研究分野、研究テーマ
国際政治学: 安全保障研究、ナショナリズムと民族問題、東アジアの国際関係、比較共産主義研究
経歴
1991年、庆応义塾大学大学院法学研究科政治学専攻単位取得退学。庆応义塾大学助手、広岛大学法学部助教授を経て、2014年4月より现职。専门は国际政治学、安全保障论。
学部の教育内容
学部では、「国际関係论」、「国际政治学」、「安全保障论」の3つの讲义を担当しています。
「国际関係论」は、1年次生に対する入门编として置かれている讲义で、特に戦争と平和の问题に焦点を当て、国际秩序、国际政治におけるパワーの役割、同盟、力の均衡、覇権、相互依存、制度などの、国际関係における主要概念を体系化した形で讲义しています。国际関係における、伝统的な要素と新しい要素をともに理解してもらえるように努めています。この讲义は人数が比较的少ないため、学生との双方向のコミュニケーションができるように配虑しています。
「国际政治学」は、2年次生以上を対象とした、国际政治の歴史と理论の讲义です。17世纪から现代までの国际政治における主要な事象を材料にしながら、リアリスト、リベラリスト、コンストラクティビストの3つの理论のそれぞれの立场から、国际政治を体系的に説明する视点と方法を讲义しています。とりわけ、情报革命、地球环境、脱国家主体の登场などの比较的新しい要素と、力の均衡、集団安全保障などの比较的古い要素をどのように统一的に理解すればいいのか、国际政治についてのバランスのとれた解釈を行うためには何が必要なのかという点に注目します。その际、日本における社会的な意见の偏り(平和や军缩に対する、执着的な信念)が、アメリカ、ヨーロッパの先进国社会とどのように违うのかという点について、注意を促すように讲义を行っています。
「安全保障论」は、3年次生以上を対象とした、日本の安全保障政策の展开とその要因についての讲义です。かつては、军事力と外交政策の関係についてのより一般的な内容を讲义していたのですが、日本のおかれた文脉では军事力と外交政策の统一的な解釈を行うには特殊な问题が多すぎて、外国の一般论はそのままでは理解できません。そのため日本の安全保障政策の特殊性と一般性に焦点をあてることにしました。戦后日本の安全保障政策の変化とその原因を、败戦から宪法9条の制定、警察予备队设置、日米安保条约缔结から、冷戦期の安全保障政策、特に基盘的防卫力构想、冷戦后に日本がアメリカとの同盟関係における摩擦に対処しながら、政策の転换を図ろうとしてきた过程、特に07大纲以降の防卫计画の大纲の変迁、などの主要なポイントに注目しながら讲义しています。とくに日本の安全保障政策を决める要因として、国际环境と国内政治がどのように作用してきたのかを明らかにすることを重视しています。
学部の演习では、これまでに体系的に国际政治について学んだことのない学生もいることを前提にして、国际政治の入门书から、分野ごとの概説书、特定分野の研究书を、なるべく早いペースで読んでいき、そのなかで学生の関心の焦点が早く决まるようにしています。卒业论文の执笔を课し、研究の方法の入り口を理解できるような指导を行って、学生が自分で事実を発见できる手法を身につけられるような授业になるように配虑しています。
大学院の教育内容
大学院では、「安全保障论」、「安全保障论演习」の2つの授业を担当しています。2つの授业の内容は接続しているので一括して説明しますが、安全保障を议论するための主要な概念を深く理解することを目的として、毎年异なったテーマを取り上げて、文献の検讨および教员と受讲者による讨论で授业を进行させています。1つの柱は、「戦略论の再検讨」です。戦略论の古典「孙子」「戦争论」を含む一连の书物を1つずつ取り上げて精読し、内容の理解と、古典的戦略书がなぜ现在でも読み続けられているのか、现代のコンテクストにおいて、古典がどのように理解され、利用されているのか、という问题を受讲者とともに考えるような授业を行っています。それらの戦略论の古典が、现代の文脉で再解釈される方法および「戦略文化」に古典再解釈が及ぼす影响についても、検讨していきます。そこで重视している点は、「技术は変わっても、人间は简単に変化しないから、戦争の基本的な考え方は昔からそれほど大きく変わることはない」という视点です。もう1つの柱は、「现代东アジアの安全保障问题」です。中国の台头とともに、东アジアの戦略环境は激変していますが、各国军、特に人民解放军海空ミサイル部队の近代化、「人民戦争」から「超限戦」への戦略构想の変化、その结果としての力の均衡の変化、という要素とともに、アメリカの戦略构想の変化と対外介入への政府、议会、世论の変化、各国でのナショナリズムの台头、国内世论の安全保障政策への影响などの、対応する要素も考虑して、冷戦后の东アジアでなぜ紧张が激化していったのか、世界レベルの戦略环境の変化と地域、各国レベルの変化はどのように作用していたのか、という问题を、検讨します。
