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研究井戸端トーク#9 开催记録

研究井戸端トーク#9『海外共同研究の扉を开く』を开催しました

<日時>  2025年1月30日(木) 16:30~18:00
<場所>  広島大学きてみんさいラボ&オンライン(Zoom)ハイブリッド開催
<参加者> 延べ37名(広島大学および他大学の教職員?大学院生など)
<プログラム>
话题提供者からの短い话题提供后、自由な対话
 司会:
   教授(広岛大学大学院医系科学研究科、社会系歯学)
 话题提供者:
   教授(広島大学大学院先进理工系科学研究科、生態学)
   准教授(広岛大学大学院医系科学研究科、スポーツリハビリテーション学)
   准教授(広島大学大学院人间社会科学研究科、臨床心理学)
<主催>広島大学 未来共創科学研究本部 研究戦略部 研究戦略推進部門
 

研究者のざっくばらんなおしゃべりが好评の「研究井戸端トーク」。第9回のテーマは「海外共同研究の扉を开く」です。海外共同研究を実践する3人の先生方が登坛し、海外共同研究のきっかけのつかみ方から、海外研究者とのコミュニケーションの工夫、共同研究を进めていくうえでのポイントなどを自身の経験に基づいて绍介。司会进行は歯科医师で口腔と全身の健康を研究する広岛大学の内藤真理子先生が务め、质问タイムには会场およびオンラインの参加者からさまざまな质问が飞び出しました。
海外共同研究入门者から上级者まで、役に立つこと间违いなしのヒントがたくさんつまったイベントレポートをお届けします。

ひろティー?とお出迎え

きてみんさいラボで初めて开催しました

保坂哲朗教授からの话题提供

海外での“浓い”経験は人生の宝!现地の人と同じ言叶で距离を缩めよう

最初の话题提供者は生态学が専门の保坂哲朗先生。人と自然、とくに昆虫との相互作用に着目し、持続的な関係性の构筑をめざして研究に取り组んでいます。现在进行している保坂先生の海外プロジェクトは大きく3つです。

1つ目は、热帯雨林のタネを食べる昆虫を片っ端から调べるというもの。热帯雨林でみられる一斉开花という现象とそのタネだけを食べる昆虫の関係を、マレーシア森林研究所と共同で研究しています。2つ目は、环境にも人にもやさしいアブラヤシ园の研究。アブラヤシの洗剤は「环境にやさしい」と謳われていますが、现地では除草剤の多用などが环境に大きな负荷を与えているのが実情です。そこで除草剤使用に代わる家畜の放牧などについて、マレーシア?プトラ大学と连携して研究しています。そして3つ目は、东南アジアのフン虫データベースプロジェクト。フン虫は热帯雨林の生物多様性の指标となる昆虫ですが、フン虫の种类を同定できる分类学の専门家は非常に少ないうえ、高齢化の问题も。そこで2人の専门家に协力してもらいデータベース化を进めています。このプロジェクトはシンガポールの南洋理工大学との二国间交流事业(日本学术振兴会)です。

研究费の申请については、その意义を强调するほか、相手国のニーズを反映することで説得力が増すといいます。二国间交流事业は、研究テーマが社会贡献になるというだけでなく、科学的な意义についてもしっかり书いて、3回目の申请で採択されたそうです。

3つの海外プロジェクトを进める保坂先生ですが、共同研究のきっかけは、研究者同士のつてや东南アジア留学生のつながりなど「たまたま」が多いとか。ただ、自分よりレベルの高い相手との共同研究が自身の成长につながるとアドバイスしました。では共同研究が决まったとして、现地の研究者とはどのようにコミュニケーションすればよいのでしょうか。「同じ言叶を话し、同じ物を食べることが大事ですね。私もマレー语のテキストと最低限必要な20単语ほどを殴り书きしたメモを指导教员に渡され、现地に置き去りに(笑)。おかげでマレー语が上达しました」

最近はご家族も増えて、频繁には海外に行けないという保坂先生。そこで学生や相手国出身の留学生、相手国侧の研究者に力を借りてプロジェクトを进めているそうです。国内や现地にサポーターを増やすことも大事だと指摘しました。「正直言って、国际共同研究は大変です。しかし海外での“浓い”経験や人とのつながりは人生の财产になりますので、恐れずに最初の一歩を踏み出してほしいと思います」とトークを缔めくくりました。

前田庆明准教授の话题提供

学会でおもしろいと思ったらすぐ声をかけよう!コミュニケーションツールに折り纸も

理学疗法士の资格を持つ前田庆明先生は、研究者としてはスポーツ関係のほか高齢者の健康増进やジュニアアスリートのサポートにも携わり、「现场で上がってくる研究课题を大事にしている」とのこと。海外共同研究にも积极的に取り组み、ドイツのムルナウ外伤センター研究所と超音波の动作解析を使った外反母趾の研究、アメリカのマーケット大学とストレッチングの研究、またケンタッキー大学および香港理工大学とは足関节装具が人体に与える影响についての国际共同研究を进めています。

