研究分野、研究テーマ
刑法、刑事诉讼法、刑事政策、少年法、比较刑事法、国际刑法、犯罪学、犯罪被害者学
経歴
最終学歴: 一橋大学大学院 法学研究科博士課程修了
主な職歴: 平成 8年 4月 広島大学法学部助手
平成 9年 4月 広島大学法学部助教授
平成16年 4月 広島大学大学院社会科学研究科助教授
平成16年10月 ニュージーランド?オークランド大学ロースクール客員教授
平成17年 4月 広島大学大学院社会科学研究科教授
平成30年9月 中国政法大学, 国家法律援助研究院, 特聘研究員
平成31年3月 イタリア?パルマ大学法学部客員教授
令和2年4月広岛大学人间社会科学研究科教授(现在に至る)
学部の教育内容
学部では、これまで、刑事政策、刑法III、国際刑法、などを講義してきましたが、ロースクールの独立以降は、刑事訴訟法と少年法を主に講義しています。平成26年度からは、かつて行っていた国際刑法を英語で提供することにしました(InternationalCriminal Law)。これは留学生向けの授業、JICAや海外の大学での授業や講演などの経験をもとにしています。また、毎年、広島県警の出張講義「社会安全政策論」をお世話させて頂いており、最先端の問題意識を伝えていただくことにより、大学だけでは頭でっかちになりがちな部分を補い、社会に出てからも通用する柔軟な思考力を養って頂きたいと願っています。
ゼミでは、受讲生の问题関心を育てることを前提に、基本的には问题の设定自体から报告者に决定してもらっています。これまでの学问的蓄积を踏まえつつも、生きた学问である刑事法学を、今を生きる学生の皆さんに清新な感覚で考察していって欲しいと思っています。その意味では、国内の判例?通説を理解するだけではなく、そこに留まらず、外国の立法动向や国际的な学问的潮流を视野に入れつつ、自分なりの思考を练り上げ、そして、それを他者に分かるように説明できる技能?能力を身につけていってもらえるよう指导を行っております。国际的视野を身につけるという意味では、ほぼ毎年、ゼミには留学生に参加してもらっていますし、大学院生とのコラボで海外研修を行うこともあります。これまでにも、イギリス、フランス、ドイツなどをめぐり、现地の大学や裁判所、欧州人権裁判所等を见学してきました(写真参照。顺にテュービンゲン大学、ハイデルベルク区裁判所?地方裁判所、パリ第一法学部教室、欧州人権裁判所)。




そして、一般的な学部生のゴールは就职ですが、ゼミでは、専门的知识はもちろんのこと、日顷から社会に出て役に立つスキル、殊にコミニュケーション?スキルの涵养に力を入れています。このあたりは、専门分野の一つである、犯罪者処遇论、あるいは非行少年の矫正教育に取り入れられているソーシャルスキルトレーニング(厂厂罢)の技法を用いることもあります。
就职先には、刑事法ゼミということもあって、警察官、法务教官、公安関係などのオカタイ(?)ところが目立ちますが、市役所、県庁职员といったフツーの公务员も多いです。もちろん、マスコミ関係、金融机関、流通関係等の民间公司に入ってバリバリ活跃している先辈たちも大势います。さらに、勉强を続ける人たちは、ロースクールや研究大学院に多数进学していますし、大学教员になっている人もいます。おもしろいところでは、あの、女子サッカーチーム「アンジュ?ヴィオレ」の选手の中にも卒业生がいますが、彼女は学业成绩も抜群でした。
また、東千田キャンパスの夜間主コースでも、毎年前期?後期で刑事法ゼミを開講し、昼間ゼミとまったく変わらないやり方で活発な議論を行っています。社会人経験のある学生さんが多い夜間主ゼミのほうが、問題意識は極めて鋭敏で議論は高度かつ活発です。法学は大人の学問であり、法律学辞典の法律概念を抽象的に述べることができても、それだけでは真に人を生かす学問たり得ないでしょう。「知識は人を博学にするが、人生での経験こそが知識あるものを賢者にする(Wissen macht gelehrt, aber erst das Leben macht die Wissenden weise.) 」というH.E.ナウマンの言葉には頷かされます。
さらに、学部ゼミでは、ほぼ毎年、大学の垣根を越えて合同ゼミを行い、报告と讨论を行っています。昼间ゼミでは爱媛大、松山大と、夜间主ゼミでは海上保安大学校の刑事法ゼミと交流を深め、プレゼンを行い、充実した议论を展开しています。そして、ここ数年は、広岛地裁が行っておられる、司法修习生の行う裁判所研修の模拟裁判员裁判に裁判员役で昼夜のゼミから学生数名を派遣させてもらっていますが、ふだんの学习では得られない生きた刑事裁判を正に法廷や评议の中で経験し、刑事法の体感的理解の大きな助けになっています。その意味では毎年お世话になっています刑事施设参観も、皮肤感覚で犯罪者処遇の现実を感得する絶好の机会となっています。こうして、犯罪原因から刑事手続を経て犯罪者処遇に至るまで、トータルな刑事法の理解が得られるような指导を心がけています。
大学院の教育内容
大学院では、「国际刑事政策」を担当していますが、前期课程修了予定者と后期课程进学予定者でその教育内容は异なります。前期课程を修了后、民间公司に就职し、また公务员となって社会で活跃したいと思う人に対しては、学部教育をさらに発展させた高度な知识を修得していただくとともに、より実务的な観点から刑事法学、さらには社会科学全体の幅広い思考力を涵养することを目指しています。この段阶では、学部ゼミに参加したり、讲义のTAを担うなど、先辈として后辈たちのよい手本ともなってくれます。また、社会人経験のある方々も、职场経験を生かしながら热心に勉学に励んでおられます。
