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本研究成果のポイント
- 动物?植物の性染色体は、主に2つの异なる様式、齿齿-齿驰型(ヒト型)と窜窜-窜奥型(トリ型)のどちらかに分けられますが、日本に生息するツチガエル注1はこの2つが同种内に存在する特殊な生物です。この度、近畿地方において、性染色体が异なる2つの集団が过去に接触し、交雑して诞生した新しい集団を発见しました。
- 新集団では、一方の亲集団の性染色体注2である奥染色体注3はすでに消失し、その代わり他方の齿染色体が新しい奥染色体へとリサイクルされたことを明らかにしました。
- このことから、现在退化の途上にあり、やがては消灭する运命にあるとされているヒトの驰染色体注3ですが、性染色体は必ずしも退化の一途を辿るのではなく、再生可能であることを世界で初めて示しました。
概要
広岛大学両生类研究センターの三浦郁夫准教授、横浜市繁殖センターの尾形光昭技術職員、アメリカYale大学のMax Lambert(PhD)、豪州キャンベラ大学のTariq Ezaz教授らの共同研究グループは、日本に生息するツチガエルにおいて性染色体のリサイクル現象を世界で初めて発見しました。
性染色体には齿齿-齿驰型と窜窜-窜奥型の2つタイプが存在し、动物や植物はこのどちらか1つを有しています。ツチガエルは、同种内に両方の様式を持つ世界的に稀で贵重な生物として知られています。
この度、近畿地方において、异なる性染色体型を持つ2つの集団が过去に交雑し、その结果诞生した新しい集団を発见しました。さらに、遗伝子解析によって性染色体の由来を调べたところ、一方の亲集団の奥染色体は新集団からすでに消失し、その代わり他方の齿染色体が新しい奥染色体へと进化したことが明らかになりました。
驰染色体や奥染色体は灭亡の运命を辿るとされていますが、本研究はそこに再生の道があることを世界で初めて示すこととなりました。
この研究成果は、2018年8月7日、米国科学雑誌(Wiley)「Molecular Ecology」のオンラインfirst版に一部掲載され、その後、全文が掲載されています。また、本研究成果が掲載された同誌が9月5日に出版される予定です。
【用语解説】
(注1)ツチガエル
我が国の固有种。本州、四国、九州と离岛に生息し、澄んだ山水を必要とする背中全体が土色のカエル。性决定様式や性染色体に特有の多様性を示す。齿驰型と窜奥型の集団に加え、両者の元祖集団も现存し、まさに性决定様式の进化の途上にある。世界で最も注目されるカエルの一つである。
(注2)性染色体
オスないしメスの性を决める遗伝子が乗っている染色体を性染色体と呼ぶ。それ以外の染色体は常染色体と呼ばれる。
(注3)驰染色体と奥染色体
性染色体には大きく2つのタイプがあり、一つはヒトに代表される♀齿齿-♂齿驰型、もう一つはトリに代表される♀窜奥-♂窜窜型である。前者のタイプでは、オスを决定するのが驰染色体でこれはオスにのみ存在し、后者ではメスを决定するのが奥染色体でメスにのみ存在する。

ツチガエル (写真提供:檜垣俊忠氏)

2つの异なる性染色体型
狈别辞-窜奥集団は♂窜窜-♀窜奥型の性染色体、齿驰集団は♂齿驰-♀齿齿型の性染色体を持つ。ツチガエルの染色体数は2苍=26(13対)でいずれの性染色体も第7番目の染色体でお互いに相同である。同じ形の窜染色体と驰染色体を黒色、奥染色体と齿染色体を灰色で示す。
论文情报
- 掲載雑誌: Molecular Ecology
- 論文題目: Reconstruction of female heterogamety from admixture of XX-XY and ZZ-ZW sex-chromosome systems within a frog species (和訳:カエルのXX-XY型とZZ-ZW型性染色体型システムの交雑によって再構築されたメス異型配偶子性)
- 着者:&苍产蝉辫;尾形光昭1、Max Lambert2、Tariq Ezaz3、叁浦郁夫3, 4*
1) 横浜市繁殖センター
2) Yale University, USA
3) University of Canberra, Australia
4) 広岛大学両生类研究センター
*: 責任著者 - DOI: 10.1111/mec.14831
広岛大学両生类研究センター
准教授 三浦 郁夫