学長式辞 平成28年秋季入学式 (2016.10.1)
キャンパスを渡る秋风が色づく木々をさわさわと揺らしています。美しい锦繍(きんしゅう)の季节が巡ってきました。本日ここに平成28年度(2016年度)広岛大学秋季入学式を挙行するにあたり、300人の皆さんのご入学を心より歓迎するとともに、広岛大学を代表してお祝い申し上げます。
约半年前の3月7日、本学のサタケメモリアルホールで、2012年のノーベル生理学?医学赏を共同受赏した京都大学颈笔厂细胞研究所の山中伸弥博士と、イギリス?ケンブリッジ大学のウエルカムトラスト英国がん研究基金ガードン研究所のジョン?ガードン博士の両先生にそろって讲演していただきました。今年の11月29日には、2015年にノーベル物理学赏に辉いた东京大学宇宙线研究所の梶田隆章博士にもお越しいただきます。
学生や市民によって埋め尽くされた会场で、身を乗り出すようにしてお二人の话に闻き入る姿を目のあたりにし、私は胸が热くなりました。世界のトップ研究者との交流も深い大学であることを、まずもって夸りとしていただきたいと思います。
さて、人类史上初の原爆が広岛に投下されてから71年を経た今年は、世界の人々が広岛に注目する年となりました。5月27日、オバマ大统领が米国の歴代大统领として初めて、広岛市の平和记念公园で献花を行い、核なき世界に向けてのメッセージを発信しました。世界平和への新たな一歩を踏み出したものと、私は理解いたしました。
原爆の惨禍から4年後の1949年に開学した広島大学には、他の国立大学にはない特徴があります。それは、「自由で平和な一つの大学」という明確な建学の精神を持っていることです。文部大臣を経て初代の広岛大学长となった森戸辰男が開学式で述べたもので、具体的な構想として「中国?四国地方の中心大学」とともに、「地域性のある大学」と「国際性のある大学」を挙げました。
地域性と国際性について言えば、最近はglobalとlocalを組み合わせたglocalという造語をしばしば耳にするようになりました。「Think globally, act locally.」すなわち「地球規模で考え、その場所で行動する」という言葉にも相通じるものがあります。60年以上前にそうした考え方を提唱した森戸学長の先見性に、あらためて驚嘆せざるを得ません。
その森戸の思想に深い影響を与えたのが、第一高等学校時代の恩師であった教育者の新渡戸稲造です。「武士道 The Soul of Japan」の著書で世界に知られる新渡戸は後年、国際連合の前身である国際連盟の事務次長を務めるなど、国際平和に力を尽くしました。
新渡戸は国际性について次のような言叶を残しています。
「人间は生まれ育った环境が违うのだから、それぞれの考え方やものの见方が违うのが当然である。その违いを认め合い、受け入れられる広い心を持つことが大切。これが『国际的な感性』である」。
国际化のためには、英语などのコミュニケーション能力が必要とされることは言うまでもありません。しかし、世界の人々とより深くコミュニケーションをしていくためには、异なる文化を理解し、积极的に认め合う感性を育むことが真の国际性であると言うのです。
新渡戸とそれを継いだ森戸の思想は、世界各地で地域纷争やテロが后を絶たない现代に求められているものだと思います。だからこそ今「平和を希求する国际的教养人」を辈出していくことが、広岛大学の大きな使命であると考えています。
今年8月、笔贬笔研究所から「広岛大学は世界トップ100に入れるのか」というタイトルの新书が出版されました。ご覧になった方がいらっしゃるかもしれません。広岛大学は文部科学省の「研究大学强化促进事业」(リサーチ?ユニバーシティ)22机関に採択されるとともに、「スーパーグローバル大学创成支援事业」タイプ础(トップ型)13大学にも、中四国地方で唯一採択されました。
10年后に世界大学ランキングの100位以内に入ることは、この2つの事业に选ばれた大学のいわば公约です。世界トップ100に入るためには、相当な努力と覚悟が求められることは言うまでもありません。教职员、学生、卒业生がスクラムを组みながら、目标に向かって一歩一歩进んでいきたいと思います。
最后に私が申し上げたいのは教养の大切さです。これからの人生で「想定外」の难题にぶつかったとき求められるのは、自ら切り开いていく力です。それは、一朝一夕に得られるものではなく、幅広い教养と、自分の头で考え続けることによって培われていくものであると确信しています。
皆さんの中から必ずや世界をリードする人が出てきます。スティーブ?ジョブスの言叶にあるように、自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが、本当に世界を変えているのです。皆さんも世界を変えようという强い意志と、新しいものを付け加えようとする気概を持っていただきたいと思います。それに応える环境を広岛大学は整えています。自信を持って未来に向かって歩んでください。
「ええね広大!」を合言叶に、「100年后にも世界で光り辉く広岛大学」に向かって、ともに力を合わせようではありませんか。
あらためて、ご入学おめでとうございます。
平成28(2016)年10月1日
広岛大学长 越智光夫