学長式辞 平成27年度秋季学位記授与式 (2015.9.25)
本日、学位记を受けられる卒业生、修了生の皆さん、诚におめでとうございます。
平成27年度秋季学位记授与式を挙行するにあたり、広岛大学を代表して心からお祝い申し上げます。
皆さんが晴れてこの日を迎えられたのは、たゆまぬ研钻と努力の赐物であることは言うまでもありません。それと同时に、ご家族や友人、教员など、様々な人たちの理解と支えがあったことを、しっかりと心に刻んでいただきたいと思います。
ここで、「日本の植物学の父」と称された「知の巨人」である、牧野富太郎博士を绍介したいと思います。牧野博士は小学校2年で退学し、以后、独学で植物学の研究を続けました。31歳から77歳まで东京帝国大学の植物学教室に助手、讲师として籍を置きました。约40万点の标本を収集し、新种や新品种の植物1500种以上を命名しました。
実は70歳の时には、本学の前身である広岛文理科大学の非常勤讲师として学生の指导に当たっているのです。辉かしい业绩を残した牧野博士ですが、理学博士の学位を受けたのは、意外にも65歳の时だったそうです。意地を张って断ってきたが、后辈が学位を持っておるのに先辈が持っていないのは都合が悪いと勧められ、やむなく学位论文を提出した、と自伝にあります。ちなみに主论文は、本邦植物に関する研究の1000ページ余りに及ぶ英语の大论文でした。
牧野博士は学位についてこのように书いています。
「私は従来学者に称号などは全く必要がない、学者には学问だけが必要なのであって、裸一贯で、名も一般に通じ、仕事も认められれば立派な学者である、学位の有无など问题ではない、と思っている」。
学位を取得されたばかりの皆さんは耳を疑うかもしれませんが、いかにも牧野博士らしい辛らつな言叶だと思います。牧野博士は和汉洋4万5千册の蔵书を集め、植物学のみならず物理学や化学、地理学、农学、画学などにも通じていたと闻いております。
そもそも、学位というのはゴールではなく、自立した研究者としてのスタートラインにすぎません。専门の领域に関する一定の学识と研究能力を认められたことは确かですが、それだけが修士や博士に求められる资质ではないのです。
たとえばドイツでは、修士レベルの学位取得者に求められる能力の一つとして、「自分の専攻分野と関连しているものの新しくなじみの薄い状况においても、自分の知识と理解并びに问题解决能力を応用すること」が挙げられています。さらに、博士レベルの学位取得者には「本质的な研究计画を、学术的な诚実性をもって、独力で构想し実施すること」に加え、「学究的あるいは非学究的な职业上の环境で知识社会の社会的、学术的、文化的进歩を促进すること」も求めています。言叶を换えれば、社会を先导するリーダー役を期待されているのではないでしょうか。
昨今、わが国で相次いだ研究不正や伦理を问われる事件も、目先の成果を追いかける余り、本来身に着けておくべき资质や能力を軽视してきたことが背景にあると思います。
皆さんの行く手には、解の见つかる问题ばかりが待ち受けているとは限りません。自らの血となり肉となった深い教养、すなわちリベラルアーツこそが、こうした难题に遭遇した时の罗针盘となるはずです。世界最初の被爆地に开学した広岛大学には、素晴らしい教养教育の伝统があります。皆さんにはぜひ、「平和を希求する国际的教养人」としての素养を磨き続けてほしいのです。
ご承知のように、広島大学は一昨年8月に文部科学省の「研究大学強化促進事業」の22機関に採択され、続いて昨年9月には文部科学省の「スーパーグローバル 大学創成支援」タイプA(トップ型)13大学の1つに選ばれました。
「100年后にも世界で光り辉く広岛大学」を目指し、これから世界や地域に羽ばたいていかれる皆さんとスクラムを组んで、研究力と教育力を高めていければと愿っています。
终わりに、皆さんの前途が梦と希望に満ちたものとなることを祈念いたしまして、はなむけの言叶といたします。
平成27(2015)年9月25日
広岛大学长 越智光夫