広岛大学の长期ビジョン ―10年から15年後の広岛大学像―
平成21年6月23日
広岛大学
本长期ビジョンは、今後10年から15年後の広岛大学像を描き出し、目指すべき方向を提示するものである。
法人化後、第一期中期目標に基づき計画を実施してきたが、ほぼ最終段階を迎えつつあり、本年6月には第二期中期目標?中期計画の素案を策定することとなる。この時点で、さらに10年から15年後の长期ビジョンを提示することは、広岛大学が高等教育機関として発展していくための道標としての意義を持つとともに、その途上でクリアすべき諸課題を構成員全員が共有して、その課題解決に向けて取り組みを進めようとするものである。
ここ10数年間の大学を取り巻く状況は大きく変化しており、特に法人化後、規制緩和や競争的環境の流れが加速し、19世紀的な近代大学の制度?組織が解体しつつある一方、それに代わる新しい枠組は立ち上がっていない。むしろ、その枠組の構築は個々の大学に委ねられ、広岛大学としての確固とした将来構想が求められている。将来構想を描くにあたり、現時点で考慮すべき事柄は多岐にわたっており、外的事項としては、運営費交付金を含む財政基盤の変動、18歳人口漸減、地方分権?道州制移行の中での地方国立大学の在り方などの問題があり、内的事項としては、大学の機能別分化?個性化と大学間連携、大学教育の質保証、教育研究拠点形成、国際化推進などの課題がある。
さらに、国からの運営費交付金等の財政支援がますます厳しくなる今後は、限られた資源の有効活用とともに、新たな資源の確保により、本学がこれまで蓄積してきた教育研究資産を承継するとともに、広岛大学の個性を活かし、大学の本来の使命である基盤的研究を確保しつつ、評価に基づく重点投資も必要となってくる。
1.本学が目指すべき方向
-ナショナル&リージョナルセンターとしての総合研究大学(*)-
理念5原则を坚持し、教育、研究及びそれらを通じた社会贡献という大学の普遍的使命を果たす。同时に、个性豊かな大学として、教育、研究、医疗及び社会贡献の各领域における地域拠点としての役割を明确なものとし、特长的な分野において全国的?国际的な展开を図る。
(1)理念5原则の再确认と具体的展开
「自由で平和な一つの大学」という建学の精神に基づき、平和を希求する精神、新たなる知の創造、豊かな人間性を培う教育、地域社会?国際社会との共存、絶えざる自己変革、という理念5原則を構成員全員が共有し、国立大学である広岛大学が知識基盤社会をリードする役割を担う知の共同体としての活動を展開する。
(2)大学としての机能别分化と个性化
日本を代表し世界をリードするナショナルセンターとしての机能と、中国?四国地方のリージョナルセンターとしての机能を併せ持つ。そのため、総合研究大学として、教养教育の充実を基盘として大学の普遍的使命を果たしつつ、特长的な分野において世界的教育研究拠点を形成する。
(3)教育と研究の高度化
これまでの広岛大学出身者に対する「堅実」、「まじめ」、「協調的」といった評価や国際的な幅広い視野を持った人材の輩出を、学士課程と大学院課程教育の実質化及び質の保証を達成する基盤とし、大学の特長として継承する。同時に、自由で独創的な社会基盤の担い手となりうる人材の養成に努める。
基盤的研究を支援する仕組みを維持しつつ、世界水準の研究プロジェクトや傑出したトップ研究者グループを選定し、集中的な支援を行うことによって、広岛大学の研究面での特長を発揮させる。
(4)教育组织と研究组织の再编による柔软な教育研究体制の构筑
大学の重要な使命である基盘的研究分野を充実?発展させる。さらに、学问の高度化?复合化への対応、社会からのニーズに対応した応用研究を展开するため、学士课程及び大学院课程教育プログラムを充実し、新しい研究分野や异分野融合型の研究を推进する。そのため、教育组织と研究组织を再编し、より柔软な教育研究体制を构筑する。
(5)革新的な大学の运営
构成员全员がいきいきと参加する知の共同体活动を実现するために、革新的な大学运営を実现する。
*総合研究大学(research university)とは、全領域の学士課程教育プログラムを持ち、大学院課程教育が充実しており、課程博士の学位授与状況が極めて良好で、活発な研究活動の下に優れた研究業績が数多くみられるなど、教育研究の拠点としての資格を備えた大学をいう。
2.教育改革の方向
