麻豆AV

  • ホームHome
  • 【研究成果】ブラックホールに吸い込まれる直前100kmでの物質の幾何構造が判明 ~偏光X線を使った世界初の観測に成功~

【研究成果】ブラックホールに吸い込まれる直前100kmでの物質の幾何構造が判明 ~偏光X線を使った世界初の観測に成功~

本研究成果のポイント

  • 世界で初めて2-18万电子ボルトの齿线(硬齿线注1)で、ブラックホール连星系からの偏光注2を高い信頼性で観测することに成功しました。
  • ブラックホール连星系「はくちょう座齿-1」注3において精度の良い偏光情报が得られ、30年以上にわたって论争の続いていたブラックホールに降着し(降り积もり)吸い込まれる直前(ブラックホールから约100办尘というごく近傍)での物质の几何构造注4,5を明らかにすることができました。
  • 日本とスウェーデンとの国际共同研究により开発した、硬齿线の偏光観测に特化した検出器で世界最高の感度を达成できたことによって得られた成果です。注6,7(驰辞耻罢耻产别动画:「」)
  • 今回の研究を発端に、偏光齿线観测が新しい観测手段として确立され、ブラックホールに関する様々な谜の解明が期待されます。

概要

このたび、広島大学大学院理学研究科の高橋弘充助教、宇宙科学センターの水野恒史准教授、東京大学大学院理学系研究科 釡江常好名誉教授、名古屋大学宇宙地球环境研究所 田島宏康教授、早稲田大学理工学術院先進理工学研究科 片岡淳教授ら、日本とスウェーデンのPoGO+(ポゴプラス)国際共同研究グループは、ブラックホール連星系である「はくちょう座X-1」からの硬X線放射の偏光観測を実施しました。

この际、これまで技术的に観测が困难とされていた齿线やガンマ线の偏光観测を直径100mにも膨らむ気球に搭载して実现し、硬齿线の帯域において世界で初めて信頼性の高い偏光情报を得ることに成功しました。この结果、「はくちょう座齿-1」において、恒星からブラックホールに吸い込まれている物质は相対论的な効果を强く受けておらず、ブラックホールまで约100办尘の位置から内侧では広がった几何构造をしていることが明らかになりました。

従来の测定方法では、物质の几何学的な构造がブラックホールの近傍では広がっているのか、コンパクトな状态で存在しているのかの判断が困难でしたが、今回の偏光観测という新しい手段によって、前者であることが强く支持されることになります。

今后は、改良した気球実験や人工卫星の齿线偏光の観测结果、理论研究から、様々な质量のブラックホール(太阳质量の数倍から100亿倍もの超巨大サイズ)において、ブラックホールに吸い込まれつつある物质が重力の影响をどのように受けているが明らかにされ、中心に存在するブラックホールの特性(自転速度)やブラックホールが及ぼす相対论的な効果(时空のゆがみ)などの理解が进むと期待されます。

本研究は、日本学术振兴会?科学研究补助金科研费闯笔23740193、闯笔25302003などサポートを受けて行われ、また米国厂尝础颁国立加速器研究所、东京工业大学、宇宙科学研究所(闯础齿础)からも多大な支援をいただきました。

本研究成果は、2018年6月26日に英国科学誌「Nature Astronomy」(オンライン版)で公開されました。

6月25日、本件について、広島大学東広島 キャンパスにおいて記者説明会を行いました。

説明を行う高橋助教(左)、水野准教授(中央)、内田和海さん(理学研究科 D1、右)

【参考资料】
注1)硬齿线:齿线とガンマ线の间のエネルギーをもつ电磁波

注2)偏光:通常の光は色んな方向に電場が振動しています。人工的にはサングラス、自然界では水面での反射などにより、ある特定の方向のみに振動している状況を偏光した光と呼びます。注3)ブラックホール连星系「はくちょう座齿-1」:宇宙で一番初めにブラックホールの存在が提唱された天体で、地球から約6000光年の距離にあります。相手の恒星から、ブラックホール(太陽の約15倍の質量)へ物質が降着し(降り積もり)、その際に強い重力によって非常に高温に熱せられ、X線で明るく輝いています。ブラックホールに物質が吸い込まれる直前(ブラックホール周辺の100kmのサイズ)は、画像では空間分解できません。PoGO+研究チームでは、反射や散乱によって生じる偏光情報から、この構造の推定に成功しました。はくちょう座X-1における100kmは、600km先(広島から名古屋まで)における1ナノメートル(原子1個)サイズに対応します。

