见えにくさに悩んでいる人たちを、もっとハッピーにしたい!

大学院教育学研究科 特別支援教育学講座 (うじま かずひと)准教授
に聞きました。 (取材:広報グループ 2013.6.17 )
はじめに
弱視の人が、実際に見ることができる範囲や文字の大きさなどを測定する iPad専用の無料アプリ「日用視野測定ツール」を開発した氏間准教授。
このツールを使えば、人によって违う「见えにくさ」を客観的に测定でき、教育支援に生かすことができます。开発の経纬や今后の展望について、氏间准教授にインタビューしました。
研究内容の详细等は、をご覧ください。
一人一人の「见えにくさ」を理解し、「もっと见えやすい」环境を作っていく
先生の専门は教育学。中でも、「视覚障害教育」の分野を中心に研究されています。
「“見えにくい”とはどういう状態なのか、実際、本人にはどのように見えているのか、それが理解できると、どのようにしたらその人にとって見やすい環境を作ることができるのか分かるわけですよね。それが、私の研究の基本的なベースです。また、教育学というのは実学ですから、実際に困っている人に、その結果をどう反映していくかも重要なポイントです」 と先生。
今回开発された日用视野测定ツールを使うと、「他の场所は见えるが、右上にある文字だけが见えにくい」といった、自分では自覚しづらい见えにくさを客観的に测ることができるそうです。
「その人の见え方を私たちが少しでも理解し、それに応じた教育的支援をしていく。测定と、その结果を反映させた指导方法の连携が一つのアプリケーションなんです。そして、アプリを使うにはやはり练习が必要。练习の仕方も重要ですし、负担感なく身に付けてもらうのは、教育の一番得意な部分ですね」
【日用视野测定ツールの颈笔补诲画面。円の中心を见つめ、周囲に次々と表示される数字や文字が画面の中心からどのくらいの距离や大きさで见えるかを答える。
测定结果から、个人の见え方に応じた学习环境の整备や、教育的配虑の具体的検讨が可能になります】

颈笔补诲と他のツールを併用することで、より便利に、効果的に!
现在、先生の研究室では、10台の颈笔补诲を见えにくさに悩んでいる生徒に贷し出しています。
その他にも、拡大教科书や拡大镜、拡大パソコンといった支援ツールがあるそうですが、そうしたツールは、「学校では使いたくない」という児童生徒もいるそうです。
「でも、“颈笔补诲を使いたくない”という子は今までいないんです。どうせ使うなら、魅力的なものを使いたいじゃないですか。ただ、颈笔补诲ですべてをカバーできるわけではないので、他のものと一绪に使いながら、ということになります。既存の视覚补助具にも、それぞれメリットがありますから、併用すると、より効果的ですね」
実际に、先生の研究室にあった拡大教科书を见せていただきました。
文字が大きいので、ある教科ではふつうの教科書1冊分が、拡大教科書にすると、3冊分に! レイアウトも違うので、「何ページの表を見て~」と、先生にパッと言われても、なかなか見つけられませんでした。
「今の人たちはとっても恵まれているんですよ。拡大教科書は、小中学校のものであればすべての教科で出版されていますが、われわれの時代は拡大教科書もおしゃれな拡大読書器もなかった。でも、便利になった反面、重たい拡大教科書の入った、10キロ近いランドセルを背負って学校に行く生徒もいるんです。この点だけでも、iPadで替えられる部分は替えていったら、少しは楽になると思います」 と、先生。
颈笔补诲を使い、教科书の文字を拡大してみることもできます

