広岛大学大学院総合科学研究科
市川 貴之
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平成27年6月8日
水素化マグネシウムを用いた高容量、低分极电圧を示す全固体リチウムイオン电池负极材料を开発
~より高性能の二次电池开発への活用が期待されます~
ポイント
- 负极材料に水素化マグネシウム、固体电解质として水素化ホウ素リチウムを利用
- 蓄えられる电気量は、现在多用されているリチウムイオン电池负极材料である黒铅の约4.4倍
- 分极と呼ばれる充电时と放电时の电圧の差が小さく、充放电サイクルを繰り返しても容量劣化が少ない
概要
広岛大学大学院総合科学研究科の市川贵之准教授を中心とする研究グループは、全固体リチウムイオン二次电池の负极材料として水素化マグネシウムを、また、固体电解质として水素化ホウ素リチウムを利用し、高い性能が得られることを発见しました。これにより、高容量、かつ、低い分极电圧を示す全固体リチウムイオン二次电池の开発につながることが期待されます。
本研究成果は、広島大学先進機能物質研究センターの曾亮(ゼンリャン)特任助教および小島由継教授、同大学大学院先端物質科学研究科 博士課程3年の川人浩司氏と同大学サステナブル?ディベロップメント実践研究センターの宮岡裕樹特任講師との共同研究によるもので、平成27年5月6日発行の英国王立化学会の専門誌『Chemical Communications』のオンライン版で公開されました。なお、本研究成果は高い評価を受け、掲載号の表紙にも選ばれました。
研究背景
電気自動車の普及促進あるいはモバイル機器の高機能化により、高性能な二次電池(1)の開発が求められています。国立研究開発法人 新エネルギー?産業技術総合開発機構(NEDO)が2013年に発表した二次電池技術開発ロードマップ(以下、RM)では、二次電池自体の性能目標のみならず、二次電池を構成する様々な部材に対して、明確に技術開発目標が掲げられています。図1には、RMに掲載されたリチウム二次電池の正極?負極材料の技術マップを示しました。現在多用されている負極材料は黒鉛(グラファイト)であり、その容量密度は約370Ah/kgと言われていますが、二次電池の高容量化のためには、この容量を大きく向上させる必要があります。その候補の一つに挙げられるのが水素化物です。水素化物を用いた電極については、2008年にフランスのグループから「Nature Materials」に初めて発表され、水素化マグネシウムを利用した場合、黒鉛の約5倍の容量を達成可能です。この高い容量を有する水素化物をどのようにして実用的に使いこなす事ができるかという点に興味がもたれます。
この水素化マグネシウムは、高容量の水素贮蔵材料としても期待されており、市川贵之准教授と小岛由継教授の研究グループが、多くの研究発表を行ってきました。この材料は、室温で高速に水素を吸蔵する唯一の材料としても注目を集めているところです(2)。最近では、原子力発电所で漏洩する水素を捕集するシステムの候补である、「安全で机能的な无电力型水素捕集装置の要素技术」として、北海道大学、太平洋セメント、日本原子力研究开発机构、広岛大学の4者から共同でプレスリリースを行いました。
また固体电解质として用いた水素化ホウ素リチウムは、水素化マグネシウムと同様に水素贮蔵材料として注目されてきた物质であり、水素化マグネシウムと复合化することで、固体材料であるにもかかわらず高いエントロピー(3)状态を取りうることを、曾亮(ゼンリャン)特任助教らとともに市川贵之准教授と小岛由継教授の研究グループが発表してきました(4)。
さて、この水素化マグネシウムのリチウム二次電池負極材料としての特性は、これまで、初期の充放電では 1500Ah/kg程度の容量を示していましたが、サイクルを繰り返すごとにその容量は低下し、20回程度の繰り返しで500Ah/kg程度まで容量が低 下することが知られていました。また、分極と呼ばれる充電時と放電時の電圧の差が、本材料系は本質的に小さいと言われていましたが、それでも0.4V程度となることが報告されており、充分ではないと判断されてきました。
一方、この材料の全固体化による高温作動にも興味がもたれてきました。全固体電池としては、2013年に同様に「Chemical Communications」に掲載された、「Anode properties of magnesium hydride catalyzed with niobium oxide for an all solid-state lithium-ion battery」という発表を行っており、注目を集めています。

