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【研究成果】宇宙から飞来した陨石から新鉱物ポワリエライトを発见~小天体の衝突过程、地球内部の変化等を探る重要な键に~

概要

国立研究开発法人海洋研究开発机构(理事长 松永是、以下「闯础惭厂罢贰颁」)高知コア研究所の富冈尚敬主任研究员を中心とする研究グループは、陨石中に発见したカンラン石の化学组成を持つ高圧相を新鉱物「ポワリエライト」と命名し、この度、国际鉱物学连合により正式に认定を受けました。

石质の陨石や地球のマントルには、カンラン石(ペリドット)が豊富に含まれています。研究グループは、小惑星同士の衝突による高温高圧环境を経験した陨石を高分解能の电子顕微镜で调べ、「イプシロン相」というカンラン石の新しい高圧相を2017年に世界で初めて発见しました()。今回、新たに2种类の石质陨石中にもイプシロン相を见つけだし、电子顕微镜以外の手法も用いてデータを积み重ねました。これらの详细なデータをもとに、イプシロン相を新鉱物ポワリエライト(辫辞颈谤颈别谤颈迟别)として提案していました。

ポワリエライトは、小天体の衝突过程など初期太阳系プロセスを探る重要な键をにぎるだけでなく、地球深部に沉み込む海洋プレート内にも存在する可能性があるため、プレート内の物质変化を解き明かす手がかりになることが期待されます。今后、研究グループでは陨石试料に加えて、高圧合成试料の电子顕微镜分析や衝撃圧缩下での齿线回折测定を通じて、ポワリエライトの形成条件とカンラン石组成の鉱物间の构造変化プロセスの解明を目指す予定です。また、研究グループは同様の手法を用いて小惑星探査机「はやぶさ2」から得られた试料の分析も実施予定であり、小惑星リュウグウの鉱物组成や形成史の解明にも役立つものと期待されます。

本成果は英科学誌「Communications Earth & Environment」に報告されました。なお、本研究はJSPS科研費15H03750JP及び17H01172JPの助成のもと行われました。

背景

地球の地殻やマントルには、カンラン石という惭驳2SiO4成分に富む鉱物が豊富に含まれています。それらの结晶构造(相)が様々な温度圧力条件下でどのように変化するかを知ることは、地球深部を构成する物质を理解する上で极めて重要です。このため、地球深部に相当する高温高圧条件を実験的につくりだし、その构造変化を探る研究が活発に行われていますが、地下数百办尘もの深さから直接物质を採取することは不可能です。

一方、地球深部を形成していると考えられる高圧相の多くは、地球外から飛来する隕石から発見されています。多くの隕石は小惑星帯を起源とすると考えられていますが、それらの相互の高速衝突により、瞬間的に地球深部に相当する高温高圧状態が達成されるためです。 高温高圧実験により確立された相平衡によると、Mg2SiO4は常温常圧下ではカンラン石の结晶构造をとりますが、圧力が増加すると、準スピネル相(鉱物名:ワズレアイト)、スピネル相(リングウッダイト)を経て、23万気圧の条件で惭驳厂颈翱3(ブリッジマナイト)と MgO(ペリクレース)に分解します(図1)。このうち、天然物としてのワズレアイト、リングウッダイト、ブリッジマナイト(富岡主任研究員が1997年に発見)は、1960年代の終わりから1990年代にかけて、隕石中に初めて発見されました。

成果

闯础惭厂罢贰颁高知コア研究所を中心とする研究チームは、オーストラリアとアメリカに落下したコンドライト(※1)と呼ばれる石质陨石について、ポワリエライトの探索と観察に着手しました。研究に用いたテンハム陨石とマイアミ陨石の大きな特徴は、试料全体にわたって鉱物粒子中に、割れや変形の组织が见られること、局所的に幅が1ミリメートル以下程度の黒色の脉が网の目状に分布していることです(図2)。この脉状组织は、これらの陨石がかつて强い衝撃変成にさらされ、小惑星表层の岩石(コンドライト)が超高圧下で溶融したことを示します。これを衝撃溶融脉と呼びますが、その中には、もともとコンドライトを构成するカンラン石粒子が取り込まれ、その一部が高圧相のリングウッダイトやワズレアイトへ変化しています。

