「広岛大に移りました」とご挨拶すると、広岛大(先端研)から他大学に移られた先生からは「あそこは研究し易い。研究设备から人材からすべてがそろっている」と激励顶き、広大出身の新闻记者の方からは「え!研究者とは、研究さえできれば生活する场所にはこだわらないのですか!」と惊かれた。
なるほど、移って2年たってみると、学内の設備および学生さんの素養など、研究教育に必要な条件は完璧だ。だが、学内だけではない。キャンパスの外に広がる広島の大自然も懐の深い研究の場所を提供してくれていることを、最近実感している。
鱼がつくる光学结晶の研究は、アクアトリウムの中から瀬戸内海へ飞び出し、呉港から広大の実験船で深海鱼から光学结晶を得て新しい光デバイスに役立てる方向へ进んでいる。また、瀬戸内海のある渔协さんからヒラメやイカを提供して顶き、リフレクチンという特异な光特性をもつタンパク质の研究も始まった。関东にいたままでは出会えなかった研究材料が続々だ。
キャンパス周辺の野山も宝库だ。以前からお知り合いのカエル研究の大家の先生と、カエルの皮肤から得た光学结晶の磁场効果研究を进めている。この4~6月はカエル採集の训练期间として过ぎた。ついでに休日に野山を通ると、かなりの频度でシカに出会う。
関东の大学にいた顷から、インドの光物理の教授とホタルの発光の共同研究を行っており、最近になって「インドのホタルを送るから、その発光器の光学结晶を解析してくれ」と连络があった。この付近のホタルの生息状况を比较のため调査しようと思い、夜、山の中へ出かけた。
イノシシに出会うのは、このときが初めてだった。车のヘッドライトの前に数匹のこどもイノシシ(とてもカワイイ、ウリボウ)が突然现れた。うち一匹が、どうしてもライトの照明から抜けてくれない。车の前をマラソン选手のように走ろうとする。そのとき、数十匹と思われるこどもイノシシの歓声が、周囲の暗闇に沸き上がった。「ピーピーピーピー、、」
近年、ヒトと野生動物の遭遇トラブルが非常に増えている。その生息調査はバイオテレメトリーなどの電波計測での動物の位置把握である。しかし、イノシシのように爆発的にこどもが増える場合、位置追跡は困難だろう。ドラスティックな方法として、遺伝子といっしょに複製するRF無線チップを生殖細胞内に導入できないだろうか。動物倫理およびヒトに悪用されないこと、およびその遺伝子をリセットする技術(ワクチンのようなもの)を、あらかじめ準備しておかないといけない。
(2016/06/30)