自身の経験から、「见えにくさ」を科学的に解明し、改善していきたいと思うように
「障害のない人たちは、“見えるようになったんだから、重いのくらい我慢しなさい”って言いがちじゃないですか。でも、人間が幸福になる上で、そんなことを言っていていいんですか、と私は思うんです。世の中の商品開発や技術開発って、そういうことにトライしていく中で出てくるじゃないですか。テレビのリモコンだってそうですよ。人はどんどん新しいことに適応して、もっと便利なものを求めていくのが自然だし、その結果、今の社会があるわけです。その中で、なんで障害のある人だけが、“贅沢言わないの!”って言われなきゃいけないのかって思うんです。それが前提であるならば、共生社会とは言えない」 と、熱く語る先生。
そんな先生に、视覚障害について研究されるようになったきっかけを闻くと、
「ベースにあるのは、私自身も视覚障害があって、自分が见えにくくて苦労してきた、という経験です。だから、见えにくさを主には実験や调査を通じて科学的に解明して、エビデンス(根拠)を持った上で、教育の支援法やトレーニング法を提案した方がいいんじゃないかと思ったんです」
相手の気持ちをまずは理解し、全力をつくす
先生の研究室では、金?土?日曜日に、视覚障害の人を対象にした教育相谈を附属特别支援教育実践センターで行っていて、见えにくさに悩んでいる方やそのご家族?学校の担任の先生などの関係者が、広岛県内はもとより県外からも相谈に来られるそうです。
「见え方も年齢も手指の器用さも、机械との亲和性も人によって违うんです。検査したり、実际にやりとりしたりする中で、どんなアプリを使ったらいいのか大体见えてくるんですが、それがうまくいかないケースがある。“もっとこういうふうにできたらいいのに”、という新たなニーズが出てくることもあります。なかなかすぐには答えを出せないんですが、そうなったときは、研究室をあげて调べています」
指导されている学生たちに、先生がいつも言われていることがあるそうです。
「わざわざ広岛大学まで足を运んでくださった人たちのことをまず理解しよう、と言っています。来ていただいた人には、我々の研究室に対する大きな期待がある、それを忘れないようにと。そうすれば、目の前の人に全力をつくすのは当たり前。それが、まずは一番の基本だと思います」
相谈に来られた人と、真挚に向き合う先生の姿势が伝わってきました。

颈笔补诲を使って説明をする氏间先生
肯定的な意见も、そうじゃない意见も大歓迎!
先生に、どんな时にやりがいを感じるのか闻いてみると、
「教育相談に来られた人やiPadを貸し出している生徒さんと、よくフェイスブックでやりとりをするんですが、“こういうところが便利ですね”と言ってもらうと、やっていてよかったなと思います。もちろん、“もっとこうならないですか”というリクエストも歓迎です。それだけ使い込んでくれているということですから。なんらかのレスポンスがあるとありがたいですね。肯定的な意見が出るとやっていて良かったなと思うし、リクエストが出ると、これから研究する内容がまた増えたなと思う。そう考えると、早めにどんどん言ってもらえるといいですね」 と、語ってくださいました。
视覚障害は谁にとっても身近な问题。そういう人たちをもっとハッピーに!
研究者としての今后の目标を闻くと、
「教员を养成する场の研究者として、视知覚に関する基础的な研究は重要だと思うので続けていこうと考えています。
それだけではなく、研究成果を臨床で活用したときにどのように利用されるのかを常に考え突き詰めていって、それこそ『視覚障害教育学』という学問が打ち立てられるくらいまで、基礎的な理論と臨床を体系的に構築していきたい」 と、語ってくれました。
最后に、
「目が見えにくい人って、40歳~50歳をすぎたらぐっと増えてくる。意外に身近なんですよ、視覚障害者の教育って。私たちがやっていることは、学校教育の中ではあまりメジャーではないですが、社会全体で捉えると、恩恵を受ける人がかなり多い分野でもある。そう考えると、視覚障害教育というものをもっと学問として体系づけていくのは、社会全体としても有意義なことだと思います。見えにくさで悩んでいる人たちをもっとハッピーにしていきたいですね」 と、笑顔で話してくれました。

学生が作った颈笔补诲を利用したツール。
目と口を切り抜いたパンダの絵を颈笔补诲に重ねると、目と口の部分が动き、笑い声をあげます。
&苍产蝉辫;あとがき
日用视野测定ツールを使うと、「见えにくい」という主観的な、かつ、他人には説明しづらい状态を学校の教室などの日常生活の中で客観的に测ることができます。これってすごいことだなと思いました。
先生のお话を闻いて、「困っている人たちをもっとハッピーにしたい!」という热い思いが伝わってきて、その思いがアプリ开発につながったのだなと感じました。先生によると、良い方の矫正视力が0.1~0.5の人は、全国で150万人以上いるそうです。しかも、年齢を重ねるにつれて、白内障などの目の病気で视力は下がってくることが多いと言います。実は、谁にとっても身近な问题なんですね。よりよいアプリの开発を目指し、研究を进めている先生の、生き生きとした表情が印象的でした。(惭)