半导体结晶の新たな可能性を追求し、世界に挑む

大学院先端物質科学研究科 量子物質科学専攻 量子光学物性研究室 (とみなが よりこ)助教
に聞きました。(取材:広報グループ 2014.1.8)
はじめに
半导体薄膜の结晶成长を専门に研究されている富永先生。学生时代の2010年には、光通信の大容量化に必要な半导体レーザー用新材料の可能性を示した功绩が认められ、「ロレアル─ユネスコ女性科学者日本奨励赏」を受赏。また最近では、第7回広岛大学女性研究者奨励赏(※)を受赏しました。
半导体分野で若くして活跃されている富永先生に、研究の醍醐味や大切にしている流仪を闻きました。
(※)女性研究者支援事业を一层推进し、女性研究者の研究意欲の一层の増进を図るため、本学で実施しているもの。
(丑迟迟辫://飞飞飞.丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫/苍别飞蝉/蝉丑辞飞/颈诲/18297)○研究课题名:「希釈ビスマス系滨滨滨-痴族半导体混晶のバンド构造の解析
现在は、「テラヘルツ波」に関する研究を中心に
「テラヘルツ波」とはあまり闻き惯れない言叶です。これはいったいどのようなものなのでしょうか。
「テラヘルツ波」とは、10の12乗=テラの周波数をもった电磁波のことです。电磁波の中でも、ラジオやテレビに使われている〝电波?は低い周波数帯、可视光や齿线などの〝光?は高い周波数帯に当たり、古くから研究が行われていて、実用化が进んでいます。テラヘルツ波は、こうした〝电波?と〝光?の间の领域に位置しています。これまではテラヘルツ波の発生検出が技术的に难しく、长い间ほとんど使われてきませんでした。しかし、15~20年前からの电磁波を発生させるための半导体技术等の进展に伴い、世界中で盛んに研究されるようになりました。
一般的に、物质は化学结合しており、原子と原子の间には固有の振动が见られます。その固有の振动が顕着に现れる领域の一つがテラヘルツ帯であり、振动によって物质の中にどのような结合が含まれているのかを知ることができます。例えば、これまで物质の中にどのような成分が含まれているのかを调べるには、物质を粉末にするなどして破壊する必要がありましたが、テラヘルツ波を用いれば、物质を壊すことなく、非常に精度よく调べることができるのです。テラヘルツ波の研究が进むことによって、医薬品や顿狈础、タンパク质、がん细胞などの生体试料の诊断、空港における麻薬などの禁止薬物の検出、絵画の年代推定?真贋判定、更には高速大容量通信の実现など、様々な分野への技术応用が期待されています。
富永先生は、テラヘルツ波を発生させたり、検出するための素子(=デバイス)を作る研究を进めています。
「テラヘルツ波を応用した技术は、普及する环境が徐々に整いつつある段阶です。テラヘルツ波を発生させたり、検出したりするには、テラヘルツ波の発生素子にレーザー光を当てる必要があります。しかし、现在のレーザー発生装置は大型でスペースを取り、なおかつコストも高く、公司や空港などに导入するには课题が残ります。そこで、テラヘルツ分野では、コンパクトで低価格な『ファイバーレーザー』に光源を変えられないかという考えがあります。ファイバーレーザーは、従来のレーザーと光の波长が异なるため、新しい半导体デバイスをいかにテラヘルツ波に适応させることができるかが研究の课题となります」と先生。

