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【研究成果】銀河系最大級の連星が太陽フレアの1万倍以上の高エネルギー粒子を撒き散らしている様子を世界で初めて観測! ~定期的な宇宙線粒子加速メカニズムを硬X線で初めて捉えた~

本研究成果のポイント

  • 银河系で最大级(太阳质量の90倍と30倍の恒星)の连星「りゅうこつ座エータ星」を、1-5万电子ボルトの极めてエネルギーの高い(波长の短い)齿线(硬X线注1)で、复数回にわたって撮像?分光観测しました。
  • この结果、お互いの恒星から吹き出す星风(阳子や电子といった荷电粒子の流れ)が激しく衝突した际に、その粒子の一部がほぼ光速まで加速されることを、硬X线で高い精度で観测して初めて明らかにしました。この活动は5.5年周期の连星の公転运动に伴って変动しており、「りゅうこつ座エータ星」は定期的に粒子をほぼ光速まで加速して宇宙空间に撒き散らす新种の宇宙线注2源であると分かりました。
  • 今后は、「りゅうこつ座エータ星」や、その他の大质量の连星を硬X线で観测することで、このような机构で加速された粒子が、どれくらい地球に宇宙线として降り注ぐのか明らかにできると期待されます。また粒子が宇宙空间でどのように加速されるのか、その物理机构を理解するのに役立つと思われます。
  • 今回の成果は、広岛大学も参画するフェルミ?ガンマ线宇宙望远镜で得られた兆候を、现在、世界で唯一の硬X线の撮像能力をもつアメリカの観测卫星狈耻厂罢础搁を利用することで决定づけられました。

概要

このたび、広岛大学大学院理学研究科の高桥弘充助教、アメリカ狈础厂础ゴダード宇宙飞行センターの滨口健二研究员ら、日本とアメリカ他の国际共同研究グループは、银河系で最大级の质量の连星「りゅうこつ座エータ星」を、硬X线で4年间にわたって复数回観测しました。利用したのは、1万电子ボルト以上の硬X线を集光できる望远镜を初めて搭载した狈耻厂罢础搁卫星です。この卫星は现在唯一、硬X线での高解像度な撮像観测を行えます。

8年前の我々のフェルミ?ガンマ线卫星のデータ解析により、强力なガンマ线が「りゅうこつ座エータ星」付近から到来していることが分かりました。そのようなガンマ线を放射するには、ほぼ光速まで加速された超高エネルギーの粒子が必要です。しかしそのような粒子を作り出す极めて激しい活动现象は、「りゅうこつ座エータ星」のような普通の星(ブラックホールや中性子星といった高エネルギー天体ではなく)では予期されていませんでした。フェルミ卫星はガンマ线の飞んで来る方向をさほど精度良く(数分角程度でしか)决められないため、近くに知られていない高エネルギー天体が隠れている可能性があります。今回の狈耻厂罢础搁卫星の観测では、同じ高エネルギー粒子からの硬X线波长域での放射を见つけ、その硬X线が「りゅうこつ座エータ星」から来ていることを极めて高い位置精度(5秒角以内、フェルミ卫星の数十倍高精度)で突き止めました。

狈耻厂罢础搁卫星は更に、硬X线の强度変动を高い精度で测定(测光)できます。我々は「りゅうこつ座エータ星」を2014年から4年间にわたって継続的に観测し、连星がお互いに近づくタイミング(彗星が何十年かおきに太阳に近づくのと同様)で、硬X线の强度が数ヶ月间急激に弱まる现象を発见しました。これは、超高エネルギー粒子が连星间の相互作用で出来ている事を明确に示しています。

大质量の星は、阳子や电子といった荷电粒子を、风のように高速に吹き出します(星风、太阳の场合の太阳风)。大质量星が连星を成す场合、お互いから吹き出す星风は中间で激しく衝突し、衝撃波を定常的に形成します。星风中の粒子の一部は、この衝撃波にのって加速するかもしれないと考えられてきました。今回の観测は、この机构が「りゅうこつ座エータ星」で実际に働いて粒子がほぼ光速まで加速され、星から外の宇宙空间に撒き散らされている事を明らかにしました。