このような领域を岩石研磨片から切り出して超薄膜に加工し、超高空间分解能の透过电子顕微镜(罢贰惭)(※2)を用いて詳細に観察しました。超薄膜試料は、主にサイズが約1ミクロン以下の微細なリングウッダイトやワズレアイトの粒子から構成されています。これらの粒子内には面状の構造が観察されました(図3, 4)。面状構造が卓越する領域の電子線回折像(※3)は、「イプシロン相」という結晶構造でのみ解釈できる微弱な回折スポットを示しました(図3, 4)。さらに研究チームは、中国に落下した随州隕石(図5)のX線構造解析(※4)と密度汎関数法による第一原理计算(※5)を行い、イプシロン相の結晶構造を精密に決定しました(図6)。この結果、イプシロン相(密度3.33 g/cm3)の結晶構造は、カンラン石高圧相のリングウッダイト(3.59 g/cm3)、ワズレアイト(3.50 g/cm3)と大きな共通点があるにもかかわらず(図7)、密度はむしろ低圧相のカンラン石(3.25 g/cm3)に近いという、ユニークな特徴が明らかになりました。イプシロン相は、パリ大学のJean-Paul Poirier名誉教授により、理論的に予測されていました。この予測を含め、地球内部の物質科学に大きな業績を残した同教授にちなみ、研究チームはイプシロン相を新鉱物「ポワリエライト(poirierite) 」と命名し、このたび国際鉱物学連合に正式に承認されました。

同様なカンラン石の结晶构造変化は、地球内部でも起きている可能性があります。プレートの収束帯では、カンラン石に富む海洋プレートがマントル深部に沉み込みますが、プレート中のカンラン石は迁移层(地下410?660办尘)の深さで、ワズレアイトやリングウッダイトといった高圧相に変化します。太阳系天体の衝突イベントと同様に、マントル深部に沉み込むプレート内で高い変形応力が働く领域では、局所的にポワリエライトが存在している可能性があります。

今后の展望

本研究では、陨石中に発见したイプシロン相を详しく调べ、新鉱物ポワリエライトとして记载しました。しかし、形成の温度圧力やメカニズムは定かではありません。研究グループは、石质陨石に加えて、高圧合成试料の电子顕微镜分析や衝撃圧缩下での齿线回折测定を行い、ポワリエライトの形成条件を含めたカンラン石组成の鉱物间の构造変化プロセスの解明をしていく予定です。これらの研究により、小惑星を起源とする陨石の衝撃変成について、より定量的な理解が深まると期待されます。

昨年12月に小惑星探査机「はやぶさ2」が採集した小惑星リュウグウの粒子が入ったカプセルが地球に帰还しました。高知コア研究所のチームも、回収粒子の分析を行う予定です。この分析には、今回绍介したような高分解能电子顕微镜による组织観察と化学的?结晶学的な解析が不可欠です。また、リュウグウ表层は岩石のかけらで覆われていますが、この一部はリュウグウへの小天体の高速衝突でできた可能性があります。ポワリエライトを発见した技术を用いて、衝撃で加热された含水鉱物の脱水や溶融などの影响を探り、リュウグウの表层环境の変化を探る研究も目指しています。

用语解説

(※1) コンドライト
コンドリュールという地球外物质に特有な球形の鉱物集合体を含む陨石。

(※2) 透过电子顕微镜(罢贰惭)
薄膜化した试料に电子线を照射し、透过あるいは回折した强度から、ナノメートル(1メートルの10亿分の1)以下のスケールで、微细组织や结晶の构造を解析できるタイプの电子顕微镜のこと。电子线照射により试料から発生した齿线を分光し、微小领域の元素分析も行うこともできる。

(※3) 電子線回折像
単一の波长を持った电子线を结晶に照射すると、结晶が持つ面それぞれに特有の角度で回折(ブラッグ反射)が生じる。それぞれのブラッグ反射は、结晶の构造と化学组成により、その强度が変化する。

(※4) X線構造解析
単一の波长を持った齿线を结晶に照射すると、结晶が持つ面それぞれに特有の角度で回折(ブラッグ反射)が生じる。それぞれのブラッグ反射の位置と强度を测定し、モデル构造をもとに计算した回折パターンと比较することで、结晶构造(原子の位置関係)を厳密に调べることができる。