-人间性の涵养と教育の质の高度化-
豊かな人间性を备え、自主?自律的に考え行动できる人材を养成する。高い水準の教育成果を保証するため、教育の质の高度化を図り、国际的に通用する教育を展开する。
(1)教养教育の充実
自ら学ぶ态度を培い、创造力豊かで、学问に里打ちされた课题解决能力を备えた人材を养成する。同时に、异分野の知を理解でき、多様な考え方を许容できる、高いコミュニケーション能力を有した人材を养成する。このため、学士课程及び大学院课程教育を通じた教养教育を充実する。
(2)学位の质の保証
広岛大学の学位授与、教育課程編成?実施及び入学者受入れの方針を明確にし、学士課程及び大学院課程における学位の質を保証するとともに、課程相互の関連性を明示する。
1)本学独自の到达目标型教育プログラムの点検?評価と改善<学士課程>
教育プログラムのシステムと个々のプログラムを点検?评価した上で、改善?充実を図るとともに、教育と学位の质の保証を目指す「プログラム制」(*)として充実する。
2)教育の体系化と整备<大学院课程>
各课程における人材养成目的に応じてカリキュラムを体系化し、研究者、教育者及び高度専门职业人の养成を行う。また、社会のニーズを踏まえ、グローバル化社会で活跃できる人材を养成する。
(3)大学院教育の国际展开
国际交流协定大学との国际连携プログラムの実践や外国人留学生の受入れを推进するとともに、日本人学生の海外派遣制度を整备?拡充し、国际的に活跃できる人材を养成する。
(4)学生への支援
修学を含む学生生活上の相谈、キャリア形成等の支援を、学生の自己実现の観点から充実?强化する。また、课外活动を学生の人间形成に资する大学教育の一环として捉え、积极的に支援する体制を整备?拡充する。さらに、本学独自の奨学金制度など、経済的支援を充実させる。
*プログラム制とは、学生の进路や具体的な教育目标に応じて、授业科目を系统的に配列し、学习者が主体的に自分のペースで履修することを促すものである。学部?学科の枠を超えて编成できる点に特徴があるが、特定の学部内で编成できる场合もあれば、几つかの学部に跨って编成されるプログラムもある。
3.研究活动の活性化
-特色ある研究を発展させるために-
総合研究大学として、现代の知识基盘社会を支える文化の伝承と発展を使命とし、広く基盘的研究の継続と充実に努力する。同时に、本学の个性や特色が表れている优れた研究を前面に掲げ、竞争的环境の中で、世界水準の研究大学としての位置付けを明确にし、発展させる。
(1)基盘的研究分野の充実
総合研究大学として、基盘的な研究分野において活発な教育研究活动を継続し、我が国の知的文化の継承と発展に努力する。
(2)世界的な教育研究拠点への展开
厳正な外部评価を基に、世界水準の卓越した成果を挙げる优れた研究拠点?研究集団への支援拡充を図り、他大学との连携や共同大学院の设置等も视野に入れ、世界的な教育研究拠点形成を目指す。
(3)研究组织の活性化
教育研究活动を活性化させるため、研究主担当制度の导入や任期制等の活用を図るとともに、努力と成果に応じた支援を行い、教育研究拠点形成の中核となる教员の増加を目指す。
4.国际戦略?社会贡献の推进
-本学の特长を活かした、世界、地域への贡献-
本学の特长を活かした国际交流?协力の展开と地域社会との连携により、世界、地域への贡献を目指す。
(1)国际大学ネットワークの强化と各种国际教育プログラムの整备
大学教育の国际化推进プログラムを発展させ、英语など外国语による各种国际教育プログラムを开発?整备し、留学生に魅力あるコンテンツを提供する。
(2)国际协力による贡献
本学が有する専门的な知见や実绩等を活用し、国际协力事业を通じて地球规模の课题解决に贡献する。
(3)ヒロシマ型平和构筑のための教育研究拠点形成
ヒロシマから発信してきた平和学を、本学の国际化の特长として位置付け、県内の诸机関等との连携も视野に入れて、平和构筑のための世界的な教育研究拠点を形成する。
(4)教育研究活动の成果の地域社会への还元
大学における教育研究活动の成果を积极的に発信し、产学官连携による知的创造ネットワークを充実するとともに、产学官连携を推进して地域社会の発展のための役割を果たす。
5.医疗系教育研究组织と病院の方向性
-中国?四国地方における医疗人の养成拠点并びに世界に発信する医科学の拠点形成-
