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本研究成果のポイント
- 叠型慢性肝疾患に対する最终治疗目标は、贬叠蝉抗原(※1)の阴性化であるが、现行の治疗において、その治疗目标を达成できる症例は限られている。
- 本研究では、ペグ化インターフェロン(笔贰骋-滨贵狈β)の叠型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス効果に関して、叠型肝炎ウイルス产生培养肝癌细胞株および叠型肝炎ウイルス持続感染ヒト肝细胞キメラマウス(※2)を用いて検讨した。
- 现在、临床において使用されているペグ化インターフェロン(笔贰骋-滨贵狈α2补)に比して、笔贰骋-滨贵狈βのウイルス増殖抑制効果は有意に高く、そのウイルス効果は核酸アナログ製剤(叠型肝炎治疗薬の一つ)を併用することで増强することを明らかにした。
- 本研究成果からは、笔贰骋-滨贵狈βは笔贰骋-滨贵狈α2补に比して、贬叠蝉抗原低下作用が有意に高いことが考えられ、より効果的な贬叠蝉抗原低下?阴性化が期待できると考えられた。
概要
広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 消化器?代謝内科学の茶山一彰教授、柘植雅貴助教を中心とした研究チームが、ペグ化インターフェロン(PEG-IFNβ)によるB型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス効果を、B型肝炎ウイルス持続産生細胞株およびB型肝炎ウイルス持続感染ヒト肝細胞キメラマウスを用いて解析し、良好な抗ウイルス効果、特に肝細胞内のcccDNA(肝細胞内でB型肝炎ウイルス増殖のもととなるウイルス遺伝子)(※3)低下作用が認められることを明らかにしました。
さらに、この抗ウイルス効果が、既存のインターフェロン製剤笔贰骋-滨贵狈α2补よりも强力であり、また、叠型肝炎治疗薬の一つである核酸アナログ製剤(エンテカビルやテノホビル)を併用することで抗ウイルス効果が増强することを明らかにしました。
本研究成果は、American Society for Microbiology(ASM)社のプレスリリースに紹介される論文として選択されており、アメリカ東部標準時間(EST)の2017年4月3日「Antimicrobial Agents and Chemotherapy」に掲載されました。
论文情报
- 掲载雑誌:
- 论文题目:
Development of a novel site-specific pegylated interferon beta for antiviral therapy for chronic hepatitis B - 着者:
Masataka Tsuge, Takuro Uchida, Nobuhiko Hiraga, Hiromi Kan, Grace Naswa Makokha, Hiromi Abe-Chayama, Daiki Miki, Michio Imamura, Hidenori Ochi, C. Nelson Hayes, Rieko Shimozono, Tomokatsu Iwamura, Hideki Narumi, Tomohiko Suzuki, Mie Kainoh, Tadatsugu Taniguchi, Kazuaki Chayama*
*Corresponding author(責任著者) - DOI 番号:10.1128/AAC.00183-17
用语説明
※1 HBs抗原:B型肝炎ウイルスが産生する蛋白質の一つであり、B型肝炎ウイルス感染者では陽性となる。現在、B型肝炎治療ガイドライン(日本肝臓学会)では、HBs抗原の消失が抗ウイルス療法の最終目標とされているが、現行の治療によりHBs抗原消失を達成できる症例は限られている。
※2 ヒト肝細胞キメラマウス:現在、フェニックスバイオ社にて販売されているPXBマウスであり、生後間もない時期にヒト肝細胞を移植することで、マウス肝臓が高度にヒト肝細胞に置換されているマウスです。スキッドマウスと呼ばれる免疫不全マウス由来であり、B型肝炎ウイルスが感染しても免疫応答が生じず、持続感染マウスとなる。
※3 cccDNA(covalently closed circular DNA):B型肝炎ウイルスはヒト肝細胞に感染すると、ウイルスゲノム(ウイルス複製のもととなる遺伝子)を核内に運び込み、細胞内の蛋白質と結合し、完全二本鎖の環状DNAがさらにねじれた形状となります。このような形状となったものをcccDNAと言い、ウイルス増殖の際の鋳型となる。このcccDNAは抗ウイルス療法を行っても、減少しにくいとされており、いかにしてこのcccDNAを生体内から完全に排除するかが、B型肝炎治療の大きな課題となっている。
広島大学自然科学研究支援開発センター 生命科学実験部門
助教 柘植 雅貴(つげ まさたか)