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超强力X线による极微小プラズマ生成を発见X线自由电子レーザーを利用したイメージングに重要なメッセージ

平成27年6月11日

东北大学多元物质科学研究所
京都大学大学院理学研究科
広岛大学
理化学研究所
高辉度光科学研究センター
 

超强力X线による极微小プラズマ生成を発见X线自由电子レーザーを利用したイメージングに重要なメッセージ

概要

东北大学多元物质科学研究所上田潔教授?福澤宏宣助教のグループ、京都大学大学院理学研究科八尾誠教授?永谷清信助教のグループ、広岛大学大学院理学研究科和田真一助教、理化学研究所放射光科学総合研究センターXFEL研究開発部門ビームライン研究開発グループ矢橋牧名グループディレクター及び高辉度光科学研究センターXFEL利用研究推進室先端光源利用研究グループ実験技術開発チーム登野健介チームリーダー等による合同研究チームは、原子のクラスター*1にX線自由電子レーザー(XFEL)*2施設SACLA*3から供給される非常に強力なX線を照射すると、ナノメートル*4程度の大きさのプラズマ*5(ナノプラズマ)を生成することを見出しました。

齿贵贰尝の非常に强力なX线パルスを用いると、非常に小さな结晶や结晶化していない试料からでも1発のX线パルスでX线散乱を计测できるため、これまで构造が决定できなかった様々な物质や过渡的な状态にある物质の构造が决定できると期待されています。本研究の结果は、厂础颁尝础の强力X线パルスをどのような物质に照射してもナノプラズマ化という现象が起こり得るため、X线散乱の解析においてもこの现象による影响を正确に知ることが必要であることを示しています。

本研究の成果は、英国の科学雑誌『Scientific Reports』で、平成27年6月16日にオンライン出版されます。(※解禁日時は日本時間の平成27年6月16日18時)

本研究は、合同研究チームの上田を代表とする文部科学省 X線自由電子レーザー利用推進研究課題、 理化学研究所SACLA利用装置提案課題、文部科学省 X線自由電子レーザー重点戦略研究課題の各事業の一環として行われました。

详细な説明

1.背景
&苍产蝉辫;齿贵贰尝の诞生により、X线领域でレーザー光が利用できるようになりました。齿贵贰尝施设は世界でも2カ所でしか稼働しておらず、日本の齿贵贰尝施设厂础颁尝础を利用した研究は世界中の研究者により活発に进められています。齿贵贰尝を利用することで、これまで见ることが出来なかった、超高速?超微细な现象を见ることが出来ると期待されています。これを実现するためには、齿贵贰尝のような超强力X线を物质に照射した时に、物质そのものに何が起こるのかを理解することが重要です。しかし、このような超强力X线と物质との相互作用はこれまで研究されていませんでした。本研究では、X线领域でのレーザー光利用に重要な新规研究分野である超强力X线と物质との相互作用を解明する為、原子の集合体である原子クラスターを试料として、齿贵贰尝照射によりどのような応答を示すかを调べました。

2.研究の手法と成果
&苍产蝉辫;X线を原子クラスターに照射すると、クラスターを构成する原子の深い内殻轨道*6から电子が放出されて、原子はエネルギーが高く不安定な原子イオンになります。この不安定な原子イオンは比较的浅い轨道の电子を放出することで安定化し、多価原子イオンになります。厂础颁尝础の非常に强力なX线パルスを照射すると、単一クラスター内の复数の原子においてこのような过程が起こり、たくさんの电子を放出します。电子は负の电荷を持つので、残ったクラスターは强く正に帯电していきます。この过程が进行していくと、时间的に遅れて原子から飞び出した电子のうち、エネルギーが低い电子は正の电荷に引き寄せられてクラスターからは飞び出せなくなっていきます。その结果、微小空间内に正の电荷と负の电荷が混在するナノプラズマが生成することが予想されていました(図1)。

図1. クラスターがナノプラズマ化する仕組みの概念図

図1. クラスターがナノプラズマ化する仕組みの概念図

本研究では、アルゴン原子クラスターを真空中に導入して、SACLA BL3で得られる超強力X線パルスを照射し、放出される電子の運動エネルギー分布を測定しました(図2)。アルゴン原子の最も深い内殻軌道の束縛エネルギーは3200電子ボルト*7なのに対して、X線光子のエネルギーは5000電子ボルトです。従って、最初に飛び出してくる電子はもっぱら2000~5000電子ボルトの超高速電子で、クラスターから飛び出せなくなることはありません。ここで注目すべきは低エネルギーの遅い電子です。孤立したアルゴン原子にX線を照射する場合には200電子ボルト付近に山が観測されますが、本研究で観測したアルゴン原子クラスターからの電子放出の場合には、200電子ボルトから低エネルギー側の領域が平らになることが分かりました。このことはクラスターに生じた強い正の電荷により電子が減速されていることを示しています。さらに電子が減速されると、クラスターから飛び出せなくなり、ナノプラズマが生成されます。その後、一度は束縛された電子も蒸発するように放出されることがあり、エネルギーの増加とともに単調に収量が減少する低エネルギー電子として観測されます。図2に見られるゼロエネルギー付近の低エネルギー電子は、ナノプラズマの生成を示唆するものです。