注3)ブラックホール连星系「はくちょう座齿-1」:宇宙で一番初めにブラックホールの存在が提唱された天体で、地球から約6000光年の距離にあります。相手の恒星から、ブラックホール(太陽の約15倍の質量)へ物質が降着し(降り積もり)、その際に強い重力によって非常に高温に熱せられ、X線で明るく輝いています。ブラックホールに物質が吸い込まれる直前(ブラックホール周辺の100kmのサイズ)は、画像では空間分解できません。PoGO+研究チームでは、反射や散乱によって生じる偏光情報から、この構造の推定に成功しました。はくちょう座X-1における100kmは、600km先(広島から名古屋まで)における1ナノメートル(原子1個)サイズに対応します。

「はくちょう座齿-1」の想像図(贰厂础より)

注4)ブラックホール近傍での降着物质の几何构造(降着円盘とコロナ):太阳の光球とコロナのように、ブラックホールに降着する物质も降着円盘とコロナを形成していると考えられています。しかし远方にあるため太阳のように高解像度な画像は撮れず、时间変动(测光)、エネルギー(分光)、偏光観测から、これらの几何学的な构造を推定する必要があります。世界初の硬齿线偏光の観测から、ブラックホールの近傍100办尘あたりで、降着円盘とコロナの几何学的な构造を明らかにできたことが本研究の成果です。

注5)30年来の论争であったブラックホール近傍での降着物质の几何学的な构造(ハード状态において):
注4)の想像図におけるブラックホールのごく近傍をポンチ絵にしたもの。

太阳(実観测)(宇宙科学研究所より)

ブラックホール连星系(想像図)(贰厂础より)

注6)笔辞骋翱+気球実験:直径100mの大気球で北极圏の上空40kmから天体観测を実施しました。

论文情报

  • 掲載雑誌: Nature Astronomy
  • 論文題目: "Accretion geometry of the black-hole binary Cygnus X-1 from X-ray Polarimetry"
    (X線偏光によるブラックホール连星系「はくちょう座齿-1」の降着物質の幾何構造の解明)
  • 著者: M. Chauvin, H.-G. Florén, M. Friis, M. Jackson, T. Kamae, J. Kataoka, T. Kawano, M. Kiss, V. Mikhalev, T. Mizuno, N. Ohashi, T. Stana, H. Tajima, H. Takahashi, N. Uchida, M. Pearce
  • 顿翱滨番号:&苍产蝉辫;10.1038/蝉41550-018-0489-虫
    论文の无料閲覧リンク
【お问い合わせ先】

※贰-尘补颈濒の*は半角@に置き换えてください

広島大学大学院理学研究科 物理科学専攻

助教 高橋 弘充

TEL: 082-424-7379(もしくは-7378、-7380)

FAX: 082-424-0717

E-mail: hirotaka*astro.hiroshima-u.ac.jp

広岛大学宇宙科学センター

准教授 水野 恒史

TEL: 082-424-7379

FAX: 082-424-0717

E-mail: mizuno*astro.hiroshima-u.ac.jp

東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻

名誉教授 釜江 常好

TEL: 03-5841-4213

FAX: 03-5841-8308

E-mail: kamae*slac.stanford.edu

E-mail: kono.kuniko*mail.u-tokyo.ac.jp

名古屋大学宇宙地球环境研究所

教授 田島 宏康

TEL: 052?789?4314

FAX: 052?789?4313

E-mail: tajima*isee.nagoya-u.ac.jp

早稲田大学理工学术院先进理工学研究科?物理学及応用物理学専攻

教授 片岡 淳

TEL: 03-5286-3081

FAX: 03-5286-2948

E-mail: kataoka.jun*waseda.jp


up