数々の海外共同研究の机会を前田先生はどのように得ているのでしょうか。「学会でおもしろい研究だと思ったら、すぐにその研究者に话しかけます。これまでの共同研究はすべてそこから始まりました」と前田先生。学会から帰ったらすかさずメールをして、相手方の研究室を访ねたいと伝えます。たいてい快诺してくれるので、いざ出発。直接会って、お互いの研究について话し合います。相手方との距离を缩めるために、前田先生はちょっとした“仕込み”をしていくのだそう。「长时间おしゃべりするのはあまり得意ではないので、日本文化を伝えられるような小道具を持っていきます。たとえば折り纸を一绪に作ると意外と盛り上がります。百均で売っているような対戦型のおもちゃもいいですね。一気に距离が缩まって、共同研究の话につながることがあります」

海外共同研究に取り组むべき理由について、前田先生は论文执笔时のメリットという観点から、①世界の研究者と研究デザインを検讨できる、②フィードバックをもらえるため研究の质が向上する、③投稿するジャーナルについてアドバイスがもらえるという3つを挙げました。また、実际に前田先生が共同研究者からもらった助言に基づき、リジェクト(不採用)経験者ほど採択率は上がるのでどんどん论文を出す、投稿したら次の论文を书く、レビュー依頼は积极的に受ける、仲间を増やすといった论文执笔时のポイントを绍介。英语论文を书く强い味方として、広岛大学の英文校正费助成制度にも言及しました。

海外共同研究だけでなく、大学院生の留学机会の増加にも取り组んでいる前田先生。渡航には院生を同伴して、海外研究のときめきを感じてもらうとともに、相手方研究者には留学生の受け入れをお愿いしています。最后に前田先生は、「人が集まる国际学会には运命的な出会いがあるので、积极的に参加するのが大事」だと述べ、トークを终えました。

上手由香准教授の话题提供

コロナ祸でオンラインでの海外共同研究に――言叶の壁もチームの力で乗り切った

上手由香先生は、临床心理士?公认心理师としてカウンセリングを実践しながら、トラウマ?复雑性笔罢厂顿について研究しています。「保坂先生、前田先生と异なり、私の话は受け身な研究者が何とか一歩を踏み出して、初めて海外共同研究をやってみた、という体験记です。これから海外共同研究に挑戦してみたい、同じような受け身タイプの研究者には参考になるのではないでしょうか」と话します。

英语が苦手で、国际学会でもポスター発表が関の山だったと自己绍介する上手先生ですが、2019年の夏に同じ心理学讲座を受け持つ亲しい先生からの绍介で、リトアニアのビルニュス大学の研究者と共同研究することになりました。研究テーマは「日本?リトアニアにおける青少年の复雑性笔罢厂顿とレジリエンスの国际比较研究」。复雑性笔罢厂顿の评価尺度を作成する研究で、东アジアでは初となること、日本とリトアニアは自杀率の高さが共通していることを挙げて、二国间交流事业に见事採択されました。

初めての海外共同研究で、リーダーも务めることになった上手先生ですが、国内チームの若手の先生たちの协力が励みになったと振り返ります。また若手の先生たちにとっても论文执笔の机会となり、お互いにとって良い関係になったようです。ただ、共同研究のスタートが运悪くコロナ祸と重なってしまったため、渡航が中止され、ミーティングはもちろん调査や成果発表もすべてオンラインに。英语がよく闻き取れず本当に苦痛だったと明かす上手先生ですが、相手方の配虑やチームの助けを借りて无事乗り越えられました。

ビルニュス大学との海外共同研究を振り返って、上手先生は相手方のスピード感に圧倒されたと言います。「リトアニアの共同研究者はヨーロッパでの研究の第一人者であるうえ、ヨーロッパ各国のデータがすでにそろっているところへ日本のデータを加える形でしたから、これまで体感したことのないようなスピードで研究が进みました」

今回の海外共同研究は同じ分野の先生の绍介で始まったことから、身近なところにきっかけがあるものだと意外に感じられたそうです。上手先生は、海外共同研究におけるチーム力の重要性や、英语力が课题であることと础滨通訳の进歩に期待したい旨を挙げ、今回の経験を、新しく始まるニュージーランドの研究者との共同研究に生かしたいと语りました。

参加者も含む自由な対话


话题提供者の先生方のお话のあとは、会场およびオンライン参加者からの质问タイムが设けられ、院生や大学职员の方から质问が出されました。质问と回答をいくつかご绍介します。
 

――研究に対する热量が相手方と违ったりするとバランス调整が必要になるかと思うのですが、お互いにウィンウィンで研究后も良好な関係をつなげていくためのアドバイスをお愿いします。

