平成22年5月28 日
独立行政法人 産業技術総合研究所
国立大学法人 広 島 大 学
国立大学法人 山 口 大 学
新材料を使用した热电発电モジュールを开発
- 300 ℃ 以上の高温でも利用でき、中温度域の廃熱利用が進むと期待 -
ポイント
- 资源量の豊富なバリウム、ガリウム、スズを用いた新しい热电材料
- p 型とn 型がほぼ同じ組成であり、モジュール設計が容易で、製造工程の共通化も可能
- 現状の材料と同等レベルの約4 %の発電効率を実現
概 要
独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 野間口 有】(以下「産総研」という)エネルギー
技術研究部門【研究部門長 長谷川 裕夫】熱電変換グループ 山本 淳 研究グループ長は、国立大学法人 広島大学【学長 浅原 利正】(以下「広島大学」という)大学院先端物質科学研究科 高畠 敏郎 教授、国立大学法人 山口大学【学長 丸本 卓哉】(以下「山口大学」という)大学院理
工学研究科 小柳 剛 教授、株式会社KELK【代表取締役社長 梨和 哲美】(以下「KELK」という)、株式会社デンソー【代表取締役社長 加藤 宣明】(以下「デンソー」という)と共同で、バリウム(Ba)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)からなる新热电材料を开発し、それを用いて热电発电モジュールを试作した。试作した热电発电モジュールは温度差300 ℃(高温側330 ℃、低温側30 ℃)で、発電出力1.7 W、発電効率約4 %を示し、既存の热电発电モジュールと同等なレベルの発電性能を持つことが実証された。
今回开発した热电材料は、従来の热电材料の适用可能温度よりも高い温度で利用できるほか、わずかな组成调整によりp 型热电材料もn 型热电材料も製造可能である点や、资源量が少なく価格不安定要因をもつ材料を含まない点など、现在利用されている热电材料に比べて有利であり、今后、工场廃热の回収発电システムなどへの利用が期待される。
本成果の詳細は、2010 年5 月30 日~6 月3 日に中華人民共和国 上海市にて開催される熱電変換国際会議(ICT2010)で発表される。
は别纸【用语の説明】参照
図1 試作したBa-Ga-Sn系熱電材料を用いた8 対型热电発电モジュール
开発の社会的背景
わが国は、一次エネルギーの供给をほとんど输入に依存しており、石油や天然ガスなどの化石燃料资源の有効利用が重要な课题となっている。しかしながら、现実には一次エネルギーの约7割が変换?利用の过程で未利用の廃热エネルギーとして环境中に捨てられている。これらの廃热エネルギーを回収し発电することで、エネルギーの利用効率を高めることが期待されている。
大规模かつ集约された廃热は、蒸気回収やタービンによって発电に利用されているが、规模が小さく分散した廃热の回収はコストなどの课题が多く、新たな技术开発が求められている。
近年、システム構成がシンプルで装置の小型化に適した熱電発電技術が廃熱回収発電技術として注目されている。発電性能の向上のためには、熱電材料の高性能化が必要であるが、金属なみの高い導電性とガラスのような低い熱伝導性を同時に実現する必要があるため、さまざまな研究機関で金属や半導体の熱電材料の研究開発や热电発电モジュールの実証研究が進められている。
研究の経纬
産総研では、住宅、ビル、工場などで発生する未利用の廃熱や自動車廃熱を有効に利用する技術の1つとして、「高性能热电発电モジュール」の開発を推進している。既に実用化されているビスマステルル系熱電材料の使用上限温度は250 ℃であるため、より発電量の増大が可能な 300~400 ℃の中温度域の熱源に適用できる熱電材料や热电発电モジュールの開発に取り組んできた。また、独立行政法人 新エネルギー?産業技術総合開発機構(以下「NEDO」という)のプロジェクト「高効率熱電変換システムの開発」(平成14年度~平成18年度)において、財団法人 エンジニアリング振興協会とともに热电発电モジュールの評価技術の研究開発を実施してきた。
さらに、产総研、広岛大学、山口大学、碍贰尝碍、デンソーは、平成21年6月より、狈贰顿翱のプロジェクト「ナノテク?先端部材実用化研究开発/カゴ状物质を利用したナノ構造制御高性能熱電変換材料の研究開発」(研究開発責任者 高畠 敏郎)において、200 ℃から300 ℃の温度領域で高性能化が期待されるBa-Ga-Sn系熱電材料を中心に、材料高性能化とモジュール試作を進めてきた。 広島大学の単結晶育成実験による材料組成の検討、山口大学による多結晶試料の製造条件の検討などをもとに、熱電材料の高性能化をはかり、これらの材料に産総研の热电発电モジュール試作技術と評価技術を適用し、今回の研究成果を得た。
研究の内容
現在市販されているビスマステルル系熱電発電材料は200~250 ℃ の廃熱に適用可能であり、発電効率は約5 %である。効率的に廃熱から電力を回収するシステムを構築するためには、現状の発電効率をさらに高くする必要があるが、最大発電効率は、熱電材料の性能により決まるため、ナノ構造を制御した熱電材料など高性能な新規熱電材料の開発が求められている。
Ba、Ga、Sn はそれぞれ単体では金属であるが、一定の組成比にするとカゴ状の結晶構造をもつ化合物半導体となる。このようなカゴ状の化合物は一般にクラスレートと呼ばれるが、カゴの中に緩やかに束縛された原子(今回はBa 原子)が存在することで熱の伝播を抑制する性質を持つ。このため、ビスマステルル系熱電材料を超える高い性能が期待できる。また、Ba-Ga-Sn 系クラスレート化合物は、基本的な組成比からのわずかなずれにより、p 型、n 型両方の熱電材料となる特長がある。このため、p 型とn 型の熱的?機械的性質が同じとなり、両者を組み合わせたモジュール設計が容易になること、製造工程の共通化ができることなど、他の熱電材料系に比べて有利である。
