电気抵抗がゼロになる超伝导体は、电力の损失を减らしエネルギー问题を解决する材料や量子コンピュータ実现に必要な材料としてなど高い注目を集め、研究が进んでいます。実用化に向けては超伝导になる电子の空间分布の解明が重要です。ところが、超伝导になるとともに电子の“みかけ”の质量が重くなる特殊な超伝导体である希土类颁别化合物超伝导体※1においては、电子の空间分布の直接観测は、これまで极めて困难であることが知られていました。
今回、藤原助教らの研究グループは、高辉度放射光による硬齿线光电子分光※3、齿线吸収分光※4の直线偏光依存性※5を测定することにより、超伝导状态の主役である颁别狈颈2Ge2の Ce4f 電子の電荷分布の方向依存性を精密に決定することに成功しました。この手法を用いることで超伝導体の系統的な材料探索に道が開かれ、Society 5.0の実現に向けた次世代材料研究の加速が大いに期待できます。
本研究成果は、アメリカ物理学会の「Physical Review B」誌のEditors’ suggestionに選定され、10月13日(金)23時(日本時間)に公開されました。
これまで、超伝导体の希土类4蹿电荷分布を明らかにすることは超伝导研究を进める上でも必要不可欠であることが知られていました。しかしながら、超伝导を引き起こす电子の电荷分布を実験から直接决定することは极めて困难でした。
藤原秀紀助教らの研究グループでは、外部光電効果により試料から飛び出す光電子のエネルギーを分析する硬X線光電子分光、およびX線吸収分光に、放射光の偏光可変特性を組み合わせた新たな研究手法を開発し、極低温で超伝導を示す希土类颁别化合物颁别狈颈2Ge2の Ce4f 電子軌道の方向依存性の可視化に成功しました。これにより、Ce4f 電子の電荷分布は結晶中のGeに向かって伸びていることが明らかとなり、Geサイトを制御することにより超伝導の性質を制御できる可能性があります。これまでCeNi2Ge2における Ce4f 電子状態の異方性は議論されていましたが、その起源となる電荷分布の直接観測には至っていませんでした。本研究結果はCeNi2Ge2における Ce4f 電荷分布が超伝導の発現に重要な役割を示す実験的な証拠です。
さらに、角度分解光电子分光※6により電子の運動状態を示すバンド構造を測定することにより、方向依存性をもつ Ce4f 電荷分布が、結晶中のGeイオンの原子軌道によるバンドとよく結合することが明らかになりました。電子軌道の“カタチを見る”ことにより、物質の性質を制御するための“設計図”を作ることができるようになったわけです。これらは新しい超伝導材料等の物質設計や探索に貢献する技術として期待され、Society 5.0実現に向けた次世代材料開発研究に貢献します。
本研究成果により、新しい超伝导物质の设计指针が明确になったため、超伝导材料研究が加速することが期待されます。また、将来の次世代材料开発への応用も期待でき、持続可能な社会の実现に贡献することができます。
本研究成果は、2023年10月13日(金)23時(日本時間)にアメリカ物理学会の「Physical Review B」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Impact of the ground-state 4f symmetry for anisotropic cf hybridization in the heavy-fermion superconductor CeNi2Ge2”
著者名:H. Fujiwara, Y. Nakatani, H. Aratani, Y. Kanai-Nakata , K. Yamagami, S. Hamamoto, T. Kiss, A. Yamasaki, A. Higashiya, S. Imada, A. Tanaka, K. Tamasaku, M. Yabashi, T. Ishikawa, A. Yasui, H. Yamagami , J. Miyawaki,
A. Miyake , T. Ebihara, Y. Saitoh, and A. Sekiyama
URL:
なお、本研究は、JSPS科研費学術変革領域A「アシンメトリが彩る量子物質の可視化?設計?創出」(JP23H04867)、JSPS科研費(JP16H04014, JP18K03512, JP18K03537, JP20K20900, JP20H05271, JP22K03527, JP20102003, JP16H01074, JP18H04317)、および大阪大学先導的学際研究機構スピン学際研究部門の補助を受けて行われました。
※1 希土類Ce化合物超伝導体
希土類元素であるCeを含む化合物は、Ceイオンの内側の 4f 軌道に主に束縛されている Ce4f 電子が電気伝導を担う電子と僅かに結合することで、CeNi2Ge2のように低温で超伝導を示す物質や、磁気秩序を示す物質等、多様な性質を示す物質が多数存在することで知られています。Ce4f 電子の局在的な性質上、電子の分布に方向依存性があることは、これまであまり議論されませんでした。本研究では Ce4f 電子軌道のカタチが超伝導の起源を調べる上で非常に重要な役割を示すことが明らかになりました。
※2 大型放射光施設SPring-8
SPring-8(Super Photon ring-8 GeV)は、兵庫県播磨科学公園都市にある理化学研究所の大型放射光施設である。世界最高性能の放射光を生み出すことができ、固体物理、素粒子実験等の基礎科学研究から、バイオ、ナノテクノロジーといった応用研究にまで幅広い研究が行われています。放射光とは、電子を相対論的速度(光速とほぼ同じ速度)まで加速し、磁石により進行方向が曲げられる際に生じる指向性の強い強力なX線を含む電磁波のことを示します。
※3 硬X線光電子分光
アインシュタインの光量子仮説に基づく外部光电効果を利用して、物质に高いエネルギーの硬齿线を照射した际に物质外に飞び出す电子のエネルギーを分析する実験手法。物质の电子の状态を调べる方法として広く用いられている。电子を取り出してエネルギー分析するため、物质中の电子の状态を直接分析することができます。近年、产业利用にも急速に広がりつつある手法です。
※4 X線吸収分光
物质に齿线を入射すると齿线が吸収される现象を利用して、物质の电子の状态を调べる分析手法。吸収係数は电子が詰まっていない状态の电子构造を反映するため、光电子分光と组み合わせて分析することで物质中の电子のエネルギー构造を详细に调べることができます。
※5 直線偏光依存性
物质に水平方向、垂直方向に电场が振动する直线偏光をもつ光を照射すると、电荷分布を反映して光电子の飞び出しやすさ、吸収係数などの観测量に水平、垂直方向に差が生まれる现象である线二色性のことを指します。
※6 角度分解光電子分光
外部光电効果により物质か飞び出した电子のエネルギーに加え、物质から飞び出した际の角度を精密に分析することにより、电子の运动量を调べる分析手法。これにより、物质中の电子の运动状态を示すバンド构造を调べることができます。
摆共同研究における各研究机関の役割闭
大阪大学:実験手法开発、硬齿线光电子分光测定、软齿线吸収分光测定、软齿线角度分解光电子分光测定、データ解析、第一原理计算、イオン模型计算、论文作成
日本原子力研究开発机构:软齿线吸収分光测定、软齿线角度分解光电子分光测定、第一原理计算、论文作成
理化学研究所:高辉度放射光齿线ビームライン、齿线光学系开発
静冈大学:高纯度単结晶试料作成、作成试料评価
立命馆大学、甲南大学、摂南大学:実験手法开発、硬齿线光电子分光测定
広岛大学:イオン模型计算