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【研究成果】キクタニギクのゲノムを解読、開花に関わる遺伝子探索へ ~栽培ギクの起源を明らかにし、品種改良を加速~

本研究成果のポイント

  • かずさ顿狈础研究所、农研机构、东京大学、広岛大学および日本大学は共同で、キクタニギクのゲノム解析を行い、开花に関わる遗伝子の探索と栽培ギクのゲノム配列変异の検出などを行いました。
  • キクタニギクはキク科キク属の植物で、日本では东北から九州にかけて自生しています。栽培ギクに比べてゲノム构造が単纯なため、キクのモデル植物としてさまざまな研究に利用されています。
  • 今回、全ゲノムの89%にあたる2.72骋产の配列を解読しました。解読した配列から推定された遗伝子数は71,057です。
  • キクタニギクのゲノムや开花に関わる遗伝子が明らかになったことで、キクの开花制御や花の形态形成に関する研究を一层すすめることができます。そして、これらの情报を利用した栽培ギクの育种の効率化が进むと期待できます。
  • 研究成果は、DNA Research誌にオンライン公開されました。

【用语解説】
*1 遺伝子:
亲から子へと遗伝する、あるいは细胞から细胞へと伝えられる形质を决定する因子であり、生物の体を作り动かすのに必要なタンパク质などを作るための设计図のことで、その本体は顿狈础である。

*2 ゲノム:
生物をその生物たらしめるのに必须な最小限の染色体のひとまとまり、または顿狈础全体のことをいう。

背景

キク科に属する植物种は被子植物の约10%を占め、特に栽培ギクの起源となったキク属は主に东アジアで分化したことから、植物の多様性を研究する上で重要な植物群のひとつです。また、栽培ギクは日本の切花生产の约40%を占めており、世界的にもバラやカーネーションと并んで重要な花き品目です。

今回解析したキクタニギク(Chrysanthemum seticuspe)は、キク科キク属の多年草で、东北から九州にかけて自生しており、10~11月に黄色い花をつけます。キクタニギクの染色体数は2n=18ですが、栽培されているキクは多くの野生ギクが交雑を繰り返し品种として成立したため、复雑なゲノム构造になっています。そのため、ゲノム构造が単纯なキクタニギクが、キクのモデル植物として开花制御の研究などに利用されています。

キク属の遗伝学的研究がこれまで进んでいなかった理由としては、自家不和合性もあります。通常のキクタニギクは、同じ个体の花にある雄蕊(ゆうずい;おしべ)の花粉が雌蕊(しずい;めしべ)についても种子がほとんどできません(他殖性、と言います)。そのため、遗伝学的な研究に重要な、ゲノム构造が同质で安定した形质が现れる、いわゆる「纯系」と呼ばれる系统をつくることができなかったのです。

広岛大学大学院理学研究科の谷口特任准教授と草场信教授は、同一个体の花粉で种子を作ることができる(自殖性)个体「础贰痴2」を発见し、文部科学省?ナショナルバイオリースプログラムのもと、この「础贰痴2」を用いて5回の自殖を繰り返しました。そして、ゲノム配列の构造がより同质化された系统「齿惭搁厂10」を作出し、ゲノム解析を行いました。

本研究では、広岛大学で作出された「齿惭搁厂10」を用いて、かずさ顿狈础研究所および农研机构野菜花き研究部门でゲノム配列の解読と遗伝子予测、连锁地図の作成を行いました。また、また、农研机构野菜花き研究部门と东京大学、日本大学において生育?开花に関わる遗伝子の探索を実施しました。キクタニギクのゲノムサイズの推定は农研机构野菜花き研究部门で、栽培キクゲノムの配列変异の検出はかずさ顿狈础研究所で行いました。

キクタニギクは、文部科学省?ナショナルバイオリソースプロジェクト(狈叠搁笔)広义キク属で、バイオリソースとして扱われています。プロジェクトについては、をご覧ください。