地球の周りには、宇宙线と呼ばれる粒子がほぼ光速で飞び交います。宇宙线は、宇宙飞行士や飞行机のパイロットの被曝の原因や、自然现象として云の発生の要因にもなるため、どこでどのように作られるのかは宇宙物理学の重要な问题の一つと考えられています。宇宙线は阳子や电子といった荷电粒子のため、飞ぶ方向が宇宙空间に漂う磁场で曲げられてしまい、个々の粒子の飞来方向を地球で测っても、それらがもともとどの天体からやって来たのかわかりません。一方で、硬X线やガンマ线を含む电磁波は磁场の影响を受けない事から、「りゅうこつ座エータ星」が宇宙线粒子の生成箇所と特定できました。今后、「りゅうこつ座エータ星」や、これに似た连星を狈耻厂罢础搁卫星で更に観测することで、恒星の连星が宇宙线をどれだけ作り出しているのか、また恒星の星风どうしの相互作用でどのように高エネルギー粒子の加速が行われるのかなどの理解が进むと期待されます。

本研究成果は、英国科学誌「Nature Astronomy」(オンライン版)で公開されました。
アメリカ狈础厂础ゴダード宇宙飞行センター発表の动画は

7月2日、本件について、キャンパス?イノベーションセンター(东京都)で记者説明会を行いました。

説明を行う高桥助教(右)、滨口研究员(左、テレビ画面)

【参考资料】
注1) 硬X线:齿线とガンマ线の间のエネルギーをもつ电磁波。

注2) 宇宙线:宇宙から地球にほぼ光速で降り注ぐ粒子(阳子?电子など)
地球に降り注ぐ高エネルギー粒子は目には见えませんがその数は大量であり、1秒间に数100粒子も我々の体を突き抜けています。顿狈础损伤により生物の进化に寄与した可能性や、日々の云の発生にも関係していると考えられています。

宇宙线は100年以上前に発见され、高エネルギー粒子が太阳系外から到来していることが分かっています。しかし、これらの粒子は宇宙空间の磁场で方向を曲げられてしまうため、その起源やどのように光速に近い高エネルギーまで加速されたかなど未だに多くの谜が残っています。

「りゅうこつ座エータ星」可视光

ハッブル宇宙望远镜(狈础厂础提供)

アメリカ狈耻厂罢础搁卫星(狈础厂础提供)

2012年に打ち上げられた硬X线帯域での撮像を世界で初めて実现した観测卫星。多层膜スーパーミラーを利用することで、従来の齿线望远镜では集光できなかった1-8万电子ボルトの硬X线の画像が撮れます。
日本の「ひとみ」卫星の硬X线撮像検出器でも同等の性能が実现されていました。

论文情报

  • 掲載雑誌: Nature Astronomy
  • 論文題目: "Non-thermal X-rays from colliding wind shock acceleration in the massive binary Eta Carinae"(大質量連星「りゅうこつ座エータ星」における星風衝突による衝撃波加速で生じた非熱的なX線放射の検出)
  • 著者: Kenji Hamaguchi, Michael F. Corcoran, Julian M. Pittard, Neetika Sharma, Hiromitsu Takahashi, Christopher M. P. Russell, Brian W. Grefenstette, Daniel R. Wik, Theodore R. Gull, Noel D. Richardson, Thomas I. Madura, & Anthony F. J. Moffat
  • 顿翱滨番号:&苍产蝉辫;10.1038/蝉41550-018-0505-1
    论文の无料閲覧リンク
【お问い合わせ先】

広島大学大学院理学研究科 物理科学専攻

助教 高橋 弘充

TEL: 082-424-7379(もしくは-7378、-7380)

FAX: 082-424-0717

E-mail: hirotaka*astro.hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)

狈础厂础ゴダード宇宙飞行センター

研究員 濱口 健二

E-mail: kenji.hamaguchi*nasa.gov (*は半角@に置き換えてください)


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