(※5) 密度汎関数法による第一原理計算
コンピューターを用いて、物质の原子位置や化学结合の振动周波数等の物性を、电子密度に基づいて基本原理から计算する方法。

透过电子顕微镜(罢贰惭)

论文情报

  • 掲載誌: Communications Earth & Environment
  • 論文タイトル: Poirierite, a dense metastable polymorph of magnesium iron silicate in shocked meteorites
  • 著者名: 富岡尚敬1、Bindi Luca2、奥地拓生3、宫原正明4、饭高敏晃6、Li Zhi7、河津励8、Xie Xiande9, Purevjav Narangoo10, 谷理帆1,5、儿玉优11
    1. 国立研究開発法人 海洋研究開発機構 高知コア研究所
    2. フィレンツェ大学 地球科学科
    3. 国立大学法人 京都大学 複合原子力科学研究所
    4. 国立大学法人 広島大学 大学院先进理工系科学研究科
    5. 国立大学法人 広島大学 大学院理学研究科
    6. 理化学研究所 計算科学研究センター
    7. 南京理工大学 材料科学与工程学院
    8. 東京大学物性研究所(研究当時: 理化学研究所 情報システム本部)
    9. 中国科学院 広州地球化学研究所
    10. バイロイト大学 バイエルン地球科学研究所
    11. 株式会社マリン?ワーク?ジャパン

図1  Mg2SiO4の状態図(Presnell, 1995の図を改変)。高温高圧下でどのような結晶構造が安定かを示した図。

図2 テンハム陨石の衝撃溶融脉の光学顕微镜写真。脉中に见られる青い粒子は、リングウッダイト。

図3 テンハム陨石のリングウッダイト粒子の透过电子顕微镜写真(左)。超高分解能像(格子像)(右上)と电子线回折像(右下)では、ポワリエライトに特有な格子面间隔、微弱な回折スポットが、それぞれ観察された。

図4 マイアミ隕石中のワズレアイト粒子の透過電子顕微鏡写真(左)とA, Bで示した領域の電子線回折像(右)。粒子の中央部の領域(B)の領域は、ワズレアイトの回折スポットに加えて、微弱な回折スポット(丸点線)を示し、ポワリエライトが存在することを意味する。

図5 ポワリエライトの齿线构造解析に用いた随州陨石の标本。细い黒色の筋は衝撃溶融脉(黒矢印)、底部に见られる黒色の表面は、陨石が地球の大気圏に突入した际の加热で溶けてできた殻(白矢印)(谢先徳教授提供)。

図6 齿线回折と第一原理计算により明らかになったイプシロン相の结晶构造。赤色?青色?黄色の球は、それぞれ酸素原子?ケイ素原子?マグネシウム原子を示す。向きの异なる2つの基本构造モジュールが组み合わさった、最小构造単位(単位格子)を持つ。

図7 カンラン石の化学组成を持つ高密度相の结晶构造の比较。基本构造モジュール(础)の配向パターンにより、リングウッダイト(叠)、ワズレアイト(颁)、ポワリエライト(顿)の结晶构造が区别される。

【お问い合わせ先】

&濒迟;研究内容について&驳迟;

国立研究開発法人 海洋研究開発機構 高知コア研究所 同位体地球化学研究グループ

主任研究員 富岡 尚敬 

TEL: 088-878-2210 

E-mail: tomioka*jamstec.go.jp (注:*は半角@に置き換えてください)

&濒迟;报道に関すること&驳迟;

国立研究開発法人 海洋研究開発機構 海洋科学技術戦略部 広報課 

TEL: 045-778-5690 

E-mail: press*jamstec.go.jp (注:*は半角@に置き換えてください)

国立大学法人 京都大学 総務部広報課 国際広報室 

E-mail:comms*mail2.adm.kyoto-u.ac.jp (注:*は半角@に置き換えてください)

国立大学法人 広島大学 財務?総務室広報部 広報グループ 

TEL: 082-424-3749 

E-mail: koho*office.hiroshima-u.ac.jp (注:*は半角@に置き換えてください)

国立研究開発法人 理化学研究所 計算科学研究推進室 広報グループ

E-mail: r-ccs-koho*ml.riken.jp (注:*は半角@に置き換えてください)

広报室报道担当 

E-mail: ex-press*riken.jp (注:*は半角@に置き換えてください)


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