図1 リチウム二次電池の正極?負極材料の技術マップ
(狈贰顿翱二次电池技术开発ロードマップ2013より)
研究内容とその成果
市川貴之准教授を中心とする研究グループは、水素貯蔵材料としてこれまで期待されてきた水素化マグネシウムに注目し、「コ ンバージョン反応」と呼ばれる充放電反応を改良することで、高い性能を発揮する全固体型リチウムイオン二次電池の負極材料を開発しました。図2に示しました模式図にもあるように、対極のリチウムと負極材料である水素化マグネシウム(MgH2)は固体电解质である水素化ホウ素リチウムをはさんで配置されています。充放电反応は以下の反応式で示されます。
MgH2 + 2Li+ + 2e? ? Mg + 2LiH
この反応では、理论的に2000础丑/办驳の容量を示すことが期待されています。その70%以上である1480础丑/办驳程度が初回の充放电试験では実现していたものの、充放电のサイクルを繰り返すごとに容量が剧的に低下することが问题视されていました。本研究成果では、表1に示したように、様々な観点で従来材料を凌驾する特性を得ることに成功しました。
本系では、これまで有机溶媒を利用した一般的な构成ではなく、固体电解质を用いることで高温での特性评価を実现しました。この际、固体电解质としては、水素化マグネシウムと同様に水素贮蔵材料として期待されている水素化ホウ素リチウムを用い、水素化マグネシウムと复合化することで电极合材を作製し、充放电サイクルを繰り返しても容量劣化が少なく、充电电位と放电电位の差が小さい(分极电圧の小さい)电池セルを组み上げることに成功しました。すなわち、(1)水素化マグネシウムという新しく高容量が期待される负极材料を用い、(2)固体电解质として水素化ホウ素リチウムを利用することで、分极电圧が低く、高い容量を示し、120℃という比较的高温でも劣化の少ない电池材料の开発を达成することができました。

図2 負極特性評価セルの模式図

表1 従来材料と本成果での新規材料の比較
その成果の优位性と社会や暮らしに及ぼす影响
现在注目されている二次电池は、モバイル机器や电気自动车に使われるリチウム电池と、太阳电池の出力平準化用途として期待されている狈补厂电池5)が挙げられます。前者は80℃以下の比较的低温、后者は200℃以上のナトリウムが液化する高温で用いられます。本研究で取り上げる全固体型电池は、液体ではなく120℃程度の温度の固体状态で动作するため安全性が高く、一方、リチウムイオンが伝导するために高い出力を见出せるだけでなく、これまででは得られなかった高いサイクル性能を示し、かつ、充电时と放电时の电圧の差が极めて低いという特徴を持ちます。また、现在利用されているリチウムイオン电池の负极材料である黒铅と比べると数倍の容量を示すため、より高性能の家庭用电力平準化に用いられる电池としての利用が期待されます。
今后の展开
本技术は、リチウム二次电池の要素技术を示したものであり、実际の二次电池へと発展するためには、この负极材料と相性の良い正极材料を选定する必要があります。今后は、最适な正极材料を选出し、二次电池として最适な性能が得られるように研究开発を进める予定です。
补足资料
- 二次电池:使い捨ての电池を一次电池と呼ぶのに対して、充电が可能な蓄电池を二次电池と呼ぶ。自动车用の铅蓄电池、乾电池の代替となるニッケル水素电池、携帯电话やノートパソコンに利用されているリチウムイオン电池など。
- 広岛大学研究シーズ506:「高活性マグネシウム材料の室温での高速水素吸蔵」
- エントロピー:乱雑さを表す物理量。固体に比べて、液体や気体の方が自由度が高く、高いエントロピー状态である。
- 2012年に京都で開催された国際会議「International Symposium on Metal-Hydrogen Systems-MH2012-」において、市川貴之准教授が招待講演として「Entropy Control of Nano-composite Materials for Hydrogen Storage」を発表した。
- 狈补厂电池:负极にナトリウム、正极に硫黄を用い、固体电解质としてアルミナを使ったナトリウム二次电池。比较的大型化しやすく、メガソーラー発电等の出力変动の平準化用途として期待されている。
掲载誌:Chemical Communications(材料科学分野で高いインパクトファクター(6.718)をもつ英国王立化学会の化学系専門誌)
论文タイトル:Metal hydride-based materials towards high performance negative electrodes for all-solid-state lithium-ion batteries
(和訳)水素化物を利用した高性能な全固体リチウムイオン电池用负极材料
着者:Liang Zeng(曾亮)、 Koji Kawahito(川人浩司)、 Suguru Ikeda(池田卓)、 Takayuki Ichikawa*(市川貴之)、 Hiroki Miyaoka(宮岡裕樹)、 and Yoshitsugu Kojima(小島由継)
掲载日:2015年5月6日付オンライン版;DOI: 10.1039/C5CC02614H