研究概要について説明する富永助教

テラヘルツ帯を示す资料
きっかけは、バンド构造の美しさ
先生が半导体分野に进もうと思った动机は何だったのでしょうか。大きなきっかけが2つあったそうです。
「もともと物理がすごく好きでした。高校时代の物理の先生から、〝超伝导?という技术が実现すれば、砂漠の真ん中の太阳电池で作った电力を地球の里侧まで损失することなく运べるという话を闻き、『これはすごいことだ!』と惊き、兴味を持ちました。その流れで、〝超伝导体や半导体?のような电子材料について学びたいと少しずつ考えるようになりました」と最初のきっかけを话す先生。
さらに、半导体分野を研究したいと强く思うようになったのは、学部3年生のときに受けた授业だと言います。
「『半导体工学』という授业の中で、〝バンド构造?についての话を闻き、『なんて美しいのだろう!』と感动しました。半导体结晶中では、结晶を构成している原子一つ一つが、电子に云のように取り囲まれており、その电子云がバンド(帯)を形成します。このバンド构造内の电子の动きを议论することによって、半导体の特性(人间でいう性别、性格、颜の形や肌の色などにあたる个性)が説明できることを授业で知り、半导体の美しさと奥深さを知りました」と2つ目のきっかけを话してくれました。
研究は地味で大変、でも成果は世界が认めてくれる
日々の研究は、「本当に地味で、苦労の连続だ」という富永先生。先生の研究では、サンプル1つを作るだけでも最低6时间、长いものでは12时间以上かかります。そして、论文や学会発表に使うのに十分なデータを採取しようとすると、軽く3か月はかかってしまいます。いい加减なことをしてしまうと、2週间、1か月かけてやってきたことが全て无駄になってしまうという恐ろしさがあります。しかし、成果が出たときは、そんな苦労が吹き飞んでしまうくらい嬉しいそうです。
「不可能と考えられていたことが、私の目の前で测定できた!その瞬间は、全身の血が沸腾するくらい兴奋します。この感覚は一度味わったら、やめられませんね」と先生。
学生时代には、半导体分野では扱うのが难しいとされていた骋补础蝉叠颈(ガリウムヒ素ビスマス)からのレーザー光を初めて确认した研究成果が认められ、サンフランシスコで开催された国际会议に招かれました。そのときに、研究の〝やりがい?を感じたと言います。
「论文审査员の方に『骋补础蝉叠颈でこんなことができるなんて思いもしなかった!』とコメントをもらえたことはとても嬉しくて、今でも覚えています。学生だから???ということは一切抜きにして、海外の人が私の成果を评価してくれた、认めてもらえたと実感しました。普段は地味だけれども、世界で谁も见たことのない景色を初めて自分が见ることができるかもしれないという期待感と、成果を积み重ねれば必ず人は认めてくれると强く信じる心。これらが私の気持ちを研究へ突き动かす原动力となっています」

装置のメンテナンス作业も大変と话す富永助教

テラヘルツ波発生?検出测定系
学生には、「なぜ?なぜ?なぜ?」と、もっと考えてほしい
主に学部3年生が受讲する「レーザーと光通信」という実験の授业を担当している、富永先生。授业をしていて、気になっていることがあると言います。
「学生がすぐに答えを欲しがるのです。确かに、学生実験では、普段の研究とは违って答えがちゃんと用意されているものもあります。私が学生に答えをすぐに教えてしまうことは简単なことですが、结果が出るまでの过程を『なぜ?なぜ?なぜ?』と追求し、考えることこそが実験の肝であり、面白さだと私は思っています」と先生。
また、学部生の学生実験は、卒业研究や大学院での研究の初期段阶にあたると考えています。
「学部生の授业だからといって、レポートを书いて単位を取るだけの授业にするのではなく、〝研究の仕方?をしっかり身につける授业にしたいと思っています。一人でも多くの学生に実験の面白さを実感してもらいたいですね」

学生とディスカッションする富永助教

〝悪い结晶?の可能性を追求
先生の今后の研究では、〝悪い结晶?が键になるそうです。これまで半导体分野では、汚い物质が入っていない高品质な〝良い结晶?をいかに作れるかということに重きを置いてきました。〝良い结晶?では、原子が规则正しく配列されているのに対し、〝悪い结晶?は原子の配列が非常に不规则です。テラヘルツ波を効率よく発生させたり検出したりするためには、この〝悪い结晶?をいかにテラヘルツ波の発生検出に适した形にコントロールするかが键となります。
〝良い结晶?は比较的高温で生成されるのに対して、〝悪い结晶?は低温で生成されます。今后は、世の中の人がこれまであまり目を向けてこなかった低温生成结晶の可能性を明らかにし、その成果を広岛大学から世界へ発信していきたいそうです。
教科书に载る研究をしたい!
研究を进めるうえで今まで大切にしてきた信念を、今后も贯いていきたいと话す先生。
「高校生の时に本で読んで知った『教科书に载る研究をしなさい』という言叶を大切にしてきました。『教科书に载る研究』というのは、本质的で成果が多くの人に活用してもらえる研究ということです。すぐに结果の出る研究ももちろん必要ですが、结果がなかなか出ない研究でも、10年、20年と长いスパンを视野に入れて研究を行い、様々な分野で使っていただける成果が出せるよう顽张っていきたいです!

研究室の学生との集合写真
あとがき
「テラヘルツ波」「バンド构造」など、私には难解な用语もスライドを用いて优しく丁寧な説明をしてくれた先生。研究装置の写真を撮影するときも、「学生といつもチームで研究をしているので、学生といっしょに写ってもいいですか?」という言叶に先生の温かい人柄を感じました。一方で、これまでの功绩に満足することなく、「低温生成结晶の技术で世界に挑戦したい」というメッセージに研究者としての强い意志を感じました。先生の研究成果が教科书に载る日を心待ちにしたいと思います。(颈)