保坂:やはり热量が违うと継続は难しいので、相手方も同じくらい热量があるテーマで始めるのがよいと思います。経験上、学生がエキサイティングできれば続くので、学生を巻き込むのはおすすめですね。

前田:あまり相手方がウィンになることは多くなくて、こちらが「ありがとう」という感じですね。ただ一绪に论文を出すというのは相手方にとってもつながる理由になります。日本が好きな人なら、日本に来てもらえる机会を提供するなどして友好関係を筑いています。

上手:リトアニアの共同研究者には「とにかく日本に行ってみたい」という兴味があったようです。また、相手方は论文の执笔を进められたという点でメリットが大きかったのではないかと思います。

――论文を书くときに、第一着者や责任着者は、どのように、いつ决まるのでしょうか。

保坂:分野によっても違うと思いますが、僕の研究室では第一著者は書いた人、責任著者(=連絡著者、corresponding author)はその論文に責任を取れる人です。指導教員がなるときもありますし、指導教員があまり関与していなかった場合は第一著者がなることもあります。

上手:あとからお互いにモヤモヤしないように、书く前に第一着者や、共着に入れる人、お互いの国から共着を出すことなどを决めています。
 

――渡航が难しくオンラインでの共同研究となった场合、ミーティングの进め方や资料?分析结果の共有方法についてのアドバイスをお愿いします。

上手:私の场合、相手方からオンラインのプラットフォームを绍介してもらったのですが、情报量が多すぎてうまく使いこなせず、结局メールなど従来の方法を使ったやり取りをしていました。

前田:僕も基本的にはメールでのやり取りです。キックオフのミーティングのように、方向性など重要事项を决める会议では、しっかりスライドを作ってプレゼンしています。アジェンダも用意しておくと进行が円滑ですね。会议の最后に次回の会议もどうするか决めておけば、普段はメールで十分だと感じています。

保坂:何かを决めるなど、情报を正确に伝えるには文字のメールのやり取りがよいですね。ただ相手のニュアンスが文章だとわかりにくかったり、表情が知りたいときにはオンラインの方がメリットがあります。

 ――前田先生は、大学院生をたくさん留学させていらっしゃるそうですが、その场合の资金はどうしているのですか。

前田:自分で获得してくる学生もいますが、そうでない学生には、留学させられるのではなく、自分で行くにはどうすればいいのか?と考えてもらえるような道筋を立てるようにしています。
 

――広大の英文校正费助成制度のような学内外の支援や补助の情报は、どこから仕入れているのでしょうか。広报の参考にしたいので教えてください。

保坂:基本的にはメールで回ってくるので、それをチェックしています。

前田:僕は毎日「いろは」(広大の全学情报共有基盘システム)を见ています。実は、メールで回ってくる情报は、先にいろはの「新着情报」に掲载されるんですよ。お得な情报を见つけたらすぐに院生に回覧しています。
 

――公司とも共同研究をされるのでしょうか。

保坂:私が代表のプロジェクトではありませんが、アブラヤシ园の植林プロジェクトに公司が颁厂搁活动の一环として参加したことがあります。近年、消费者の意识も环境保全に向かっていますから、环境分野での公司とのコラボレーションが広がっていくのではないでしょうか。いまは公司とパイプを持つ先生が桥渡しとなっていますが、公司と研究者をマッチングするシステムがあるといいですね。

前田:日本公司とは一绪にいろいろな研究をしています。そのなかで、海外、とくにアジアの公司と共同研究できそうなテーマがあるのですが、どうやって発信すればいいのか公司も头を悩ませているので、やはりマッチングシステムがあると便利ですね。
 

研究井戸端トークを终えて

それぞれの方法で海外共同研究という新たな世界へ

内藤 真理子 教授

3人の先生方のお话をお闻きし「海外共同研究の扉を开く」ことは、充実した人生につながることなのだと感じました。もっとも、その「扉」の开け方は人それぞれです。若手研究者へのメッセージや今后の抱负として、保坂先生からは、学会での出会いに限らず、论文を読んでおもしろいと思ったときも着者に直接コンタクトしてみるとよいというアドバイスもいただきました。先生ご自身、そのようにやり取りして筑いたつながりが国内外にたくさんあるそうです。扉が闭まっていたら开くまで何度でも挑むという前田先生は、开いたところから得られる代えがたい経験を大学院生と共有できるよう、これからも扉を开けていくと意気込まれていました。また、今回初めて扉を开けられた上手先生は、保坂先生、前田先生のお话から刺激を受けつつ、自分なりにがんばっていきたいと抱负を语られました。
海外共同研究の扉を积极的な人はどんどん开けて、そうでない人もちょっと开けて覗いてみれば、そこには新しい世界が広がっているのではないでしょうか。
 

オンライン参加者も一绪に记念撮影

【お问い合わせ先】
未来共創科学研究本部 研究戦略部 研究戦略推進部門
研究井戸端トーク担当
ura■office.hiroshima-u.ac.jp (■を@に変更してください)


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