図2. アルゴン原子クラスターにXFELを照射して得られる電子の運動エネルギー分布

図2. アルゴン原子クラスターにXFELを照射して得られる電子の運動エネルギー分布(当該論文から改編して転載)

 

また、観测结果をよく再现する理论计算から、X线照射によって放出される电子の中でも比较的低エネルギーの电子とクラスター内の原子との衝突により放出される2次电子がナノプラズマ生成に主に寄与していることも分かりました。この2次电子放出は物质にX线を照射した时にごく一般的に起こる现象です。

3.今后の展望

今回の研究は、厂础颁尝础の强力なX线パルスを原子の集団に照射すると、X线のエネルギーや原子の种类によらず低エネルギー2次电子を大量に放出し、この2次电子が束缚されてナノプラズマを生成する可能性が常につきまとうことを示すものです。このことは、厂础颁尝础の强力なX线パルスを用いた物质の构造解析を行う上で、ナノプラズマが生成される反応素过程を正确に知り、考虑したうえで解析を行うことが必要不可欠であることを示しています。超强力X线と物质との相互作用に関する问题をひとつひとつ解决していって初めて、厂础颁尝础を用いて、これまで见えなかった超微细?超高速な现象を见ることも可能になると期待されます。

用语解説

*1 クラスター
原子?分子が复数个集まって生成した集合体のことをクラスターと呼ぶ。不活性な原子でも弱い分子间力(ファンデルワールス力)により数个から数万个を超えるサイズのクラスターを生成することができ、気体でも固体でもないその中间にある状态。

*2 X線自由電子レーザー(XFEL:X-ray Free-Electron Laser)
X線領域で発振する自由電子レーザー(Free-Electron Laser)であり、可干渉性、短いパルス幅、高いピーク輝度を持つ。自由電子レーザーは、物質中で発光する通常のレーザーと異なり、物質からはぎ取られた自由な電子を加速器の中で光速近くに加速し、周期的な磁場の中で運動させることにより、レーザー発振を行う。

*3 SACLA
理化学研究所と高辉度光科学研究センターが共同で建設した日本で初めてのXFEL施設。科学技術基本計画における5つの国家基幹技術の1つとして位置付けられ、2006年度から5年間の計画で整備を進めた。2011年3月に施設が完成し、SPring-8 Angstrom Compact free electron LAserの頭文字を取ってSACLAと命名された。諸外国で稼働中あるいは建設中のXFEL施設と比べて数分の一というコンパクトな施設の規模にも関わらず、 0.1ナノメートル以下という世界最短波長のレーザーの生成能力を有する。

*4 ナノメートル
1メートルの10亿分の1。

*5 プラズマ
同じ空间内に正の电荷をもつイオンと负の电荷をもつ电子が混在している状态。気体、液体、固体に次ぐ第4の状态とも呼ばれる。

*6 内殻軌道
原子や分子中の电子は电子轨道に収容されている。原子核に近い电子轨道を内殻轨道と呼び、内殻轨道に収容されている电子を内殻电子と呼ぶ。

*7 電子ボルト
エネルギーの単位。1电子ボルトは约1.6×10-19ジュール。

论文情报

雑誌名:Scientific Reports 5, 10977 (2015) 
论文タイトル:Nanoplasma Formation by High Intensity Hard X-rays 
着者名:T. Tachibana, Z. Jurek, H. Fukuzawa, K. Motomura, K. Nagaya, S. Wada, 
P. Johnsson, M. Siano, S. Mondal, Y. Ito, M. Kimura, T. Sakai, K. Matsunami, 
H. Hayashita, J. Kajikawa, X.-J. Liu, E. Robert, C. Miron, R. Feifel, J. P. Marangos, 
K. Tono, Y. Inubushi, M. Yabashi, S.-K. Son, B. Ziaja, M. Yao, R. Santra, K. Ueda 
顿翱滨番号:10.1038/蝉谤别辫10977&苍产蝉辫;

お问い合わせ先

东北大学多元物质科学研究所教授 上田 潔 (うえだ きよし)

電話 022-217-5381

E-mail ueda@tagen.tohoku.ac.jp

京都大学大学院理学研究科 教授 八尾 誠 (やお まこと)

電話 075-753-3774

E-mail yao@scphys.kyoto-u.ac.jp

広岛大学大学院理学研究科 助教 和田 真一 (わだ しんいち)

電話 082-424-7401

E-mail swada@sci.hiroshima-u.ac.jp

理化学研究所 広報室 報道担当

電話 048-467-9272

E-mail ex-press@riken.jp

高辉度光科学研究センター 普及啓発課

電話 0791-58-2785

E-mail kouhou@spring8.or.jp

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