平成27年7月29日
国立大学法人広岛大学
独立行政法人国立病院呉医疗センター
「うつ病改善に重要な神経栄养因子の分泌」に抗うつ薬のグリア细胞への薬理作用が関与
~ 脳内の神経栄養因子を速やかに増加させる作用を併せもった新規の抗うつ薬の開発へ期待 ~
本研究成果のポイント
- 従来の抗うつ薬が、神経细胞でのモノアミン再取り込み阻害作用(※1)だけでなく、脳の构成细胞の一つであるグリア细胞から、うつ病改善に重要な神経栄养因子を分泌する机构を解明
- グリア细胞からの神経栄养因子分泌作用の発现に必要な抗うつ薬の浓度が、临床において治疗効果発现に必要な期间(2~3週间)抗うつ薬を服薬した际の脳内浓度に类似し、治疗効果が発现するまで数週间要することへの関与を示唆
- 新たな薬理作用がグリア细胞にもあることが判明し、脳内の神経栄养因子を速やかに増加させる作用を併せもった新规の抗うつ薬の开発につながることが期待
概要
うつ病はストレスの多い现代社会において患者数が増加しており、しかも罹患者の自杀率の高さが社会问题にもなっています。うつ病には抗うつ薬が有効です。しかし、抗うつ薬の治疗効果が発现するには、抗うつ薬を2~3週间饮み続ける必要があります。ところが、なぜ抗うつ薬を数週间饮み続ける必要があるかの理由は明らかにされていませんでした。
また、神経细胞でのセロトニンなどのモノアミン再取り込み阻害作用も、抗うつ薬の临床効果に重要であることが以前から言われていましたが、临床効果が现れるまでには、その阻害作用発现に必要な浓度よりもはるかに高い抗うつ薬の浓度がうつ病患者の脳内に存在していることが知られていました。
今回、広島大学大学院医歯薬保健学研究院の薬効解析科学研究室?仲田 義啓教授らと国立病院機構呉医療センター中国がんセンターの臨床研究部?竹林 実副部長らの共同研究グループは、抗うつ薬を飲み続けた場合に脳内に存在すると推定される比較的高濃度の既存の抗うつ薬が、モノアミン神経への作用だけでなくグリア細胞への作用を介して、神経栄養因子を誘導することを発見しました。
本研究成果は、平成27年7月16日に科学誌「Journal of Neurochemistry」のオンライン版に掲載されました。
発表论文
着者名
Naoto Kajitani, Kazue Hisaoka-Nakashima, Mami Okada-Tsuchioka Mayu Hosoi, Toshiki Yokoe, Norimitsu Morioka, Yoshihiro Nakata and Minoru Takebayashi
论文题目
Fibroblast growth factor 2 mRNA expression evoked by amitriptyline involves ERK-dependent EGR1 production in rat primary cultured astrocytes.
掲载雑誌
Journal of Neurochemistry, Impact factor 4.281
研究成果の概要
神経栄养因子が何故うつ病を改善させるのに重要なのかは、最近、うつ状态の脳内では神経栄养因子が不足している结果、脳神経の活动が低下するので「うつ状态」になる可能性が示唆されています。
研究グループは、抗うつ薬を数週间の服薬した场合に想定される脳内浓度で、比较的高浓度のアミトリプチリンをラットの脳から培养した神経细胞とグリア细胞の星状胶细胞(アストロサイト(※2))に作用させたところ、神経栄养因子の一つの塩基性线维芽细胞増殖因子が培养神経细胞からではなく、アストロサイトから产生されることを确认しました。また、贰骋搁1(※3)蛋白合成のプロセスが必要であることも明らかにしました。
さらに、アミトリプチリン以外に临床で使用されている抗うつ薬についても、同様の検証を行った结果、塩基性线维芽细胞増殖因子などの神経栄养因子を増加させる作用を确认しています。
低浓度の抗うつ薬では発现しないグリア细胞からの神経栄养因子分泌作用が、临床における抗うつ薬治疗効果が表れる脳内浓度で発现することから、治疗効果が発现するまで数週间要することへの関与が示唆されます。
今后の展开
本研究成果から、従来の抗うつ薬の新たな薬理作用がグリア细胞にもあることが判明し、脳内の神経栄养因子を速やかに増加させる作用を併せもった新规の抗うつ薬の开発や抗うつ薬の适量投与などにつながることが期待できます。
用语解説
(※1)モノアミン再取り込み阻害作用:神経から游离されたモノアミンは神経伝达物质としてそれぞれの受容体に作用した后、神経やグリア细胞に速やかに取り込まれるが、その取り込みを阻害すること。
(※2)EGR1:early growth response1(初期増殖応答因子1)の略で、細胞刺激の早期に活性化される転写因子のひとつで、細胞の分化、増殖、分裂などに関与する。
(※3)アストロサイト:中枢神経系に存在する细胞で、グリア细胞の一つ。神経细胞の机能调节や构造维持に関与している。
研究に関するお问い合わせ先
広岛大学大学院医歯薬保健学研究院薬効解析科学研究室
教授 仲田 義啓 (なかた よしひろ)
罢贰尝:082-257-5310
贵础齿:082-257-5314
贰-尘补颈濒:测苍补办补迟补*丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫
独立行政法人 国立病院呉医療センター 中国がんセンター
精神科?临床研究部
科長?副部長 竹林 実 (たけばやし みのる)
罢贰尝:0823-22-3111
贵础齿:0823-21-0478
E-mail mtakebayashi*kure-nh.go.jp
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