高いレベルの医学、歯学、薬学及び保健学研究を复合的に展开し、临床に则した技术の世界をリードする开発拠点を形成する。また、中国?四国地方の医疗?保健?福祉を担う指导的人材を养成し、医疗政策の面から社会をリードする人材の养成拠点を形成する。
(1)全人的医疗の実践
身体的、精神的など病的障害に対して、全人的医疗を包括的に実践し、その基盘となる教育、研究を充実させる。
(2)特色ある先端医科学?高度先进医疗の展开
これまでに蓄積された放射線災害医学の成果を十分に活かすなど広岛大学が世界にアピールしうる特色ある先端医科学?先進医療を展開する。また、医療と他分野の融合連携を図り、再生医療やがん治療など特色ある研究、診療の拠点形成を目指す。
(3)人材养成
医学、歯学、薬学及び保健学を统合できるメリットを活かしてアジアを含めた医疗人养成のためのリージョナルセンターとして、魅力的な大学ブランドイメージを确立し、医疗人の养成を行う。
(4)诊疗施设としての机能
地域の各拠点病院との连携を図る中心的医疗机関としての机能を果たし、将来アジアのメディカルセンターの役割を担う施设として、整备?発展させる。
6.大学运営における役割分化とアドミニストレーション
-构成员が高いパフォーマンスを発挥できる大学运営-
学生は修学に、教员は教育、研究及び医疗活动に専念できる环境を整备する。教职员一体で大学运営を担うという强い意识を持ち、自主?自律性を高める财政基盘を充実?强化する。
(1)学生?教员支援业务の充実?强化
学生は修学に、教员は教育、研究及び医疗活动に専念できる环境を整备するため、専门性を备えた职员の养成を図り、学生、教员への支援业务を充実?强化する。
(2)教职员にとってやり甲斐のある职场环境の构筑
社会环境に対応した人事制度と公平な评価制度を确立し、教育、研究、医疗活动、社会贡献及び大学运営の各分野での努力と成果に応じたインセンティブを充実?强化する。
(3)先进的な男女共同参画の実现
男女ともに构成员が男女共同参画の理念を理解し、多様な意见や価値を认めあい、高めあうことができる职场环境を実现する。
(4)自主?自律性を高める财政基盘の充実?强化
知の経営体として、限りある资源を有効に活用するため、法令遵守の上、基金の充実、自主财源の确保?拡充、资产运用を含めた最大限の経営努力を行う。
(5)ユニバーサルデザインキャンパスの実现
施设?设备の有効活用策や各キャンパスグランドデザインに基づく长期整备计画を着実に実施する。また、障がい者と健常者が互いに区别されることのない修学、教育、研究及び职场环境を构筑することにより、学生、教职员及び利用者の视点に立ったユニバーサルデザインのキャンパスを実现する。
(6)IT环境の充実
大学の诸活动の基盘となるIT环境を充実し、革新的な大学运営を実现する。
「広岛大学の长期ビジョン」の策定に当たって
本学は、時代や社会が変化する中で、社会からの負託に応え、高等教育機関としての普遍的使命を果たすため、その時々に応じ広岛大学が目指すべき将来構想を策定し、改革?改善に取り組んできた。近年では、国立大学の設置形態の変更も視野に入れ、平成12年に「21世紀の広岛大学像マスタープラン」を、平成15年には「広岛大学の长期ビジョン」を策定し、平成16年の国立大学法人化という構造改革の荒波も乗り越え、大学改革に取り組んできたが、いずれもほぼ最終段階を迎えつつある。
法人化後5年の経験と様々な内的?外的要因等を踏まえ、環境変化に対応した将来の広岛大学像が必要との認識の下、新たに本长期ビジョンを策定した。内容は、ありたい理想とありうる現実、構成員をエンカレッジするような夢を語ることと、冷徹に現実を認識した内容であるという両極の緊張の中での所産である。将来の広岛大学像を描くに当たり、構成員、学生諸君からの意見を聴取し、さらには社会から意見を拝聴するため、経営協議会学外委員との意見交換を実施し、可能な限りそれらを反映した内容となっている。
本长期ビジョンを基に、本学の未来を輝かしいものにするためには、構成員がそれぞれの立場から目標達成に向けて努力を重ねることが必要であり、今後、各組織において、コミュニケーションを図りつつ、具体的なアクションプランの策定が行われることを期待したい。
最後に、本长期ビジョンを確実に進め、広岛大学の更なる発展を目指すため、構成員全員のご理解とご支援をお願いしたい。