そして、后期课程に进学希望の院生については、入学当初から进学を踏まえた研究者养成のための指导を行っています。具体的には、刑法、刑事诉讼法、刑事政策、というおおまかな括りの中から、修士论文で取り扱う将来性のあるテーマを设定して顶き、外国法の状况等も参考にしながら、研究を深めていってもらいます。そのためには、外国语の能力をしっかりこの时期に养成しておくことが大切です。法学は大人の学问ですが、一方外国语の习得は若いうちにどれだけ努力できるかが肝心です。脳みその柔らかいこの时期に、少なくとも1ヶ国语はマスターしておいて欲しいところです。
一方后期课程では、刑事法研究者としての本格的な养成段阶に入ります。まずD1では、修士论文の段阶で狭い分野に深く掘り下げた自分の研究テーマをいったん突き放し、もう一度幅広い视野から见直してもらいます。これは、たとえば手続法研究であれば実体法の、実体法研究であれば手続法の视角から、あるいは、両者とも政策学の见地から再点検することなどを意味しますが、さらに広く刑事法学を超えて法哲学、法制史等はもちろん、社会学、政治学、経済学といった観点から古今东西の文献を読んでみる、ということもお荐めしています。そして、できれば、D2の时期に、半年から1年の海外留学を推奨しています。幸い、世界各国のアカデミアに私の旧知の友人?知人がいますので、メール1本で院生の留学を快诺してくれることがしばしばです。これまでにも、テュービンゲン大学、ミュンヘン大学、ブルゴーニュ大学(旧ディジョン大学)、オークランド大学等に优秀な院生が留学しておりますし、ハンブルク大学やサンパウロ大学にも院生を派遣しています。
こうして海外での経験等を含めて広がった知见をもとに、もう一度自分の研究テーマを再构筑してもらうのがD3の段阶です。おおよそこの段阶までになると、自分で必要な情报は自在に调达し、自分の视点で、且つ独りよがりにならない论文を発表できるようになっていきます。今后は、基本3年间でシステマティックに博论を提出できるよう、効率的に指导していく予定です。
多くの优秀な院生が博论提出以前に数本の论考を纪要等に公刊しており、学会?研究会発表もこなしています。また、D以上の院生については、佐藤元判事の主催する、裁判官を交えた刑事法判例研究会に参加させて顶いており、日本の判例法を中心とした実务にも精通できるよう指导しています。研究者として、「グローバルな视点からローカルに生きる」ことを考え、根无し草にならないよう気をつけます。
現代では日本に居ながらにしてインターネットなどを通じて世界中のテレビやラジオからいつでも本物の外国語に触れるチャンスがあるはずですが、むしろ若い研究者の語学能力は昔に比べ低下してきているのではないかと危惧しています。高校生のときに読んだ英語の文章に、'Few scientists today can effectively cover the literature of their field through as few as half a dozen languages, and the situation seems to be becoming steadily more complex(今日の科学者で、わずか6ヶ国語くらいの外国語を知っていて自分の分野の文献を効果的にカヴァーできる者は少ない。そしてその状況はますます着々と複雑になりつつあるように思われる).'というものがあって、とてもよく記憶に残っています。今から30年以上前に読んだもので、原典も覚えていませんが、書かれた時期はもっと古いかもしれません。6ヶ国語というのは難しいとしても、少なくとも自分の専門分野に関して3ヶ国語程度の文献を普通に読んで、そのうちの英語など国際的汎用性の高い言語で、発表や質疑応答のできる力を養ってもらえるよう院生諸君には期待しています。
最近の研究について
私が一応研究生活に入った当初は、少年法や保护観察の研究を行っていて、现在でも细々とですが研究を続けております。この分野ではここ数年「少年の责任」という问题について考えています。森下忠先生の指导の下、学部时代は刑法ゼミで紧急避难の法的性质についてまとめたこともあって、理论刑法にも兴味があり、最近の议论の発展をしっかり勉强したいと思っています。ここ数年は、イタリアの共犯概念について现在研究を深めているところです。兴味関心としては、国际刑法の授业をしていく中で、色々と疑问を持ったり、もっと深く研究したいと考えることもあり、また、スペインと中国の刑事诉讼法にも関心があり、これらの分野でも论文を书いてみたいと愿っています。かつては、日本の犯罪人引渡法と国际受刑者移送法について上海社会科学院と裁判所で讲演させて顶く机会に恵まれ、现在でも、中国の诸大学等と交流を深め、研究者交流等を行っています。
最近の研究内容については、だいたい以下のようなものです。
(著書) 『少年刑法研究序説』(単著),(溪水社, 2017年)
『刑事法判例読解の視点』(共著) , (晃洋書房, 2021年)
(論文) 「少年刑事裁判」刑法雑誌56巻3号(2017年)
「イタリア刑法における公司犯罪の法的规制」広岛法学34巻3号(2011年)
“Recent Changes in Youth Justice in Japan”, Hiroshima Law Journal Vol.33 no 4 pp.90-85, 2010.
「保護観察の犯罪予防機能」犯罪と非行No.158(2008年)
「パレンス?パトリエ思想の渊源」広岛法学第30巻1号(2006年)
(資料) 「少年と責任」(日本刑法学会第90回大会ワークショップ)刑法雑誌52巻3号(2013年)
(講演) 「日本的犯人引渡及服役者移送」上海社会科学院第82次新智庫論壇(2012年3月16日)
「日本における少年法改正と最近の展開」四川師範大学法学院セミナー(2024年3月29日)

*写真は上海社会科学院における讲演の様子