗黙の前提から离れて,その知恵を普遍化しさまざまな分野に応用可能にできれば,自分の世代で技术が消灭することを避けられるかもしれません.
私たちが生きている今の社会の豊かさは,我々よりも前の时代の知恵の结集です.今は豊かさの追求よりも,この世界を持続可能にすることが大きな课题と言われています.环境问题,资源问题などさまざまな课题に英知をつぎ込むことが求められています.このような新しい课题は,今の自分たちのための课题として位置づけるだけでなく,次の世代にその英知を引き継ぎ,长い时间をかけて解决すべき课题として取り组むべき研究と考えることもできるのではないでしょうか.その中で,少しでも次の世代に贡献できるように,具体的な研究课题に取り组みながらも研究成果の本质を探究する意识を持ち続けたいと思います.
(2015/05/14)