最近の研究について
最近の研究関心は、主に3つのテーマにあります。
第1は、「日本における安全保障政策を国民はどのように受容してきたのか」という问题です。日本では、占领下で日本国宪法が制定され、戦争放弃、戦力不保持が定められたのですが、当时の世论调査を见ると、恒久的な军备の不保持に対する支持は必ずしも高くなく、新宪法の内容はただちに国民に受容されたとはいえない侧面があります。しかし、その后警察予备队创设から、自卫队への改组に至るなしくずしの再军备、1954年のビキニ环礁核実験を契机とする反核兵器运动、1960年の安保条约改定への反対运动、日本国内(および占领下の冲縄)における基地反対运动などの事件を経て、「平和宪法」、「平和国家」などの言叶が一般市民だけでなく、政府関係者の公式の言明にもたびたび登场するようになり、「平和」という言叶が、日本の政策の方向性や、社会的価値を示すものとして定着するようになっていきます。このプロセスが、どのように形成されたのか、特に东京などの都市部と、アメリカ军や自卫队の基地が置かれた地域では、アメリカ军、自卫队に対してどのような态度の违いがあったのか、そのような意识は特に1950年代から90年代にかけてどのように変化していったのかという问题を検讨しています。
第2は、日本における近年のナショナリズムの勃兴プロセスとその要因です。世论调査データと従来标準的に利用されてきた调査スケールでは、最近日本人のナショナリズム倾向が顕着に増大したとは断定できません。しかし、世论调査では、中国と韩国、特に中国に対する反感が急速に増大していることが确认できます。また、その2国に北朝鲜を加えた3国に対して、公に反感を示す态度が过去に比べて拡大していることも事実です。国际比较调査における中国人と韩国人の态度を见ても、日本人と同様の倾向が认められますから、东アジア地域において、指导者レベルだけでなく、一般市民レベルでも相互に反感が高まっていることは认めてもよい事実だと考えられます。このような変化がいつから、どのような理由によって起きているのか、マスメディアの言説やインターネット上の言説はどのように影响しているのか、反感が形成されるメカニズムは何かという问题について考察しています。安全保障政策というものも、决して政府や军が一方的に决定するものではなく、社会において人々が持っている考え方や好き嫌いの感情との相互作用によって决まる部分が大きいのですから、国民同士の好悪の感情は安全保障を考える上でも重要です。
第3は、比较共产主义研究です。研究を始めた时点で、ソ连と共产主义体制の研究が出発点だったことから、ソ连、中国、北朝鲜などの共产主义体制诸国の研究、西侧民主制国家における共产党の研究は、自分にとっての重要な研究课题でした。共产主义体制、运动には、人间の普遍性、人间社会の普遍的法则の存在に対する强い信念と、その信念の実现を呵责なく追求するエネルギーが存在していました。一方で、そうした絶対善の追求の里では个人、家庭、自民族への执着と个别社会への闭じこもりも并行して存在していました。共产主义の力がかつての辉きを失った今でも、个人の过ちを超越した共产党の正しさへの信念は、中国でも北朝鲜でも、西侧诸国の一部においても、社会统合の重要な核になっています。共产主义の理念と、共产党の组织、それらと私的社会の関係は、国ごとにどのように异なっているのか、それぞれの社会の构成や人々の考え方は共产主义にどのような违いをもたらしたのか、社会の个别の场で、共产党はどのように彼らの理念と権力を追求していたのかといった疑问に答えようと努力しています。社会主义体制下の党军関係、个别社会(组合、学校など)での共产党组织の活动、共产党と社会运动の関係などが探求のフィールドです。