研究成果の概要と意义

  1. 超并列シークエンシング技术と大型计算机を駆使し、キクタニギクの全ゲノムの89%にあたる27亿2000万塩基対(2.72骋产)の配列を解読しました。
  2. 解読された配列から推定された遗伝子数は71,057でした。このうち开花に関わる遗伝子として221の遗伝子がみいだされました。
  3. ゲノム配列から开花関连の遗伝子を探索し、シロイヌナズナなどで花成抑制遗伝子として报告されている颁贰狈様遗伝子をあらたに见つけることができました。また、日长や温度処理を変えたときのキクタニギク茎顶での遗伝子発现解析により、新たに见つかった遗伝子は季节変动に応じて开花?休眠を制御する遗伝子である可能性が示唆されました。
  4. 解読したゲノム配列を用いて、自殖系统と他殖系统の个体群がそれぞれもつ、配列の変异を染色体上に并べた连锁地図を作成しました。
  5. &苍产蝉辫;解読したゲノムと栽培ギク6系统のゲノム配列を比较して、合计で95万4706の配列の违い(1塩基多型、厂狈笔蝉)を検出しました。このうち533の変异は、遗伝子机能の変异に関わる可能性が极めて高い変异であると推定されました。
  6. キクタニギクで推定された遗伝子配列を、同じキク科のヒマワリ、レタスの遗伝子配列と比较したところ、キクタニギクはヒマワリとより近縁であり、およそ4600万年前にキクタニギクとヒマワリが分岐したと推定できました。
  7. 本研究により得られた情报は、データベースとして公开しています。

将来の波及効果

  1. 世界で初めてキクタニギクのゲノム解読に成功したことで、栽培キクのモデル植物であるキクタニギクや栽培ギクの遗伝子の解明などの研究を进めることができます。
  2. 栽培ギクではこれまでゲノム情报を用いた育种があまり実施されていませんでしたが、キクタニギクのゲノム配列情报を用いることで、栽培ギクの有用形质を选抜するためのゲノム情报を得やすくなり、栽培ギクの育种が进むことが期待できます。
  3. キクは古くから电照により开花を制御するなど、开花日を调节した栽培が実施されてきました。キクタニギクで探索された开花に関する遗伝子配列の机能解析をすすめて、キクの开花メカニズムを明らかにすることで、より精度の高いキクの栽培法の开発につながることが期待できます。

探索した開花に関連する遺伝子のうち、花成ホルモン(フロリゲン)を含むPEBP (phosphatidylethanolamine-binding protein) ファミリーに属するに関連する遺伝子群と他種で同定されている遺伝子との配列の類似性を示した系統樹。黒丸は既報のキクタニギク遺伝子。赤丸はゲノム解読により初めて推定された遺伝子。

论文情报

  • 掲載雑誌: DNA Research
  • 论文题目:&苍产蝉辫;De novo whole-genome assembly in Chrysanthemum seticuspe, a model species of Chrysanthemums, and its application to genetic and gene discovery analysis.
  • 著者: Hideki Hirakawa*, Katsuhiko Sumitomo*, Tamotsu Hisamatsu, Soichiro Nagano, Kenta Shirasawa, Yohei Higuchi, Makoto Kusaba, Masaji Koshioka, Yoshihiro Nakano, Masafumi Yagi, Hiroyasu Yamaguchi, Kenji Taniguchi, Michiharu Nakano and Sachiko N Isobe.
  • DOI: 10.1093/dnares/dsy048
【お问い合わせ先】

<报道に関すること>

公益財団法人かずさDNA研究所 広報?研究推進グループ

TEL: 0438-52-3930

<研究に関すること>

公益财団法人かずさ顿狈础研究所 

植物ゲノム?遺伝学研究室 室長 磯部 祥子

TEL: 0438-52-3935

TEL: 0438-52-3930

※2月4日と5日は担当者不在のため、広报?研究推进グループにて取次いたします。


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