広岛大学大学院理学研究科地球惑星システム学
准教授 片山郁夫(かたやま いくお)
Tel:082-424-7468 FAX:082-424-0735
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平成26年3月12日
金星にプレートテクトニクスが存在しない原因について新たな粘性构造モデルを提唱!
概要
広岛大学大学院理学研究科の片山郁夫准教授と东真太郎さん(博士课程后期3年)らの研究グループは、室内での岩石変形実験と数値计算の结果をもとに、金星にプレートテクトニクスが存在しないのは、内部での粘性构造が原因であるとの新たな説を提唱しました。地球ではプレートテクトニクスが働いているが故に、海が存在し生命が诞生しました。金星でプレートテクトニクスが働いていない原因が解明されれば、なぜ金星が地球と异なる进化を経ているのか、また他の惑星の进化や生命の存在に関して新たな知见が得られると期待されます。
この成果は、3月18日(日本時間)、英国Nature Publishing Groupのオンライン科学雑誌「Scientific Reports」に掲載される予定です。
论文タイトル:Rheological decoupling at the Moho and implication to Venusian tectonics
着者名:东真太郎、片山郁夫、中久喜伴益
所属:広岛大学大学院理学研究科
背景
金星は、地球と大きさや内部构造が似ていることから兄弟星ともいわれていますが、近年の観测结果から、金星には地球にみられるようなプレートテクトニクス(*1)が働いていないことが分かりました。その原因として、これまでさまざまな説が提案されていますが、未だコンセンサスは得られていませんでした。
当研究グループは、惑星内部の粘性构造の违いがプレートテクトニクスの有无を左右しているとの仮説のもと、惑星内部の高温高圧条件を実験室で再现し(図1)、金星内部の粘性构造を求め、数値计算によりプレートテクトニクスの有无を検証しました。
研究成果の内容
金星の地殻とマントルの境界であるモホ面(*2)では、岩石の粘性强度に违いがみられ、モホ面より浅い地殻部分は柔らかいために润滑层として働くことが分かりました(図2)。この场合、金星内部を対流する动きが、上部の地殻に伝わらないデカップリング(*3)が起きることが数値计算より明らかになりました。地球ではそのような粘性构造の违いがないため、表层のプレートがマントルまで运び込まれますが、金星では上述の润滑层の存在のため、地殻が表面に取り残されるテクトニクスが起きていると予想されます(図3)。このように、惑星内部での粘性构造が、プレートテクトニクスの有无を支配していると考えられます。
今后の展望
今回の研究成果は、金星以外の地球型惑星や近年注目されているスーパーアース(*4)でプレートテクトニクスが働いているかどうかを検証するのにも有効であると考えられます。プレートテクトニクスは惑星の物质?热循环とも密接に関わっており、海の形成や生命の诞生とも関连しています。つまり、地球外生命がいるかどうかも、プレートテクトニクスが他の惑星で存在するかに関わっているといっても过言ではありません。今后は、この研究成果を他の惑星にも応用し、地球以外の惑星でプレートテクトニクスが働いているかどうかを検証していきたいと考えています。
用语解説
(*1)プレートテクトニクス
地球の表面が何枚かの硬いプレートによって构成されており、そのプレートは対流するマントルに乗って移动しています。地球では、海岭で新しいプレートが形成され、海沟で地球の内部に沉み込んでいきます。この地球を特徴づけるプレートの一连の运动をプレートテクトニクスと呼んでいます。
(*2)モホ面
地球内部は地殻?マントル?核という层构造をしており、モホ面は地殻とマントルの境界にあたり、岩石种が変化します。地殻は主にはんれい岩(主に斜长石)、マントルはかんらん岩(主にかんらん石)から构成されます。
(*3)デカップリング
ここでは运动力学的に分离という意味で用いています。つまり、デカップリングとは、マントルの対流や変形から地殻の部分が切り离されることを意味しています。
(*4)スーパーアース
太阳系外惑星のうち、地球の数倍以上の质量を持つが、地球と同じように岩石と金属などの物质からなると推定される巨大地球型惑星のことをスーパーアースといいます。
参考资料
図1:室内実験の模式的な概要と回収した実験试料

図2:地球と金星内部の模式的な粘性(强度)构造

図3:地球と金星内部の运动を模式的に示した図