今回p 型とn 型のBa-Ga-Sn 多結晶に拡散防止などの表面処理をし、p 型は5.0 mm 角、n 型は4.1 mm 角、高さはそれぞれ2.5 mm に切り出して熱電発電素子とした。8 対のpn 素子対に金属電極を取り付けてハーフスケルトン型热电発电モジュールを試作した(図1)。この热电発电モジュールの外径寸法は28.0 mm×28.0 mm×5.5 mm、基板を含めた重量は約15 g であった。産総研の热电発电モジュール評価装置を使用して、窒素雰囲気中で下部温度30 ℃ とし、上部温度を330℃ まで加熱して、最大300 ℃ の温度差における発電特性を測定した。温度差300 ℃ のときの開放起電力は約1.03 V、内部抵抗は155 mΩ、最大発電出力は1.71 W、通過熱量44.2 W であり、これらから計算した発電効率は3.9 %となった(図2)。
現状の材料性能としてはn 型の热电性能指数が0.8 程度、p 型は0.3 程度であり、材料性能はまだ向上が期待できる。热电性能指数の最大値を示す温度差はビスマステルル系材料よりも高い200 ℃ 以上であるため、中温領域の新しい高性能熱電材料として、さらなる発展が期待される
図2 試作したBa-Ga-Sn 系熱電材料を用いた8 対型热电発电モジュールの発電特性
左図は高温侧温度と最大発电出力の関係、右図は高温侧温度と発电効率の関係。
低温側温度は30 ℃ で一定。
今后の予定
今回、共同研究チームが開発したモジュールは多結晶材料を使用しているが、広島大学、デンソーにより開発中の小型単結晶では、热电性能指数が1 以上と、より高い性能が確認されている。これを応用して熱電材料をさらに高性能化し、300 ℃ 近傍の未利用廃熱を利用して変換効率10 %以上の発電効率で発電する高効率モジュールを開発し、高性能廃熱発電システムの実現を目指す。
本件问い合わせ先
独立行政法人 産業技術総合研究所
エネルギー技術研究部門 熱電変換グループ 研究グループ長 山本 淳
〒305-8568 茨城県つくば市梅園1-1-1 中央第2
TEL:029-861-5776 FAX:029-861-5340
贰-尘补颈濒:补.测补尘补尘辞迟辞@补颈蝉迟.驳辞.箩辫
エネルギー技術研究部門 研究部門長 長谷川 裕夫
〒305-8568 茨城県つくば市梅園1-1-1 中央第2
TEL:029-861-5280 FAX:029-861-5149
贰-尘补颈濒:丑补蝉别驳补飞补.测@补颈蝉迟.驳辞.箩辫
【プレス発表/取材に関する窓口】
独立行政法人 産業技術総合研究所 広報部 広報業務室 小林 達哉
〒305-8568 茨城県つくば市梅園1-1-1 中央第2
つくば本部?情报技术共同研究栋8F
TEL:029-862-6216 FAX:029-862-6212 E-mail:presec@m.aist.go.jp
(@は半角蔼に置き换えた上、送信してください。)
用语の説明
◆热电材料
熱エネルギーと電気エネルギーを直接変換できる導電性材料を指す。一般には1 K あたりの熱起電力(S、単位はVK-1)が大きく、高い導電性(σ、単位はΩ-1m-1)と低い熱伝導率(κ、単位はWm-1K-1)を兼ね備える材料が良い材料とされており、半導体や金属、導電性の高いセラミックスが候補材料として研究され、一部実用化している。
◆热电発电モジュール
熱電材料に温度差を与えると起電力が発生するが、電圧が小さいためにそのままでは利用が難しい。電圧を高くするために、複数のp 型とn 型の熱電材料を電気的に直列に接続し、一体化したものを热电発电モジュールと呼ぶ。
◆p 型、n 型
半導体で用いられる概念で、電子により電流が担われる材料をp 型材料、ホール(正孔)によ
り電流が担われる材料をn 型材料と呼ぶ。高い発電性能をもつ熱電モジュールを実現するためにはp 型、n 型ともに良い熱電材料を使用する必要がある。
◆资源量
资源量の目安として、アメリカの地球科学者フランク?クラークにより推定された、地球上の地表付近に存在する元素の割合(クラーク数)を以下に示す。
【元素名 (クラーク数)】
バリウム (0.023 %)
ガリウム (0.001 %)
スズ (0.004 %)
アンチモン (0.00005 %)
テルル (0.0000002 %)
ビスマス (0.00002 %)
◆カゴ状物质
结晶构造が立体的なカゴ状になっている部分をもつ物质を指す。カゴの中心に别の原子を入れることで电気的な特性や热的な特性が変化するため、热电材料としてはもとより、电池の电极材料や超伝导材料としても研究开発が进められている。
◆ハーフスケルトン型
熱電材料をつなぐ電極のうち、高温側または低温側の片方だけ絶縁を兼ねるセラミックスなどの板に強固に固定されているタイプの热电発电モジュール。両側がセラミックス板などに固定されているタイプに比べ、繰り返し加熱や熱衝撃に強い。セラミックスなどの基板を全く使用しないモジュールはスケルトン型と呼ぶ。
◆热电性能指数
熱電材料がもつ発電出力の目安として、出力因子(σS2、単位はW m-1K-2)が、また発電効率の目安として热电性能指数(ZT=σS2Tκ-1、無次元、ただしT は温度(K))が用いられ、1 以上のZT をもつ材料が有望な熱電材料とされる。